ぐらちゃんのバースデーライブ最高だったのうという話
先日、hololive English所属の人気VTuber、がうる・ぐら(Gawr Gura)さんのバースデーライブがありました。
「いやぁ~よかったな~~」ということでちょっと振り返りたいと思います。
ただ、ライブがあることを初めから把握していたわけではありませんでした。
戌神ころねさんのXにぐらさんとのツーショットが上がっており、ライブ衣装の感じからして「きっとこれは記念ライブ的なものがあったんだな!」と知ることができました。
今回のぐらさんのバースデーライブのテーマは「80年代」ということで、セトリは1980年代のシティポップや近年制作の「80年代」らしさのある曲を中心に構成されていました。
■オープニングのアニメについて
今ではすっかり見かけなくなった「ブラウン管」のテレビから始まる演出が心にくい(そしてテレビの周りには本ライブのゲスト出演者にまつわるグッズが配置されています、芸が細かい!)。
銀河をバックに荘厳なテロップ、勇壮なオーケストラ。
恥ずかしながら不勉強なもので知らなかったのですが、有識者たちのコメントから察するにアニメ『銀河英雄伝説』のオープニングのパロディのようですね。
ぐらさんが儚げに歌う「SKIES OF LOVE」。
またたく銀河に続々と映し出されるゲストホロメンたちの笑顔。
最近は涙もろくなったせいか、こういう演出だけでもう涙腺がうるうるしてまいります。
ここでぐらさんの対になる人物として設定されているのがマリン船長。
二人でオリジナル曲「SHINKIRO」をリリースしたり、混合ユニット「UMISEA」のメンバーとして共演するなど、つながりが深いことからの抜擢かと思います。
ぐらさんはhololive ENにおいて最大のチャンネル登録者数を誇り、片やマリン船長もhololive JPにおいて最大の登録者数を擁し、VTuberのトップ街道をひた走っています。
二人は同僚であると同時にライバル。
両雄並び立って対峙する姿から「お互いに高め合ってこのVTuber界を牽引していこうや」的なシンパシーを私は一方的に受け取り、「シビれるなぁ」と勝手に感慨に浸っておりました。
原典に倣いラストもシリアスに締めるかと思いきやそれは壮大な前フリであり、マリン船長のとある特徴を生かした表現でズッコケ的なオチを付け、これから始まるライブの期待を盛り立てる手腕は「お見事!」の一言です。
■個人的ヒット3選
今回のライブは幕間のホロメン同士のイチャイチャMCパートが無い、ノンストップで歌を聞かせていくストイックな形式でした(勿論どちらも好きです!)。
ライブで披露された曲の中からお気に入りを3つチョイスして感想を述べたいと思います。
① テレフォン・ナンバー(ゲスト:戌神ころね)
1981年発表の大橋純子のナンバー。
昨今は70~80年代ごろの日本のシティポップが海外で爆発的にリバイバルヒットを巻き起こしており、その流れの中で再評価されている一曲のようです。またまた不勉強なもので、今回初めてこの曲を知りました…。
正直何度見返しても「Hmmmmm……So cute………」以外の感想が浮かんでこないのですが、もうちょっと頑張って言語化してみます。
冒頭の「Ah・Wooooooooooo↑」のファルセットから浮遊感がハンパない。夜の都市空間をスーッと飛行するようなきらびやかな曲の世界へと一気に引き込まれます。
お互いにゲーム好きということもあり、普段の配信ではゲームにかじりついている印象が強い二人ですが、いざこのようにひらひらと優雅に踊って可憐に歌うところを見ると「あんさんらはやっぱりアイドルやったんやなぁ……」と思わずエセ関西弁でしみじみとしてしまいます。
語尾が少ししゃくって上がる、ころさんの特徴的な歌い方。最高に「アイドル」しているなぁと。
見ている内に、いつぞやの「おかころ」3周年記念配信で猫又おかゆさんが「ころさんってすごい天真爛漫だし、優しいし、かわいいんだけど、なんか目を離したら消えちゃうような気がして……」「ころさんってなんか儚い生き物みたいな感じがする」と語っていたのを思い出しました。当のころさんは「シャボン玉かな?」と混ぜっ返していましたが、おかゆさんのその実感はなんだかこう胸に迫ってくるものがあります。
曲全体を包み込む透明感は確実にころさんの「儚さ」から醸し出されたものであり、この曲のパートナーにころさんを選んだプロデューサー・ぐらの手腕やおそるべしといったところでしょうか。
けっこうレアな二人の組み合わせ、堪能いたしました。
② YOUTHFUL DAYS' GRAFFITI(ゲスト:紫咲シオン、ラプラス・ダークネス)
2009年発表の初音ミクのナンバー。
作曲は鼻そうめんPこと かんざきひろ先生。作曲家であり、アニメーターであり、イラストレーターであり、姫森ルーナのお父様(デザイナー)でもあります。多彩すぎんか……?
その軽快でバブリーなディスコサウンドからニコニコ動画では「おっさんホイホイ」のタグが速攻で付けられたそうな。
ほぼ同じ背格好のクソガキ三人衆(敬称)がノンストップでブリブリ踊りまくるのを見ていると、幸せの三大ホルモンであるところの「オキシトシン」「セロトニン」「ドーパミン」が体内で勝手に生成、健康寿命がグングンと音を立てて延びていくのが分かります。それにしても海外ニキのコメントでさらっと「Kusogaki trio」と呼ばれているのには普通に笑ってしまいました。
世界に羽ばたく“KUSOGAKI”。
歌もダンスもちゃんと良くて高品質なエンターテインメントに仕上がっているのですが、なんというか良い意味で「おゆうぎ会」感があり、全ての観客には強制的に「父兄」「保護者」の役割が与えられます。
客席中央のステージに向かうランウェイを走り抜けるのを見て「転ばないでね!」とハラハラしたり、ニコニコのダンスを腕組みして見ながら「ねぇねぇ、ウチの子けっこうすごいでしょう!?」と身内びいき全開で周囲のお母さまお父さまがたに言いふらしたくなってきます(自宅で一人で視聴しているにもかかわらず)。
フィニッシュはキュートなポーズでキメ。ウチの子たちったらもう天才!
現在は配信活動を休止している紫咲シオンさんですが、今回のライブや先日の「歌ってみた」のように時たま浮上して我々に元気な姿を見せてくれるのはとても嬉しいですね。
③ Plastic Love(ゲスト:常闇トワ)
1984年発表の竹内まりやのナンバー。
リバイバルヒットした日本のシティポップの中でも、松原みき「真夜中のドア」に並ぶ代表格と言っても過言ではないでしょう。
ぐらさんもこの曲には思い入れがあると見え、歌枠で歌っているのを何度か見ました。
「時は来た」と言ったかどうかは分かりませんが、ここに来て満を持しての決定版といったところでしょうか。
振り付けは最低限に、歌に集中してしっとりと歌い上げます。
恋をめぐる大人の駆け引き。「恋なんてただのゲーム」と“Plastic Love”を標榜するも、まだ徹しきれない女性の心のゆらぎ。その主題をトワ様のメロウな低音ボイスが引き立てます。
かつてシティポップは「実際の人々は歌詞のように優雅な暮らしをしていない、こんなのウソっこの世界じゃないか」と批判されたことがありました。
私からすれば「何を野暮なこと言ってるんですかい?」という話です。手に届かない高尚な世界・在り方を夢想するのが人間というものではないでしょうか。
私は終盤の「I'm just playing games, I know that's plastic love……」のリフレインが好きなのですが、これを聞いていると、往年のシティポップの名作たちが紡いできた架空の都市空間へといざなわれ、フィクションのネオンライトの中に漂う自分を想像します。
今回のライブの舞台となった「Shark City」も、バーチャルな夢に支えられた一種の理想郷なのかもしれません。
■おわりに
さて、そんなこんなでぐらちゃんのバースデーライブを振り返ってまいりました。
それにしてもホロメンのライブを見ていつも思うのは、「こんなスゴいものがタダで見られるなんてスゴい!」ということです。
ネットが世の中に普及してからというもの、動画・マンガ・ゲーム・文章など人を楽しませる分野は「基本無料」のものが大幅に増え、その環境に慣れきった身からしてもマリン船長の「昭和歌謡祭」然り、ホロメンの高品質なライブをタダで見させていただける幸福を享受できるのはそれだけで「この時代に生まれてよかったなぁ~」と思わせるものがあります。
「そんなに言うんだったらスパチャの一つでも投げたり、ぐらちゃんの記念グッズの一つでも買ったの?」というエグい角度からのキラーパスが私のコメカミに向かってきましたが、それに対しては「うう……あくまでも一銭も払ってないです……」と膝から崩れ落ちてその場で失禁することでしか皆様のご機嫌を伺えないのですが、ちょっと待ってください。
やっぱり個人的にはぐらさんに対して「心理的な借り」というものが発生しているとは思うのです。
こんなに素晴らしいライブを見せてもらったのだから、ということである人はスパチャを投げたり、ある人はグッズを買ったりして感謝の気持を表現します。それらの行為に及ばずとも、たとえば私なら初歩の初歩ではありますが基本的なスタンスとして「もっとぐらちゃんを応援しよう!」という気持が形成されます。
今回書いている記事も金銭的価値では100円にも満たないかもしれませんが、「いいライブを見せてくれてありがとう!」という気持の発露から生まれたものです。それが今回私の取った手段です。
いろいろ書きましたけども、要約すると「ホロライブはんは、太っ腹やでぇ!」ということになります。それが彼らの戦略(?)かどうかは分かりませんが、きっとまたこのライブで新たなファンを獲得したに違いありません。
Shark Cityの領土はこれからもどんどん広がっていくことでしょう。
シティポップが紡ぎ出す幻想の夜は、まだ始まったばかりなのですから。
失敬、とても重要なことを一つ言い忘れていました。
Gura-chan, Happy birthday to you!!!