呪術廻戦 第236話「南へ」を読んだ私が見た幻覚
※※この記事は当該話のネタバレを含みます。※※
※※筆者に夢願望はありません(むしろ解釈違い)ですが、夢要素が含まれるように見えるかもしれません。苦手な方はブラウザバック推奨です。※※
五条悟のいない朝
私は236話の内容を、9月21日木曜日の朝に知りました。所謂早バレです。
寝惚け眼のままYouTubeのshort動画をスクロールしていた私の目に、下半身だけになって直立している五条先生の姿が飛び込んできました。
前日からネタバレが出回っていることをX(旧Twitter)で知っていた私は、すぐさま内容を確認しました。衝撃的なあの画を見てしまった以上、ネタバレを避ける努力は一切無意味だと思ったのです。
そして、膝から崩れ落ちました。泣きました、朝から。
五条悟の死はいつかくるものと身構えていましたし、もし死んでもストーリーの進行上仕方がない、それに死ぬと言ったって所詮は二次元の存在だ、なんて思っていました。
しかしそれは間違いでした。私が思っていた以上に、五条悟の存在は大きかった。
単なる「推しの死」であればまだ、致命傷で済んだかもしれません。しかし作中最強とされた彼の死が物語の中で持つ意味があまりに大きく重く、私はそれに気づいてただ泣くことしかできませんでした。
気を抜けば泣いてしまいそうになるのを必死で抑えて二日間を過ごし、私は少しずつこの悲しみと折り合いをつけていこうとしました。自分の中で納得しようと言い聞かせて、彼の最期を知った三日後、土曜には涙も流れるほどではなく、滲む程度になっていました。
夢のような幻覚
そして日曜の朝。私は五条悟の幻覚を見ました。
夢に出たと言いたいところですが、残念ながら幻覚です。脳はぼんやりと起きたことを理解していましたし、体も起こしていました。
そうして暫くすると段々覚醒してくる、そのはずでした。しかし気付くと私は、彼の遺体の隣に座っていました。
正確に言えば、上半身の左隣です。私は深く考えることもできず、徐にその上半身へ手を伸ばしました。鍛え上げられた肉体は固く、厚みがあって、とても死ぬような人のものとは思えませんでした。
私は彼の体を持ち上げようとしました。上半身だけなのにひどく重たい彼の体は、流れ出た血で滑り、簡単には持ち上がりません。
それでも私は彼の両脇を自分の肩に乗せて、頭を左肩に乗せることでようやく抱えることができました。
重たくてとても立ってはいられませんでしたから、座って腿に乗せる形になりました。
胸から上しかないにもかかわらず、私の膝の上は彼の体でいっぱいになりました。ほんの少し背を丸めれば、その体重はほとんど肩には掛からなくなり、ただ私の胸を埋め尽くしました。
彼の体は、温かかった。触れた面全てから感じるその体温に、彼の命を感じました。
しかしその温度はつい先刻まで戦っていた筋肉質な成人男性のものにしては低いようでした。生と死を同時に感じる、そんな温もりを私は必死に保とうと抱きしめましたが、時間が経つにつれなけなしの体温すらなくなっていきます。
私は腕の中のものが永遠に喪われていく恐怖でわんわん泣きました。
完全にその体が冷え切る前に、私の意識は自室のベッドの上に戻ってきました。現実の私は泣いてはいませんでした。ただ暫くは立ち上がることはおろか、視点を動かすこともできずに茫然と座っていました。
以上が私の見た幻覚です。
喪ったものはあまりに大きい。少なくとも向こう数週間はこの感情を引きずったままだと思います。
それでも、こんな苦しい思いをしても、やっぱり彼を知れて良かった。呪術廻戦を読んでいて良かった。
こうなった以上、私は彼らの物語を見届けます。どんな結果になろうと、それは五条悟という一人の人間が生きた世界の話なのだから。
芥見先生、彼を生んでくれてありがとうございました。
お疲れ様、五条先生。