続3部作とは何だったのか(2)
(1)でも述べたが、ジョージ・ルーカス(以下、ジョージ)のスターウォーズはエピソード6(以下、EP6。他作品も同様)で完結している。
では、何を以て完結となっているのだろうか。
結論から述べれば、家族の物語として完結しているのだ。
戦争は二の次となっている。
戦争の終結は、全く描かれていない。
帝国軍が全面降伏したのか、それとも戦線が膠着し、停戦協定を結んだのか、全く謎のまま、物語は完結するのだ。
EP6は、戦争終結の物語ではなく、息子が父を救う物語だった。
すなわち、父と子の和解が成されたことで、物語は完結したのだ。
そして、もう一つの答えは、善でも悪でもない、愛こそが重要だ、という結論だ。
主人公のアナキン(ダースベイダー)や息子のルークは、ジェダイになろうと努力する。
ジェダイは、何事にも動じない心が、最大限の力を発揮させる源だと説く。
その力の源を体得しようとしている、いわゆる求道者のような存在だ。
それに対して、シスという存在が登場する。
シスは、憎しみや怒りこそが、最大限の力を発揮させる源だと説く。
簡単に言えば、ジェダイが善で、シスが悪という構図だ。
しかし、物語をじっくり見ていけば、その受け止め方が間違いだと気付く。
ジェダイは善かもしれないが、決して弱者を救済しようとはしない。
あくまで、民主主義の守護者のような存在なのだ。
ナブーという惑星が危険な目に遭っても、ジェダイが救うことはない。
元老院議会に議題を提出し、平和的解決を模索するよう提案するだけだ。
アナキン(主人公)の母親を救うこともない。
彼女は、共和国の法令で禁止されている奴隷という身分だが、彼女を解放しようとはしない。
アナキンも奴隷だったが、解放された理由は、奴隷だったからではない。
彼に強いフォースが有ると気付き、ジェダイに育て上げようと考えた為だ。
彼らは怒りや憎しみ、悲しみや寂しさを否定する。
それゆえに、アナキンの母親を可哀そうだと思うことはない。
ナブーの人たちが大変だと憐れむこともない。
そういった心は、人を弱くさせる。
そして、その感情を持つと、最終的には、暗黒面(シスの方向性)に落ちてしまうと考えているのだ。
一方、シスは、ジェダイに復讐しようと考えている。
これは、シスの教義が正しいと主張する為ではなく、ジェダイが、シスを撲滅してしまったことに起因している。
ジェダイは、異なる考えの者を徹底的に排除した歴史を持つのだ。
そして、シスも、ジェダイを壊滅させ、シスの世にしようと目論んでいる。
一見すると、善と悪の戦いの様に見える。
キリスト教的な観点でいけば、そうなる。
しかし、ジョージは、日本映画、特に黒澤明の大ファンで、アメリカ的(西洋的)な価値観に疑問を抱いている男だった。
そして、善と悪という価値観では、最終的に限界を迎えると訴えたのが、スターウォーズという作品なのだ。
西洋の歴史を紐解くと、善と悪の姿が見えてくる。
キリスト教は善、イスラム教は悪。
資本主義は善、共産主義は悪。
アメリカは善、アルカイダ(かつては日本も)は悪。
延々と、この図式で動いているのが西洋社会なのだ。
スターウォーズの物語世界に戻ろう。
善を表明しているジェダイだが、弱者を救済することもなく、それよりも大義や正義を重んじている。
憐れむこともなく、そのような感情を否定する。
EP1において、アナキンは、ジェダイとなる為、母親と別れることになる。
このとき、アナキンは寂しさや悲しみを覚える。
EP2においては、愛する女性(パドメ)に出会い、愛することの喜びを知る。
また同時に、母親を殺害され、失うことの恐怖と怒りも覚える。
そして、EP3において、家族を失う恐怖から、闇に落ちてしまうのだ。
この状況を見て、アナキンの師匠、オビワンは、彼を斬り捨てる。
長老的存在のヨーダも然りだ。
アナキンに何があったのか、考えようともしない。
悪の道であるシスとなったから、倒さなければ(殺さなければ)ならないと考えるのだ。
オビワンは、愛する弟子であり、戦友であるアナキンの心に寄り添おうとはしない。
元老院議長は悪だ!・・・と叫ぶだけだ。
結局、アナキン殺害の方向で動くのだ。
ところで、アナキンは、どうしてシスの暗黒卿(ダースベイダー)になったのか、そのことについても触れておこう。
アナキンは、シスの暗黒卿であった、元老院議長を救おうとして、ジェダイを殺害してしまう。
ジェダイの本質を理解しているアナキンは、自分が許されない、もうジェダイに戻れない境遇となったことを知る。
もう後戻りできない状況となったのだ。
ジェダイが、アナキンの心を理解することはないと、ジェダイであるアナキン自身が分かっているのだ。
彼らは斬り捨てる。
弱者を、迷える者を、悩む者を・・・
弱い心だと、一蹴してしまう存在なのだ。
そんな中、アナキンの心に寄り添おうとする人物がいた。
妻のパドメだ。
彼女は、アナキンを説得する為に、夫の元に向かう。
その船に、こっそりと潜り込むオビワン。
アナキンは、パドメがオビワンを連れて来た、そして自分を殺害させようとしている・・・と勘違いしてしまう。
妻にも裏切られたと怒るアナキン。
彼は、家族を守ろうという動機を忘れ、逃れられない運命に諦観する男と成り下がってしまったのだ。
説得に失敗し、絶望の中、パドメは命を落とすことになる。
そして20数年後、息子のルークが、母の遺志を継ぎ、父を説得することになるのだ。
EP4から、息子のルークの物語となる。