田舎のお寺は、超ハイテクIT寺院になれるのか。 ー郷福寺のゆるっとIT化ー
コロナによってお寺もリモート。朝勤行や法会をネット中継。
もしかしたら葬儀や法事もオンライン!?
そこで、ちょっと待てよと考えた。
うちはうちで、ゆるっとIT化だ。
お寺の中のパラダイムシフト
コロナウィルス感染拡大により、パラダイムシフトが起こると言われている。
つまり、会社に行って稟議のハンコをもらって長いだけの会議をして・・・という従来の仕事が不可能になる。
必然的に今までできそうでできなかったテレワークになって、仕事が一気に変わるというような、今まで当然と考えられていたことががらっと変わることだ。
このとき私が考えたことは「いよいよ葬儀・法事もリモートか」だ。
さぁ、お寺もITだ、葬儀もネット中継、法事もオンライン、レッツパラダイムシフト。
この波にしっかりと乗る親友がいる。
私が敬愛する徳島のお寺の住職は、朝勤行をネット中継。お賽銭をいただくシステムも構築している。
〈22番札所平等寺〉 https://byodoji.jp/
ところが私は、ちょっと立ち止まって考えた。
結果、
郷福寺はゆるっと進めることにした。
ほんのちょっと、ITの嵐を巻き起こすだけ。
私が副住職を務める郷福寺が目指すもの
郷福寺は、長野県塩尻市にある田舎のお寺である。
その郷福寺で私が考えている方向性は、
「寺院と地域社会との関係を再定義する」というものだ。
私が信州に帰ってきてから住職に散々文句言われながら通った、
信州大学大学院でまとめた学位論文のテーマであった。
論文の内容をざっくりまとめると、
今までお葬式や法事という限られた接点であったものを、人生の中のいろんな場面で寄り添えるように、かといってべったりもくっつかない、ほどよい接点に再定義するということである。
この方向性で活動していくと、広報に問題があることがわかってきた。
現在、郷福寺のお知らせは紙ベースの新聞やチラシを総代の皆さんに配ってもらっている。
例えば子育てサークル「ののさま」という催しを月一回行っているが、今までの広報では子育て世代に情報が届かない。
そこでITを駆使して、というわけにはいかなかった。
子育てサークルの広報でもっとも効果的だったのは、やはり紙ベースの子育て世代向けフリーペーパーだったのだ。
大切なのは方法(IT化)ではなく、内容
では、郷福寺におけるITの必要性とはなんだろうか。
コロナウィルス感染拡大の中、考えてみることにした。
さしあたり、郷福寺では4月28日の春の大祭・大般若法会が迫っていた。
例年なら、総代やたくさんの檀家さんが参列する。
しかし今年は、総代の役員のみとなった。
今年は寂しいね、で終わりそうなところをちょっとだけIT化してみることにした。
28日に行われる行事のうち、午前中の護摩法会を動画にして、
YouTubeチャンネルにアップした。
そのままリアルタイム中継する、YouTubeにする、Instagramにする、いろんな方法を検討したが、
編集して解説を付け、数日かけてYouTubeに動画をアップした。
参列できなかった分、画面を通じてお寺に心を寄せてほしい、というメッセージを込めた。
残念ながら、その後の自粛で動画に対する反応をいただけていない。
しかし、コロナウィルス感染拡大の中で上げてきた動画に様々な声が寄せられた。
説明の手間を省きたい一心で作った蓮の植え替え動画をいつも見てるよと言ってくださったり、
信州を離れて東京に暮らす方が孫にやり方を教わりながら見てるよと手紙を送ってくれた。
そんなに再生回数が伸びるチャンネルではないが、それでも不得手であろうと思っていた高齢の方たちが私や家族に聞いて一生懸命見てくださった。
そのとき、気がついた。
大事なのは、見たいと思ってもらえる気持ちと内容だ。
媒体でも、手段でもない。
郷福寺のゆるっと目指すIT化
郷福寺の目指すIT化の方針が見えてきた。
今までやってきたことをそのまま、IT化するのではなく、
今までの形を補強するように、プラスアルファで見たいと思ってもらえるコンテンツを用意するという方向性だ。
郷福寺では次にお盆の施餓鬼会をどうするかという問題が出てきている。
この方向で、施餓鬼会を再構築してみようと考えている。
私は、郷福寺でほんのちょっとITの嵐を起こそうと思う。
スマホは電話とメールだけというおじいちゃん、おばあちゃんが覗いてみたくなるような、ゆるっとしたITの嵐。乞うご期待。