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ほんとによくなる歯間ブラッシング
長年の歯茎の違和感や鈍痛が消えた
目 次
はじめに
1 「もぐらのうた」令和2年4月4日の記事
2 8020運動で表彰された
3 8020表彰はブラッシングのせい
4 私のブラッシングのやり方
5 ブラッシングとの出会い
6 ブラッシングを手抜きする
7 ブラッシングへ回帰から歯間ブラッシングへ
8 長年の歯茎の違和感や鈍痛が歯間ブラッシングで解消
9 違和感や痛みのある歯間を重点的に「こする」
10 「こする」ことによる効果
11 唾液の働き
12 歯と歯茎の健康は心身の健康の基本
13 歯間のいろいろで注意すべきこと
おわりに
はじめに
私は短歌と随想を組み合わせたようなものを随想歌と名付け、随想歌を集めた歌集に「もぐらのうた」というタイトルをつけ、24名の知人友人に二ヶ月ごとに配っておりますが、その「もぐらのうた」令和2年4月4日に「歯の痛み自分で治し驚いた歯間ブラシをうまく使って」を書きました。そこに書かれた内容は驚くべきものでしたが、読み手によっては文字数が少ないため読みとりが浅く「あ、そうですか」程度にしか読みとれないかもしれないと思い、もう少し丁寧に書いたものを作ろうと考えて出来たのがこの記事です。
一番書きたい、というより、伝えたい順からいうと
* 歯間ブラッシングの有効性 = 歯間ブラッシングは有効なのに広く知られていないから知らせたい。
* 歯磨きよりもブラッシング = 「白くする磨き」より「こする大事さ」を伝えたい。
* 歯間ブラシは爪楊枝と同じではない = 歯間ブラシは「食べカスをとるもの」程度の認識を変えたい。
これらのことについて、偶然知り得た知識をもとに取り組んでみて、あげることが出来た成果を事実として伝えるならば、私が得た歯の健康と喜びと感動を他の人にも持ってもらえるのではないかと考え著述しました。参考にして頂けるなら嬉しく思います。
1「もぐらのうた」令和2年4月4日の記事
歯の痛み自分で治し驚いた 歯間ブラシをうまく使って
定期的に歯科医院に通っている。治療のためではなく検査のためで、行くたびに「手入れがいい」と褒められる。歯と歯茎の健康状態がよく、「8020表彰」もされた。ずーっと調子が良かったのだが、痛みがくるようになった。歯が痛むのではなく歯茎のあたりが鈍く痛み、日中は感じないが、夜、寝ていると目が覚めるほどの痛みである。一週間も続くので歯科医に訴えてみた。X線検査などもしての医師の診断は原因が特定できないので、とりあえず噛む働きをしていない奥歯を除去することになり抜いた。化膿止の薬と痛み止めの薬を3日飲んだ。痛みが来ないのはいいのだが、舌や頬の粘膜が荒れて過敏になったので、痛み止めの服用をやめた。再度医者に訴えても治療法は無いはずなので「ついに体の復元力も限界にきたのだろう」と悪化を覚悟したが「まてよ」と考えた。私の「8020表彰」は私のブラッシングのせいである。ブラッシングとは歯と歯茎を歯ブラシで丁寧にこすることである。歯と歯茎はこすられると血流と唾液の出がよくなる。血液と唾液は補修と復元の働きを持つので健康が保たれていたのだ。「何かブラッシングに足りないものがある」と考えたら、歯間にブラシが当たっていないことに気がついた。歯間ブラシを買ってきて歯間に差し込んだらとても痛い。痛いのは病んでいるからで健康なら痛くない筈だ。鏡で見ると歯間の歯肉が赤くただれている。そこで1日目は2回だけそっとこすり、2日目は3回こすり、3日目は4回こすってみた。こする度に痛みを感じなくなり、一週間たったら全く痛みを感じなくなり、歯間のただれも消えた。二週間後には完全に元に戻った。これは驚きだった。驚きはふたつ。私の体はまだ復元力を持っている驚きと、医者の力も薬の力も借りず、適度な刺激を与えるブラッシングで元に戻せた驚きである。よかった、よかった。
日に三度 歯間ブラシで歯茎良し 噛み噛み快調 食事おいしく
2 8020(ハチマルニーマル)運動で表彰された
私は76歳の時に白石歯科医師会から表彰されました。その際頂いた表彰状は下の複写の通りです。「8020よい歯のコンクール」とは80歳まで20本の歯が残っているようにしようという運動です。
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3 8020表彰はブラッシングのせい
私が表彰されるに至った最大の理由は私のブラッシングのせいだと思っています。
ブラッシングとは歯ブラシで歯と歯茎をこするやり方のことですが、通常のいわゆる「歯磨き」とは違うのでブラッシングと言っております。通常の歯磨きのやり方は、歯磨き剤を歯ブラシにつけて歯をこすり、その時間は一分弱で、目的は歯を白くするためと虫歯等の予防のためとされており、人によって違いはあるでしょうが、おおかたはそんなところかと思います。
4 私のブラッシングのやり方
*歯ブラシ 普通のハブラシと歯間ブラシ (太・中・細・曲がり)
*歯磨き剤 不使用で時々使用
*時間 毎日食後3回 3分~7分
*当てる所 各歯、歯茎、歯間、歯茎全体の表と裏、頬、顎裏
*こすり方 力を入れない。3回から6回。
*唾液 吐き出さず飲み込む
*補助具 手鏡、デンタルミラー(歯鏡)
これは、現在のやり方であって、後述しますが前はこの通りではありませんでした。3分から7分もやるのでテレビ見ながらやったり、寝転がって読書しながらやったりしています。こすると唾液が沢山でます。唾液の働きについては別項に書きますが、吐き出すのはもったいないので飲み込みます。というと顔をしかめる人がいますが、口臭などを想像し汚いと思っているからだと思います。がそんなことはありません。歯磨き剤を使うといっそう唾液が出て、吐き出しが多くなりブラシング効果が得られません。ブラッシングの効果といいますか、目的は歯を白くすることよりも、歯と歯茎を健康にし、口の中の清潔を保つためなのです。歯が白いことは美観の問題で、歯の健康と口腔の清潔さとは関係ありません。多くの人々はかって私がそうだったように、ブラッシングの本当の目的を知らず、歯磨き剤を使えば「歯の健康」と「口内清潔」と「美観」が得られると思って使っていると思います。今の私は、ブラッシングをやるには、歯磨き剤は不要なので使いませんが、「美観のため」と「歯磨き剤には有効な成分も添加されている」ので時々は使います。美観を気にするなら3回に1回などいいかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1728559151-cUI9RfLnwdsozGtrXNjBpeMC.jpg?width=1200)
5 ブラッシングとの出会い
私は 1987年 (昭和62年) 4月に宮城県柴田町立船岡中学校に教頭として赴任しました。その頃、柴田町は全町挙げて歯磨き実践の指定地域になっていて、町内全部の小学校と中学校が給食の後に一斉に歯磨きをするのでした。学校には内科の校医さんと歯科の校医さんがいるのですが、この学校の校医さんと柴田町の歯磨き運動がブラッシングの出会いとなりました。
* 宮城県柴田郡柴田町西船迫1-8-64 川口歯科医院 院長 川口啓一
歯科医の川口先生は校医なので生徒の検診や歯科衛生の講演などで学校においでになります。私は川口先生の応対をしているうちに先生の診療に対する考え方に興味を持つようになりました。
ある日、歯が痛んだので川口医院に行きました。その時、医院待合室に展示してある本の中に「人間なぜ歯を磨くのか」というタイトルの本を見つけ「変わったタイトルの本ですね」と先生に言ったら「あげる」と言われ頂きました。
* 石川 純 著「人間はなぜ歯を磨くのか」 医歯学出版株式会社 1986年3月20日発行
読んで衝撃を受けました。
たとえば本の「はじめに」の部分にこんなことが書いてあるのです。
歯石除去も、手術も、交合の調整も、動揺歯の固定も、一生懸命やりました。しかし、それは徒労で、すべて再発し、ただの一例も、完全によくなったと誇れるケースはなかったのです。
また、本文のほうには、ボストンの大学に留学し世界的な歯周病の権威グリックマン教授に学んだ際のこととして、教授は治療の第一関門をブラッシングとし、患者がブラッシングを身につけないうちは、他の治療はムダとして、治療を開始しなかったことが書かれてありました。
なんと、治療のどれも徒労だったこと、ブラッシングをやらなければそのような徒労に終わることが書かれていたのです。単なる机上の論でなく、治療現場の論であり、現場の事実として書かれていたのです。
この本は専門的な内容を分かりやすく書いていて素人の私も読むことができました。読んで、今までの常識的な「歯磨き」とは異なる、画期的な「ブラッシング」の知識と技術が存在することを知り、そしてそれはとても腑に落ちるもので、私の歯の健康を支える知見となったのです。
6 ブラッシングを手抜きする
川口医院の治療は他の歯科医院と同様に、削ったり、詰めたり、被せたり、抜いたりなどしてくださいますが、他の歯科医院と違うのは、ブラッシング指導が行われることです。治療室に入り、治療椅子に座ると、まず行われるのは、歯科衛生士さんから歯ブラシと手鏡を渡されてブラッシングするよう指示されます。手鏡を見ながら自分でブラシングをします。一定時間がたつと歯科衛生士さんが目視や検査液で検査し、ブラシが当たっていないところがあるとやり直しをさせられます。その後に川口先生の診察治療となります。こうした治療と指導を受けた私は自ら自宅でブラシングをするようになりました。が、やがて手抜きをすることとなります。
転勤になり勤務校と勤務地が度々変わりました。川口医院には通院できなくなり、勤務地の歯科医院の世話になります。また、仕事が忙しく、時間にも追われ、ブラッシングする余裕が時間的にも心理的にもなくなりました。診てもらう新たな歯科医院はブラッシングのブの字もありませんでした。そんなことから、ブラッシングの関心は薄れ、朝だけちょこちょこっと歯磨きをするという、よくあるパターンになってしまいました。
そうした期間が経過する中で私の歯にトラブルが生じました。親知らずが知覚過敏になり抜歯しました。門歯が虫歯になり義歯をつけました。奥歯が虫歯になり詰めました。そのようなことで、数カ所の歯科医院の世話になってしまいました。
7 ブラッシングへ回帰から歯間ブラッシングへ
1995年 (平成7年) に定年退職した私は時間的にも心理的にも余裕が出て再びブラッシングを始めました。というのも退職してから、虫歯が痛んだり、知覚過敏があったりして、再び川口医院を訪ねたからでした。しかし、川口医院は私の居住地からは車で30分の距離にあり、高齢が進むにつれ車での通院はおっくうになり、地元の歯科医院のお世話になることにしました。地元の歯科医院の歯科衛生士さんからは毎回「手入れがいいですねー」と褒められており、たしかにトラブルもなく定期検診だけで済んでおりました。
ところが、夜、寝ていると奥歯あたりの痛みで目が覚めるようになりました。日中は違和感があるもののそれ程でなく痛みも無いのですが、夜になると鈍痛がするのです。その痛みは歯が痛むのか歯茎が痛むのか、痛む場所がはっきりしない痛みです。漠然と奥歯あたりが痛いという感じなのです。こういう痛みは医者に説明が難しいのでどうかとは思いながらも、一週間以上も続くので、定期検診の際に訴えてみました。歯科衛生士さんも歯科医の先生もX線検査をはじめいろんな検査をして判断しましたが、明確な診断はつきませんでした。これは予想したことで、決して藪(やぶ)医者ではなく、もっともなことだと思います。もっと症状がはっきりするまで様子見ということになりましたが、違和感や鈍い痛みがだらだらと続くので、自分でブラッシングの検討を始めました。
今までトラブルもなく、したがって治療もなく、定期検診だけで済んでいたのに、違和感や鈍痛がするようになったのはなぜなのか。考えられるのは次の四つです。
(1) 食べ物の変化・・・甘い物など糖質や炭水化物を多く摂ると違和感や痛みが来ることがあるが、やめても来るのだから、これが決定的原因ではない。
(2) ストレス・・・睡眠不足とか心配事とかあれば自律神経などに不調をきたし、ひいては歯の不調にもつながるものだが、生活は安定しており、ストレスはない。
(3) 加齢による全身的な衰え・・・高齢なのだからブラッシングでは防ぎきれない老化による防御力の低下が原因であることは大いにありうる。
(4) ブラッシングの不適切・・・もしかしたらブラシが当たっていないところがあり、そこが弱い炎症を起こし、警告のように違和感や鈍痛を発しているのかもしれない。
もしかしたら (4)ブラッシングの不適切があるのかもしれないと思い、ブラッシングをスローモーションにして手鏡を見ながら観察してみました。その結果、歯間に歯ブラシが十分に当たっていないのではないかという疑問を持ちました。そこで、大きく見える凹面鏡で歯間を拡大してみると、歯間の歯茎の歯肉が赤色になっており、ぶよぶよと柔らかくなっていることに気がつきました。そこで、買い置きしてた歯間ブラシをとりだして、歯間に差し込み、歯肉に触れてみたらとても痛いのです。健康な歯茎にブラシを当ててこすっても痛みは来ませんし、歯肉の色も薄いピンク色で硬さもあります。それに対して歯間の歯肉は、「赤い色をしている」「柔らかい」「触ると痛い」となっておりますので、これらのことから歯肉が病んでいると考えました。お医者さんがいう「炎症」です。では「なぜなったのか?」。答えは「ブラシが当たっていなかったからだ」と考えました。
差し込みやすい柔らかい歯ブラシも購入し、普通の硬さの歯ブラシと柔らかい歯ブラシを交互に使ってやっていたのですが、歯間ブラシではない普通の歯ブラシだったために、歯間の隅々にまで毛先が届いていなかったのです。
歯間ブラシを買いに店に行ってみたらいろんな種類の歯間ブラシが沢山並んでいました。太い、細い、中間、極細、カーブ、直角、とあります。それを見て「成る程なぁ、歯ブラシ業界ではしっかり分かって製品開発しているんだ」と感心し、こんなに多くの種類の歯間ブラシが販売されていることは、それだけ歯間のブラッシングが重要視されているからにほかならないと思い、自分の判断にも自信がつき、四種類を買ってきて、歯間のブラッシングを始めました。
初めは恐る恐る当てました。何しろ痛いですからそっと当てるしかないし、無理をすれば歯肉を傷つけ、かえって悪化させる危険もあります。まずは2回だけそっとこすってやめ、翌日は3回こすってやめ、3日目は4回こすってやめました。するとやるたびに痛みが減るではないですか。「これはしめた」と3~4回こするやり方を一週間続けたらぐんと痛みが減ったので、痛みに応じてこする回数を加減しながら続けたら2週間目に完全に痛みが来なくなり、歯肉の色もピンク色になり、硬くなりました。つまり普通の健康な状態に完全に戻ったのです。ということは(3)の加齢による全身的な衰えが原因でもなかったということにもなります。
8 長年の歯茎の違和感や鈍痛が歯間ブラッシングで解消
歯間を歯間ブラシでこする「歯間のブラッシング」を続けること約半年、驚いたことに、長年あった歯茎の違和感や鈍痛が解消したのです。完全に消失したのではないのでお医者さんが言う寛解と言うべきでしょうか。
三カ所ほど長年にわたって違和感がある箇所がありました。一カ所は歯茎が硬く少し膨らんでおり、押してみると鈍痛がします。しかし、普段は痛みがありませんし、食べ物を噛むのになにも支障がないし、どこの歯医者さんも、そこを患部として指摘しないので、そんなものかと思っていました。ということは長年のブラッシングでもそこは変わらなかったということです。ところが歯間に歯間ブラシを差し込んで丁寧にこすることを続けたら、違和感と鈍痛が解消し、膨らんでいた所も縮小したのです。そして、口の中全体が違和感がなく爽やかな感じがするようになったのです。これは驚きでした。
9 違和感や痛みのある歯間を重点的に「こする」
歯間に歯間ブラシを差し込み歯肉に触って違和感があったり痛みがあったらそこを「そっと」こすります。ブラッシングをあえて「こする」と書いたのには二つの理由があります。
(1) 歯間ブラシと爪楊枝を混同しない・・・爪楊枝は歯間に挟まった食べカスをとるものですが、歯間ブラシはそれと同じだと思っている人がいます。歯間ブラシは食べカスをとるだけでなく歯肉をこすることが大事なのです。
だから短い毛がつけてあるのです。爪楊枝にこするための毛はありません。
(2) 「プラーク除去」より「こする」がいい・・・歯医者さんたちは「プラーク (歯石) を除去するため」と専門語を使って説明しますし、歯科衛生士さんたちも専門器具で除去します。そのことは正しく有難いことですが、それだけだと、人によっては「歯ブラシを使うのは食べカスやプラークを取り除く」ことだけの理解にとどまり、「こする重要性」に思い至らないおそれがあるように思います。
歯間の広さや状態に応じて歯間ブラシのタイプを選び、いろんな角度で差し込んでみて、違和感や痛みのあるところを探します。違和感や痛みがあったらそこを重点的にそっとこすります。痛みをこらえてこすることはしません。傷つけるからです。何日か続けて違和感や痛みがなくなったら正常復帰です。それ以後は何回こすっても痛みません。もちろん力を入れてこすったら痛むのは当たり前で「そっとこする」が基本です。
10「こする」ことによる効果
「こする」ことによって食べカスやプラークを除去する効果の他に大事な効果は「血流の増加」と「唾液分泌の増加」です。私たちの体は一般的にこすられると血流が増加するように出来ているようです。寒いとき手をこすると温かくなるのは、こすられた刺激で血管が拡張し血流がよくなり、温かい血液が手に流れるからです。歯茎や頬や舌もこすられることによって血流がよくなります。血流がよくなると唾液の分泌もよくなります。唾液分泌の増加こそが歯や口の中の健康のキーポイントのようです。
11 唾液の働き
唾液、俗に言う唾ですが、これにはここに書ききれない程沢山の働きがあります。
(1) 唾液の七つの働き
①消化作用(ご飯の澱粉を糖に変える働き)
②保護作用(頬と歯がこすれて傷つかないように濡らして滑りよくする働き)
③洗浄作用(歯や頬と歯茎の間に挟まった食べカスを洗い流す働き)
④殺菌・抗菌作用(細菌を殺し体内に入るのを防ぐ働き)
⑤緩衝作用(虫歯菌が出す酸で歯が溶けないように唾液のアルカリで中和する働き)
⑥再石灰化作用(食事をすると歯の石灰質が減るので唾液に含まれている石灰質で補う働き)
⑦排出作用(毒物や異物など口にはいったら唾液でくるんだり薄めたりして排出する働き)
(2) 神経成長因子の働き (唾液には神経成長因子というタンパク質がたくさん含まれている)
①神経を成長させる。
②神経伝達物質の合成を促す。
③神経細胞を修復し機能を回復させる。
④神経細胞の老化を防ぐ。
ざっと挙げただけでもこれだけの働きが唾液にあります。食べ物を口に含み舌や頬にふれただけでも唾液がどっと出ますが、噛んで歯に圧力をかけたり、舌や歯茎や頬に食べ物がこすれたりすることによって唾液が出続け、前述した数々の働きをします。ですから食べ物は噛み応えのある硬い物のほうが歯に圧力がかかってよいのです。噛むたびにかかる圧力を神経が感知して歯茎の血流を増やします。血液には壊れたところを直す修復力と殺菌力があるので歯の根っこががっしりと固くなります。また、食べ物は繊維質の多いもののほうが舌や歯茎や頬をこするので唾液の分泌が多くなります。噛む回数が多ければそれだけ唾液が出ます。「よくかんでたべなさい」の意味はそういうことなのです。
食べ物を噛み飲み込んで前述の働きが十分得られているのは野生の動物で、人間や飼い犬、飼い猫は十分でなくなりました。柔らかいし、繊維質が少ないし、煮たり焼いたりと加工されているので、噛む圧力も、噛む回数も、食べ物にこすられる度合いも少な過ぎるのです。それを補うのが歯ブラシによるこすり、すなわちブラッシングなのです。これがブラッシングの重要な目的なのです。
12 歯と歯茎の健康は心身の健康の基本
ある疫学調査によれば、歯の欠損者の認知症発症率は無欠損者の2倍になるそうです。ですから、歯と歯茎の健康は単にお口の健康にとどまるのではなく、全身の健康の基本であり、心の健康の基本でもあるようです。私は現在85歳ですが、服薬はゼロで足腰は普通、こうして文章も書くことが出来ますので認知症もないようです。私はよく噛むので食事時間は平均40分はかかります。食事の楽しさは「食物を食べる楽しさ」というより「唾液と混ぜて飲み込む楽しさ」といった感じで食べています。
13 歯間のいろいろで注意すべきこと
歯間には広い歯間と狭い歯間があります。歯並びは最初は隙間なく揃っているものですが、抜歯などすれば歯間が広がる場合があります。そういう広いところの歯間の歯肉は割と健康です。食べカスもとれやすいし、唾液にも浸(ひた)されて防御や修復が行われているからでしょう。問題は狭いところや歯が重なっているところ、特に問題なのは義歯の下の隙間です。義歯と歯肉の間に隙間がある場合があります。そこに液状化した食べカスが停留しても歯ブラシの毛が入らないと残留します。残留が長引けば雑菌が繁殖し、歯肉が冒され始めます。この状態は本人はもちろん歯科衛生士さんも気がつかず見逃してしまいがちです。私がそうでした。熱心にブラッシングをやっていて、歯茎全体は良好なので、歯科衛生士さんも義歯の下のトラブルには気付かなかったのです。なにしろ、歯茎のレントゲン写真もカメラ写真もきれいそのもので、トラブルが写っていませんから無理もありません。私が「もしかしたら」と怪しんで、歯間ブラシを差し込んでみたから判明したことなのです。「もしかしたら」と歯間ブラシを差し込んで、痛みを感じるところを重点的にこすっていたら、痛みが消え、歯肉の炎症も寛解したのです。これは驚きでしたが、更に驚いたのは、他の部分の違和感や鈍痛も解消した、つまり口の中のすべての違和感も鈍痛も消え、口全体が爽やかな感じになったことです。これは、局所的なトラブルが全体に波及していたということであって、局所のトラブルが解消すれば全体の解消にもつながるものだということなのではないでしょうか。
おわりに
いわゆる通常の「歯磨き」と異なる考え方ややり方の「ブラッシング」というものがあること、特に「歯間をブラッシングする」ことの有効性に力点を置いて著述しましたが、それさえやれば歯と歯茎の健康が得られるというものではなく、有効となるための前提があります。その前提とは「何を食べるか」と「どのように食べるか」です。歯や歯茎や唾液を作る材料となる栄養素は血液から供給されます。血液は腸で食べ物からその栄養素を吸収し口に運びます。その食べ物に栄養素がなかったりバランスが欠けていたのでは、いくらブラッシングしたところでよくなる筈はありません。ですから前提としてバランスの良い食材を選ばなければなりません。食材の分類には 「三色栄養素群」「五大栄養素群」「六大栄養素群」と三つの分類がありますが、私は小学校で教える「三色栄養素群」を念頭に置いて食べています。また、食べ方としては「よく噛ん食べる」ことは前述しましたが、最近提唱されるのは三色の順序です。野菜類の緑色を先に、次に肉類の赤色を食べ、最後にご飯類の黄色を食べると、血糖値の上昇がゆるやかなので良いと提唱されるようになりました。また、満腹で食欲がない状態で食べると、唾液の分泌が悪いので、空(す)きっ腹に食べるように食事の時間と量を調節しなければなりません。そのためにも間食や暴飲暴食は控えなればならないわけです。これらのことが前提となってはじめてブラッシングが有効となるわけです。
この著述は私の体験談であって、学術書でもなければ専門書でもありません。学術書や専門書なら根拠となる出典を示すものですが、素人の体験談ですので示しませんでした。
私なりに勉強したことをもとに書き下ろしたものですが、諸氏の参考になるなら大変嬉しく思います。
2020年 (令和2年) 6月24日 菊池嘉雄86歳