愛される擬人化キャラクターの作り方について~延長戦・実際にコンテンツを考えてみよう~
こんにちは。無名無実(むめいむじつ)と申します。
前回の記事で発表した研究の続き、かつこのnoteの本来の目的である「校内誌の誌面に限界があるなら延長戦をやってやろう時代はデジタル一億総発信社会じゃ作戦」の本編がこちらになります。
というわけで詳しくは前回の記事を読んでいただくとして、今回の内容は研究結果を活かして想定してみた架空のコンテンツについて、ということになります。研究結果を読んでいないと分からない部分が多くあるのでぜひ読んでください。
こちらの記事の内容についても参考にしたいという方はどうぞ。直接的な文言の引用については一般的な引用のルールを守って行ってください。
質問や訂正についてはコメントでお願いいたします。特にキャラクターの設定についてはギリギリのスケジュールの中で作った弊害でリサーチが甘い部分があるので、ミスと思われる部分がありましたらアクセス可能な情報ソース(webサイトや図書館で借りられる本など)を添えて訂正コメントを寄せていただけると助かります。
以下、高校の総合研究において提出したレポートの引用になります。一部訂正などを加えています。
1・元ネタを決める
まず初めにコンテンツの肝となる元ネタを考える。研究結果を踏まえ、それに当てはまると思われる、または完全には当てはまらないが作ってみたい擬人化の案を出した。
ギター それぞれの音の特徴や使っていたギタリストなどからキャラクターを作る想定。元ネタをそのまま持たせておけば何のキャラクターかわかりやすく、比較的バリエーションが多いため様々なキャラクターが作れるだろう。ただ、キャラクターの掘り下げやシナリオ作りが難しいと考えられるため却下。
元号 それぞれの時代に流行した服装や物品からキャラクターを作る想定。一目で擬人化と分かりやすく広く受け入れられやすい一方で、コンテンツにできるほどの特徴的なキャラクターを作ることは難しいと考えられる。また、江戸以前の元号は期間が短いため、実質的に作れるキャラクターは明治~令和の五人。四コマ漫画やあるあるネタ的なコンテンツ展開(『血液型くん』などのタイプ)になると思われる。もう少し大幅なコンテンツ展開を想定したいため今回は却下。
徳川将軍 徳川幕府の将軍を元ネタとする。元ネタの記録が細かく残っているためキャラクターを作りやすく、『はたらく細胞』その他の学習系の擬人化ものとして広く人気が出やすいだろう。ただ、服装や見た目のバリエーションが作りづらくキャラクタービジュアルでは人気を出しづらいこと、キャラクター同士の関係性が基本的には「先祖と子孫」という関係のみであり、元ネタどうしの重なっている時間が少ない(=ライバル関係や友人などにはなりづらい)ことからこちらも大きなコンテンツ展開はできないため却下。
都市伝説 いわゆる「八尺様」や「スレンダーマン」といったインターネットで広められている都市伝説をキャラクター化するもの。その特性上キャラクターも人間というよりは怪物やお化けなどに近づいてしまい、今回の「擬人化」という趣旨からは外れると考えられたため却下。
コスメブランド 高級なもので言えばCHANEL、身近なもので言えば資生堂やCANMAKEなど。それぞれのブランドの利用者層をイメージしたキャラクターを作る想定。「二次元」オタクに対してのウケはあまりよくなさそうだが、流行に敏感な人々が使うメディアで展開すれば人気が出そうである。今実際にある商業ブランドが対象ということで権利関係が複雑になりそうなので今回は見送ったが、ファッション雑誌の企画としてなどは面白いと考えられる。
聖人(キリスト教) 歴史上の人物の擬人化は多くあるが、キリスト教聖人のみに的を絞った擬人化(キャラクター化)コンテンツは今のところ特に見当たらなかったので考えてみた。それぞれの逸話や守護するものなどをモチーフに作ればバリエーション豊かなキャラクターが作れるだろう。戦いの逸話を持つ聖人も多いのでバトルものでも十分通用しそうである。ただ、やはり宗教関係でもあるので二次創作ガイドラインやコンテンツの内容自体に細心の注意を払う必要があるということ、全員が「聖人」だと性格のバリエーションが限られてくることから今回は見送った。
哲学者 一年生の時に倫理の授業ノートに書いていたものがあるのでそれを再利用できないかという試み。それぞれ特徴があるのでキャラクター化しやすく、学習系のコンテンツとしても人気が出やすいと考えた。しかし、コンテンツ展開としてどういうものにするか想定がつかなかったので今回は見送った。
王朝 「国」ではなく特定の王家の時代を擬人化するという想定。国民性や地理・風土的特徴、特産品などの地理的要素というよりは歴史上の人物を王家に拡大したものとして想定した。先ほど却下した元号(時代)の擬人化、徳川将軍や聖人(歴史)の擬人化の一種ともいえる。このテーマなら作れるキャラクターの数も多く、元ネタの関係性も複雑なので、それらのデメリットを解消できるだろうと見込んだ。また、国の擬人化ではなく王朝の擬人化とした理由として、(国の擬人化はすでに色んなものがあるという部分もあるが)歴史上の範囲を絞ることでキャラクター性がまとまりやすくなり、モチーフを決めやすくなると考えたという理由がある。
以上の案と理由より、今回実践として擬人化する元ネタは「王朝」と決めた。
2.コンテンツを展開する媒体およびコンテンツの枠を決める
元ネタが決まったので、コンテンツの方向性を決めていきたい。
まず研究結果より、二次創作が盛り上がりやすく、始めるにもダウンロードするだけなので入りやすいスマホ向けソーシャルゲームが人気になりやすいということなので、媒体はスマホ向けソーシャルゲームという想定で考える。
また美少女化・イケメン化などキャラクターの方向を絞ってコンテンツを作成すると人気が出やすいことより、キャラクターの性別は一定させる方向で考える。どちらでもよいと思ったが、以下の理由より今回は「美少女化」コンテンツにすることとした。
基本的に女性ファンばかりになりがちなイケメン化コンテンツと比べ、美少女化ジャンルは女性ファンと男性ファンの両方を獲得しやすいこと
元ネタの都合上、キャラクターにはその時代の特徴的な服装を反映することになる。特に元ネタの中心となってくるであろう中世~近世のヨーロッパで見た場合、男性のファッションはそれほど大きな変化はないが、女性のファッションは非常に多彩に変化している。時代のみならず国によっても傾向があるため、今回の元ネタと相性がいいから。
ヨーロッパの近代の文化に、国を女性として擬人化するというものがあり(参考:イギリスの「ブリタニア」、フランスの「マリアンヌ」など)、そのイメージを生かすことでより世界観の設定を固めやすくなると思ったから。
ゲームの中核の部分は3Dフィールドアクションバトルの基本PvE(Player VS Enemy、人対コンピュータの対戦)とする(近年のゲームで言うなら『原神』や『#コンパス』などの操作性が近い)。
アクションバトルとした理由としては、ターン制バトル(『ドラゴンクエスト』シリーズなど)、カード系ゲーム(『シャドウバース』など)と違ってキャラクターの強さがプレイヤーの操作スキルに依ってくるため、どのキャラクターも活躍させられると考えたためである。
PvEにした理由としては、PvP(Player vs Player、人対人の対戦)にすると、ゲームの盛り上がりのために一定以上のプレイヤーが必要になってきたり、マナーの悪いプレイヤーが現れやすくなったりし、運営会社側の努力でどうにもならない部分でコンテンツが失敗する可能性が高まるためである。PvEにおいての他のプレイヤーとの協力マルチプレイについては視野に入れていきたい。
また、近年の「新シナリオ主義」的傾向に添うように、シナリオ部分やムービー・演出部分にも力を入れていきたい。前回までのレポートで近年のスマホ向けソーシャルゲームは本筋のストーリーよりキャラクターごとのストーリーを重視する傾向が強い(『ウマ娘』などが代表例)と考察した。よって、それに沿い、当コンテンツもキャラクターごとのストーリーを中心に作っていく想定とする。バトル性としては『原神』などの3Dのフィールド上でアクションバトルを行うものに近いとしたが、シナリオ及びホーム部分(ゲームを起動したとき最初に来る画面。各種機能に接続するメニューがある)は『FGO』や『ウマ娘』のようにアドベンチャーゲームに近いスタイルで展開したい。理由としては、『原神』のようにシナリオ部分、ホーム部分も3Dフィールド上にすると開発コストが非常に大きくなり、安定したクオリティでこまめにゲームを更新するのが難しくなるからである。
ゲームのターゲット層としては男性を中心としつつ、女性にも楽しんでもらえるように考えている。近年は『無期迷途』や『トワツガイ』のように美少女を中心としたゲームでも女性もターゲットにしているというものが多く、そのような感じで男女問わず楽しんでもらえるゲームにしようと考えた。また、キャラクター一人一人を大切にしたいため、キャラクターにはレアリティごとの大きなステータス差は設けない(『ウマ娘』や『#コンパス』に近い、強化やプレイヤースキル次第でキャラの強さが変わってくるスタイル)こととしたい。
以上を踏まえ、コンテンツについて仮にこう企画した。
タイトル:「Killer Queens」(仮)
ジャンル:王朝擬人化アクションバトル&アドベンチャーゲーム
対応デバイス:各種スマートフォン・タブレット
コンテンツのテーマ:男性も女性も楽しめる”強い”美少女のアクションゲーム
以下、このコンテンツを「当コンテンツ」と呼称する。
3.コンテンツの中身を決める
コンテンツの枠が決定したので、中身について詰めていく。
まずはシナリオ上の世界観である。ゲームの枠から「王朝」の擬人化が集まって何らかのバトルをすることは確かだが、どのような理由でバトルするのかを考えなくてはいけない。また、キャラクターたちとは”何”であるのか(たとえば『FGO』ならば歴史上の偉人・英雄の霊が「サーヴァント」としてあらわれたものであるというように)、どういう理論でそこに集まっているのかも考えなくてはいけない。
前回までの研究ではこの世界観設定およびキャラクターたちの戦う動機については細かく分析してこなかったため、今回追加で分析しつつ当コンテンツの設定を決めていきたい。この分析はもともと研究対象にしていた作品の中だけだと不十分なので、現在スマホ向けゲームとして発表されているコンテンツから広く例を収集し分析した。
ゲーム、特にソーシャルゲームにおいて戦っている理由は大きく3つにわけられる。
一つ目は「世界の危機」パターン。世界に何らかの危機が迫っており、それに対抗するためにキャラクターたちが戦っているというシナリオのもの。『FGO』や『takt.op』、ゲームではないが『新世紀エヴァンゲリオン』などがこれにあたる。世界観やストーリーに深みが出やすく、シナリオ主義の花形といえるパターンである。基本的にキャラクター同士は敵対せず、協力して大きな敵に立ち向かっていく中での人間関係が中心となる。PvE想定の当コンテンツには適した形であると考えられる。ただ、このパターンは近年あまりにも多く、どうしても他作品と比べられやすい。もちろん人気が出やすいため多くなる・多く見えるということではあるのだが、それを差し引いてもなお多い。加えて、シナリオに深みを出すためにはどうしても途中で退場したり裏切ったりするキャラが出てくることになるため、キャラクターを重んじる想定と相性が悪い。よって、今回は却下。
二つ目は「冒険・旅」パターン。キャラクターたちが何かを求めて世界を冒険しており、その中でシナリオが進んでいくというもの。「世界の危機」パターンと組み合わさることも多いが、どちらかというとロードムービー的要素が大きいもの。『ゼルダの伝説』シリーズや『原神』などがこれにあたる。爽快感、ワクワク感を得やすく、ゲームとしては定番の形である。このジャンルはとにかくゲームとしてのクオリティ、やりこみ要素が重視されるため、『原神』や『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』に勝てるものでないと生き残れないだろう。そもそも擬人化系のコンテンツとは若干相性が悪く、シナリオ部分はアドベンチャーゲーム方式で進めていく想定とも合わない。よって、今回は却下。
三つ目は「バトルロイヤル」パターン。金や名誉、何らかの特別な権限などを求めてキャラクター同士が戦うというもの。いわゆるバトルロイヤルゲームというと『荒野行動』や『PUBG』のようなPvPでフィールド上で生き残る、というイメージがあるが、今回はバトルシステムではなく『ダンガンロンパ』や『Fate/stay night』のようなバトルロイヤル・デスゲーム的な世界観・ストーリーのものをこのパターンとする。また、デスゲームでこそないが、ほかのキャラクターと争い、一つきりの優勝を目指すという点においては『ウマ娘』もこのジャンルに含まれてくるだろう。このパターンは一見するとキャラクターを大事にするという想定には合わなさそうに見えるが、キャラクターごとのストーリーを重んじるという想定で考えれば十分に適用できる。本筋のストーリーだけだと必ず途中で脱落者が出てしまうが、それぞれのキャラクターの個別シナリオを中心に作れば応援したいキャラクターを勝たせることができる。『ウマ娘』などはこの形を採用している。このパターンはとにかくキャラクターを重視したい当コンテンツに十分あっていると考えられる。よって、今回はこの「バトルロイヤル」パターンでシナリオ・世界観を組み立てる。
次に、この世界観に基づき、シナリオの大枠を決定する。このようなあらすじを考えた。
あなたは世界一巨大な博物館都市の特別ツアーに招待された、歴史好きの一般人。貴重な資料や一流の学芸員たちの解説を楽しんでいたが、あなたは気づくとツアーからはぐれてしまっていた。
薄暗い終わりのなさそうな廊下で、あなたは浮かぶ光を目にする。それに触れた時、頭の中に声が響いた。
「私たちを見つけて。」
そして目が覚めると、あなたは不思議な広間にいた。そこであなたを待っていたのは、本の中だけに残るはずの亡国の名前を持つ"女神"たち。彼女達の"騎士"として選ばれたあなたは、全世界の支配権である"絶対王権"を、そしてこの世界の秘密を巡る戦いに身を投じていくことになる。
このあらすじのもとで個々のキャラクターのストーリーを作るという想定とする。
その他ゲームシステムについても本来は詰めていきたいところだが、今回の研究のメインテーマは研究結果を生かした擬人化キャラクターと世界観の制作なので割愛する。
4.キャラクターを制作する
いよいよ今回のメインテーマであるキャラクターの制作に入る。ゲームシステム上の性能については最低限とし、キャラクターのビジュアルや性格面を主に制作していく。
研究結果より、擬人化キャラクターの制作にあたってはステレオタイプを生かした「デフォルメ」と独自設定に基づいた「掘り下げ」が重要であるということがわかっている。よって、それぞれのキャラクターについて「デフォルメ」した部分と「掘り下げ」た部分を書いていきたい。
i)ハノーヴァー朝
英国・産業革命時代を治めた王朝の名を冠する女神。勝ち気で傲慢、短気でわがまま。自分の国と繁栄に強い誇りを持っており、自然ほかの国を見下して喧嘩になることも。
ほかのイギリスの王朝と同じく味音痴だが紅茶にはうるさい。
先輩にあたるテューダー朝のことを心から尊敬しており、様々な部分で真似している。
フランスの王朝とロマノフ朝のことをライバル視しており、ことあるごとに対抗しようとする。
産業革命時代に虐げてしまった弱いもの、特に子供たちについて強い負い目を感じており、子供を見ると復讐されるのではないかと恐れて離れようとする。
”絶対王権”の獲得については強い意欲を持っており、積極的に”騎士”を引っ張っていく。一方で「自分」ではなくイギリスの王朝であるならば誰でもよい、とも考えており、場面によっては他の王朝と協力することも。
元ネタについて:ハノーヴァー朝(ハノーヴァーちょう、英語: Hanoverian Dynasty)は、1714年から1901年まで続いたイギリスの王朝。
ステュアート朝の断絶を受けて、ドイツ北部の領邦君主の家系であったハノーヴァー家からジョージ1世を国王に迎え入れて成立した。(Wikipedia「ハノーヴァー朝」のページより)
元ネタから「デフォルメ」した部分
産業革命時代ということでデザインに歯車やパイプなどのスチームパンク的要素を取り入れた。特にドレスから右手の籠手、剣にかけて、一連の装置というイメージで作成。
特にモチーフの中心としたのはヴィクトリア女王。彼女自身がかなり短気でわがまま、傲岸不遜であったという逸話があることから、その部分を性格設定に取り入れた。
かぶっている王冠は現在のイギリス王家(ウィンザー朝)と同じもの。
産業革命でイギリスが大いに発展した時代ということで自信たっぷりの性格にした。
ヴィクトリア女王の時代にアフタヌーン・ティーの習慣が始まったことから紅茶好きの設定を加えた。
イギリスの伝統料理はとにかく不味いという有名な話があるので味音痴という設定にした。
ヴィクトリア女王の死因、つまりハノーヴァー朝の死因は脳出血であるため頭から赤のリボンを垂らした(髪の毛に見えるが特に長く垂れている部分)。
イギリスといえばよく世界史の中でフランス・ロシアと戦っているので対抗心を持っているという設定にした。
元ネタから「掘り下げ」た部分
ハノーヴァー朝の栄光は元をたどればテューダー朝・エリザベス女王の努力にある。そこでハノーヴァー朝はテューダー朝を非常に尊敬しているという設定にした。見た目に反映した部分としては、本来エリザベス女王の時代に流行したものであるドレスのデザイン(立ち襟やたる型スカートなど)をハノーヴァー朝のドレスのデザインとして取り入れている。
ヴィクトリア女王の時代に、かつてイギリスにあった国であるブリタニアの「勝利の女王」ブーディカとヴィクトリア女王を同一視する伝説が高まった。よってブーディカのイメージを取り入れ、彼女の伝説に残る赤い髪とした(実際のヴィクトリア女王は赤毛ではない)
メイン武装として使っている剣はイギリスの有名な「アーサー王伝説」に登場するエクスカリバーをモチーフとしているが、「アーサー王伝説」はアングロサクソン系のイギリス国家とは直接的には関係がないので本来は持ちえない。そこで、エクスカリバーの伝説を産業革命の技術で再現した剣であるということにした。
ヴィクトリア女王がモデルであるともされる「不思議の国のアリス」のハートの女王のイメージを取り入れ、髪形やドレスの各所にハートのモチーフを取り入れた。
ハノーヴァー朝時代にはイギリスは確かに繁栄したが、その裏には酷い環境汚染や弱者への搾取があった闇の深い時代でもあった。そのため、自分が虐げてしまった人々の呪いや復讐を恐れているという設定にした。
ii)ブルボン朝
フランス・栄光の絶対王政時代を治めた王朝の名を冠する女神。明るく華のある性格であり、どんな場所でも自然と人々の輪の中心になってしまうカリスマ。よく笑いよく泣きよく怒る、感情豊かなひと。騎士道物語、とくにシャルルマーニュ伝説と三銃士物語を好む。騎士道の精神に則った正々堂々としたふるまいをし、弱きものを助けることを優先するヒロイックな部分も。
見た目にたがわず、とにかく派手好きできらきらしいもの好き。そのため浪費癖があり金欠に苦しむこともある。
生まれた時(サン・バルテルミの虐殺)や死ぬとき(フランス革命)のトラウマから仲間割れを見ると非常に取り乱してしまう。仲間同士の和を保つためにわざと大げさにおどけてみせることも多い。
”絶対王権”の獲得については「自分が手に入れて当然」と考えており、そのため焦ることもなく堂々と戦う。”騎士”に対しては「ボクもそっちがよかったなあ」とのこと。相棒として扱い、単なる協力関係以上に仲良くなろうとする。
元ネタについて:ブルボン朝(ブルボンちょう、フランス語: dynastie des Bourbons)は、近世フランス王国の王朝である。1589年から1792年まで、一時中断を挟んで1814年から1830年まで続いた。 (Wikipedia「ブルボン朝」のページより)
元ネタから「デフォルメ」した部分
フランス王家全体の有名なモチーフとしてフルール・ド・リス(百合の花)があるので髪形や各所にフルール・ド・リスの形を取り入れた。
ヴェルサイユ宮殿に代表される華やかな宮廷文化が花開いた時代なので、派手好きな性格にした。
奇抜なヘアスタイルがはやった時代なので、頭に重きを置いたデザインにした。
王朝としての終わりは(厳密にはルイ17世の病死だが)フランス革命のギロチンによる処刑なので、首にチョーカーをつけている。
マリー・アントワネットやルイ14世など華やかで魅力的な人が多いイメージなので、人々の心をひきつけるカリスマ性のあるキャラクターにした。
ブルボン朝は華やかな宮廷の生活を支えたり外征費を賄うために常に財政難に苦しんでいたという記録があるので浪費癖で金欠になりがちな設定とした。
元ネタから「掘り下げ」た部分
ブルボン王朝はサリカ法(女性に王位継承権を認めない法律)を取っているので、男性的な服装・性格にした。
性格設定に伴い、騎士道物語を好む設定にした。騎士道物語というと代表的なものはイギリスの「アーサー王物語」であるためイギリスが中心であるイメージがあるが、「アーサー王伝説」のうちでも騎士ラーンスロットの伝説はフランスで付け加えられたものであるし、もう一つの代表格である「シャルルマーニュ伝説」(カール大帝と彼の勇士たちの武勇伝)もある。
アレクサンドル・デュマの小説「三銃士」はこの時代が舞台なので三銃士のモチーフを取り入れた。
始まりはサン・バルテルミの虐殺、終わりはフランス革命と全体的に内戦的争いに縁が深いため仲間割れがトラウマになっているという設定にした。一見すると明るくお茶目なみんなの人気者に見えるが、実際には争いを恐れ無理してふるまっている部分もあるという性格的深みを作った。
百合と三銃士だけだとデザインモチーフとして足りなかったため、宮廷の蝶、みんなに愛される華やかなものとして蝶のモチーフを取り入れた。
フランスの源流となったフランク王国のカール大帝(=シャルルマーニュ)が持っていたとされる剣「ジョワユーズ」を主武装として用いている。
iii)ロマノフ朝
ロシア・大ツァーリ時代を治めた王朝の名を冠する女神。クールで自分にも他人にも厳しく、なかなか心を開かない。頭の回転が速く、現実主義者で、冷酷な判断でも有効であるとみれば躊躇せず下せる。
基本的に人間嫌いで、その中でも特に粗野な男が嫌い。逆に小さな子供や動物は(顔には出さないが)好いており、出来るだけ守ろうとする。身長が低いのを少し気にしている。
”絶対王権”の獲得については、クールな彼女にしては珍しく強い執着を見せている。”騎士”に対してもなかなか心を開かないが、”絶対王権”獲得に欠かせない仲間としてしぶしぶ認めている。
基本的に継続した長さが強さにつながる女神たちだが、彼女だけは三百年近く続いたはずなのに妙に出力が低い。その理由は……
元ネタについて:ロマノフ朝(ロマノフちょう、1613年 - 1917年)は、1613年から1917年までロシアに君臨したロシアの歴史上最後の王朝である。 (Wikipedia「ロマノフ朝」のページより)
元ネタから「デフォルメ」した部分
ロシアの王朝ということで、ロシアには何となく厳しくて怖そうなイメージがあるため、クールな性格にした。また、服装も軍服をイメージしたものとした。
着ているドレスの軍服のデザインは皇帝を守っていた近衛兵のデザインを取り入れた。
寒い国なのでファーをデザインに取り入れ、マントを付けた。また、性格とも釣り合いが取れるよう肌の露出を控えめにした。
ロシアの伝統的な女性の頭飾りである「ココシニク」を被っている。
ロマノフ朝最後の王家の死因が銃殺なので銃痕のモチーフを取り入れた。また、服の裏に宝石を縫い付けており、それが弾丸や銃剣から身を守ったこともあったという記録があるため、銃痕のようになっている部分からは宝石がのぞいている。
元ネタから「掘り下げ」た部分
本来は心優しい性格である、ということで軍服らしく見えるドレスは羽織っているだけであるというデザインにした。スカートの部分の真ん中は内側に着ているふわふわした女性らしいデザインのドレスが見えており、本来の性格を示唆している。
ロシアの伝統的英雄叙事詩であるブィリーナの英雄の一人、「ドブルイニャ・ニキーティチ」が使っていたとされる魔法の鞭をイメージした鞭を主武装とした。厳しいイメージにも合っている。
以上が今回デザインしたキャラクターである。
「デフォルメ」と「掘り下げ」のバランス及び「ストーリー性」の部分を重視して制作した。
5.コンテンツを作ってみてのまとめ
ここまでで今回の目的である、研究結果を生かしたコンテンツの制作はひとまず終わった。あらためて研究結果と照らし合わせながら、今回のコンテンツをおさらいしていきたい。
i)元ネタ選び
研究結果より「The」で表せるもの、ストーリー性があるものを中心に候補を出し、その中から様々なことを考慮した結果、元ネタは「王朝」に決定した。
ii)コンテンツの媒体及び枠決め
研究結果より、配信媒体は、近年最も「愛される」コンテンツになりやすいスマートフォン向けソーシャルゲームに決定した。
コンテンツの方向性として、研究の中心が「愛される擬人化キャラクター」であるため、キャラクターを何よりも重視し、自分の「推し」を思いっきり応援できるようなシステムにしようと考えた。また、それに伴って、レアリティや固有のスキル・必殺技の良し悪しだけでキャラクターの強さが決まらないアクションバトルゲームにすることにした。
研究の中で見つかった近年多い流れである「新シナリオ主義」に則り、ムービー・演出に力を入れた深みのあるシナリオをコンテンツの売りとして制作する想定とした。また、キャラクター重視の方針に従い、一本筋のメインストーリーを用意するのではなく、キャラクターごとにメインストーリーを用意する想定とした。(買い切りのアドベンチャーゲームで言うところの「ルート」的想定)
iii)コンテンツの中身決め
今回新たに分析・考察した結果として、「新シナリオ主義」・特にバトルものコンテンツのシナリオは大きく分けて三パターンあることが分かった。近年人気が高いのは「世界の危機」パターンであるが、競合相手が多すぎる上、キャラクター重視の方針にも沿わないため、「バトルロイヤル」パターンに決定した。
それに伴い、あらすじ及び世界観を決定した。
iv)キャラクター制作
決定したコンテンツの枠・世界観に沿ってキャラクターを三体制作した。元ネタを選ぶときに意識した「ストーリー性」を生かし、「デフォルメ」と「掘り下げ」をバランスよく行ってキャラクターを組み立てた。また、擬人化コンテンツにおいて大切な要素となる「元ネタへのリスペクト」を意識した。
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