
大ヒット公開中!『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に学ぶ「トライブ」ドリブンなSNS活用
はじめまして!!栗原健也と申します。
ソーシャルメディアマーケティングに強いトライバルメディアハウスで、その中でもエンタメ企業と特にお向き合いをさせていただいているモダンエイジ事業部に所属している者です。
いきなりですが、映画って本当に素晴らしいですよね。
映画を通して色々な世界を知れたり、知らない誰かに感情移入したり、
それによって価値観が大きく変わったり…
映画は観客の人生にポジティブな影響を与えるパワーを持っている、自身の実体験からもそう強く信じています。
どうやったらこの現代で、映画が多くの人に、届くべき人に届くのか。
私の属する組織の主戦場であるマーケティングを上手く生かしながら、こうしたテーマに向き合ってnoteを書いていこうと思います。
今回の第一弾は、現在公開中の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を分析していきたいと思います。
■「ヴェノム」続編が大ヒットスタート
12/3(金)より公開した「ヴェノム」シリーズ2作目、『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ(以下ヴェノム2)』が公開直後から大ヒットを飛ばしています。
土日2日間12月4日(土)~12月5日(日)の興行成績で動員:30万2,443人、興行収入:4億5560万円を記録。公開3日間12月3日(金)~12月5日(日)の累計興行成績では、累計動員:41万5,583人、累計興行収入6億2389万2,560円を記録。
2018年公開の前作『ヴェノム』(累計興行収入21.9億円)の公開3日間対比で約105%という、前作超えの大ヒットスタートとなった。
私自身も公開日のレイトショーにて楽しく拝見させていただきました。とにかくヴェノムとエディの掛け合いが可愛かったですね。
そんな本作ですが、Twitterの日本トレンドに長時間入り続けるなど、SNS上での存在感も注目を浴びています。
実際本作は非常に効果的にSNSを活用することができており、こうしたトレンド化⇒大ヒットという流れには、SNSが大きく寄与していると考えられます。
今回はこの『ヴェノム2』のSNS活用について、マーケティング的視点も交えながら、どう凄かったのか書いていきたいと思います。
■『ヴェノム2』のクチコミ量/推移
まず公開日が比較的近かった大作映画かつ、同じマーベル(ユニバースは違いますが)ということで、11月公開の「エターナルズ」とクチコミ数の推移を比較してみました。
こちらは弊社ソーシャルリスニングツール、Boom Researchを活用して、公開日から30日前のTwitter上のクチコミ数の推移を比較したグラフです。


あのMCUの最新作である「エターナルズ」と肩を並べるどころか、総量としては5万件も上回るクチコミがTwitter上で創出されています。
公開日には1日に5万件以上のクチコミが創出されており、クチコミの推移からも、いかに『ヴェノム2』が注目されていたのかということがわかります。
もちろん前作からの熱烈なファンがいたというのは事実かと思いますが、MCU(Marvel Cinematic Universe)のように盤石なファン層が成熟していない「ヴェノム」において、「エターナルズ」を上回るレベルのクチコミが拡大したのには、「トライブ」の有効活用が理由として挙げられると考えています。
■トライブとは何か?
ここでマーケティング用語の登場ですが、難しく考える必要はありません。
トライブとは、「年代や性別を超え、共通の趣味や興味、価値観で形成される部族」というマーケティング概念です。要するに「○○好き」といった集団のことです。
このトライブですが、映画作品それぞれに対して、複数紐づいています。
ヴェノムであれば真っ先に思い浮かぶのは、「スパイダーマントライブ」でしょう。それから「マーベル(MCU)トライブ」、主演の「トム・ハーディトライブ」に、もしかしたら「バディムービー」や「ロマンス映画」のトライブが紐づいているかもしれません。
SNSユーザーは、映画アカウントや洋画アカウント、MCUアカウントなど、趣味に特化したアカウントを複数持っている場合が多く、その趣味と通じる人のみをフォローして繋がるなど、トライブ(○○好き)を軸にSNS上に独自のコミュニティを作っています。
そのため各トライブに対して刺さるコンテンツを訴求することができれば、
そのトライブ(フォロワー)内でシェアがされ、そのトライブ全体の意欲を
一挙に駆り立てることができる可能性があります。
■『ヴェノム2』のSNS展開
それでは実際にヴェノムがSNSを通じて、どのようにこのトライブを動かしていたのか見てみましょう。
まず注目すべきは、配給元のソニー・ピクチャーズが公開している動画本数の多さです。
このYouTubeのプレイリストにあるものだけでも23本(21年12月10日時点)もの動画が公開されており、一部こちらに含まれていない限定公開の動画なども複数あるため、合計でゆうに40本以上の動画がSNS上に上がっていそうです。
例えば上記は劇中のシーンをおよそ4分にもわたってそのまま切り取り、
見所として紹介していくような動画です。連続殺人鬼クレタス・キャサディが「カーネイジ」に覚醒して大虐殺を繰り広げる、ホラー映画トライブが刺激されるような、劇中屈指の恐ろしいシーンを公開しています。
そして日本版主題歌を担当したDISH//とのコラボレーション動画は、DISH//トライブに対して深く刺さるのは自明ですね。
こうした様々な要素を持った動画を複数展開することによって、各動画それぞれが特定のトライブに刺さる可能性を高めているといえます。
\決 戦 開 始💥/
— 映画『ヴェノム』公式 (@VenomMovieJP) December 3, 2021
俺たち「ヴェノム」がずっとトレンド入りしてんな🔥
たくさんのツイート見てるぞ❗️
でも、感想でネタバレするんじゃねぇぞ👊
誰だって決戦は自分の目で見てぇだろ❓
📽 https://t.co/gHtBvql6zb pic.twitter.com/m5uXrqYUKn
また上記のように公式から発信しているキュートなGIF画像も、二次創作トライブを刺激し、ユーザーたちが作品にインスパイアされて作り上げるイラストなど、UGC(User Generated Contents)の創出に貢献しているでしょう。
そしてさらに特筆すべきは、公式アカウントからアスリートたちにメンションをつけ、アスリートからの「ヴェノム」発信を促した施策です。
イルカの大合唱… その視点はなかった💥
— 映画『ヴェノム』公式 (@VenomMovieJP) November 12, 2021
効きそうだが、エディと離れるのはなぁ…#これで勝つんだヴェノム https://t.co/VCkiHPvZa0
こうしたアスリートからのヴェノムに関するツイートは、アスリートのフォロワーである「スポーツトライブ」に拡散し、一見ヴェノムと直接関係がないトライブまで動かそうとしています。
他にもTwitterの「プロフィールジャック」を企画し、「ヴェノムトライブ」を熱狂させるなど、挙げたらきりがないくらい、効果的に様々なトライブを動かす仕掛けをしていたのが、『ヴェノム2』のSNS活用でした。
■トライブドリブンな映画SNS活用
前作のファン、SF/アクション映画のファン、マーベルのファンだけにアプローチをしていても、そのボリュームには限りがあります。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』では、SNSを通して様々なコンテンツを展開し、多様なトライブを刺激することで、幅広いユーザーの鑑賞意欲を高められたこと、これがヒットの大きな要因と言えるのではないでしょうか
こうした手法は年始に公開された大ヒット映画『花束みたいな恋をした』でも積極的に用いられており、映画をSNS起点に多くの人に届けるための、新たな潮流となりそうです。
こうしたマーケティング視点からの映画分析記事を、これからも投稿していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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