続3部作とは何だったのか(1)
I have a bad feeling about this.
嫌な予感がする・・・
これは、スターウォーズの全ての作品で、最低でも一回は、必ず出てくる台詞だった(過去形である)。
ジョージ・ルーカス(以下、ジョージ)が制作に携わった、六作品には、必ず出てくる台詞だ。
あれは2013年の頃だっただろうか・・・
ディズニーが、ルーカス・フィルムを買収したのち、恐ろしいことを発表した。
スターウォーズの7~9(続三部作)を制作するというのだ。
私の口から、自然と上記の台詞がこぼれた・・・。
ちなみに、英語の台詞で、こぼれた。
既に完結済みの話なのだ。
続編が作れるのか?
想像してほしい。
ラピュタでも、鬼滅の刃でも、何でもいい。
大団円を迎えた物語の続きを想像できますか?
ラピュタでも、鬼滅の刃でも、後日譚という形で描くことは可能だと思う。
しかし、スターウォーズには、それが出来ない。
ナルトなら、息子のボルトを登場させれば良い。
ドラゴンボールなら、息子の悟飯を登場させれば良い。
しかし、スターウォーズには、それが出来ない。
なぜなら、三部作という構成になっているからだ。
単なる後日譚では済まされないのだ。
ましてや、最終話となるエピソード9(以下、EP9。他作品も同用。)は、特に難しい。
以下の理論が必要となってくるからだ。
「EP6が最終話ではなく、EP9が真の最終話である。なぜなら・・・」
ディズニーは正気か?
私の率直な意見だった。
更に、EP7~9を創る以上、下記の理論が求められることになる。
「EP9から見た時、この物語がEP8になり、この物語がEP7となる。それゆえに、この物語がEP6となり、この物語がEP3とならざるを得ないのである。なぜなら・・・」
これに答えられるモノを持っているのか?
漠然とした不安を抱え、彼らの発表を聞いた。
ジョージが創ったスターウォーズには、物語の構成について、ちゃんと説明できるものが存在する。
下記を御覧いただきたい。
EP1 見えざる脅威 アナキン(主人公)の旅立ち
EP2 クローンの攻撃 アナキンの結婚、そして、親との死別
EP3 シスの復讐 アナキン、家族を守らんとして闇落ちする
EP4 新たなる希望 ルーク(息子)の旅立ち
EP5 帝国の逆襲 息子が真実を知る(親子の再会)
EP6 ジェダイ再来 息子が父を救う
銀河の内戦も、政治劇も、全て時代背景であり、本質的部分は家族の物語なのだ。
戦争や政治抗争だけを描いているのなら、上記のような物語の構成には、なり得ない。
時系列で説明すると下記のようになる。
EP1 0年(スタートの年) (公開年:1999)
EP2 前作の10年後 (公開年:2002)
EP3 前作の3年後(計:13年)(公開年:2005)
EP4 前作の19年後(計:32年)(公開年:1977)
EP5 前作の3年後(計:35年)(公開年:1980)
EP6 前作の1年後(計:36年)(公開年:1983)
EP1とEP2の間では、10年という間隔が置かれている。
10年間に何も無かったとは思えないが、そんなことはどうでも良いのだ。
重要なのは、主人公が愛する女性と出会い、そして結婚する(愛を知る)ことなのだ。
題名がスターウォーズなので、時代背景として、戦争に向かう空気を漂わせているが、こちらが重要な要素なのであれば、主人公の結婚に、わざわざ時間を割く必要はない。
もっとじっくりと、淡々と、政治抗争や利権などの説明を交え、戦争へと向かう経緯を深掘りすれば良い。
主人公は知らぬ間に結婚してました・・・という展開でも良いのだ。
更に、EP2とEP3までの3年間は、クローン大戦の真っ最中。
ウォーズが3年間も、途切れることなく、おこなわれているのだ。
しかし、ジョージが、ここを描くことはなかった。
EP3は、戦争3年目の終結間近が描かれるのだ。
家族を失う恐怖から、闇に落ちる主人公。
一方的な愛の結末は、家族の離散、古い友人との悲しい別れとなって、主人公を後悔させるのだった。
そして、EP3とEP4の間隔は、19年という長い歳月となる。
息子が冒険出来る歳頃になるまで、全く描かれていないのだ。
主人公や息子の活躍が、銀河の歴史や戦争に大きく影響を与えたのは事実だ。
そういう意味では、戦争が物語の軸になっているようにも見える。
だが、各エピソードの間隔を見てもらえれば分かると思うが、戦争の経緯や銀河の歴史よりも、主人公と家族の物語が主軸なのだ。
厳密に言えば、アナキン(ダースベイダー)とルークの物語なのだ。
ルークの妹、レイアですら、蚊帳の外だ。
彼女は、育ての親である元老院議員の父を通じて、ダースベイダーに会っている可能性がある(EP4の冒頭シーンより)。
しかし、そのことには全く触れられない。
EP6において、レイアは、兄のルークから、実の父親がダースベイダーだと知らされる。
衝撃を受ける彼女だったが、ルークと兄妹のような気がしていたと、自身もフォースで感じ取っていたことを告白している。
そのシーンは、簡潔に描かれていた。
重要ではないからだ。
重要なのは、息子が父親を救うことだからだ。
EP6の終盤では、父親と息子のシーンと同時進行で、反乱軍と帝国軍の最終決戦がおこなわれる。
要するに、家族(父と子)の物語に、戦争や時代のうねりを絡めたのがスターウォーズなのだ。
銀河を舞台にした英雄譚なのだ。
当然、EP7~9も、家族の物語でなければならなかった。
当然、EP6における父と子の和解に続く、家族の関係性から始まらなければならなかった。
そこに戦争や時代のうねりを絡め、壮大な物語にしなければならなかった。
制約が多い物語なのだ。
続編を創るというディズニーに対して、私が抱いた不安。
ルークは最後まで愛する人に出会わぬまま・・・。
それゆえに父親となる要素は一欠片もない。
どうやって、家族をつなげるのか・・・。
レイアには、ハン・ソロという愛する人がいた。
しかし、彼女(とハン)の子供では、EP1~6の流れから逸脱してしまう。
どうする気なのだ、ディズニーは・・・。
I have a bad feeling about this.
嫌な予感は的中したのだった。