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多裂筋の解剖学・機能・トレーニング

以前多裂筋の投稿が伸びていたので、詳細解説していきます!


解剖学的特徴

多裂筋は脊柱の深層にある筋肉で、頚椎・胸椎・腰椎のすべてに存在しますが、特に腰椎レベルで発達が顕著です。


浅層
・上後腸骨棘~第1腰椎棘突起
・背側仙腸靱帯の上部~第2腰椎棘突起
・背側仙腸靱帯の下部~第3腰椎棘突起
・仙骨下部背側~第4腰椎棘突起
・正中仙骨稜~第5腰椎棘突起

深層
・乳頭突起と椎間関節~2つ上の棘突起

↑このこまかい起始停止は覚えなくていいです、大体の位置を解剖図で見て覚えとけばOK。

深層の部分は腰椎の乳様突起に付着。乳様突起の上には脊椎同士を連結させる「椎間関節」があります。

この部分は侵害受容器が多いため、多裂筋が硬くなると付着部分が引っ張られ痛みが出現しやすいです。

※この部分は後ほど解説します。


機能的特徴

多裂筋の基本的な作用として


・脊柱の伸展
・片側の収縮=反対側への回旋、同側への側屈


が挙げられます。

大きな動きを得意とするわけではなく、各椎体レベルでの微細な動きを制御することで、脊柱分節の安定性を維持します。

また屈曲方向へ制御する働きがあるため、過度な前屈を防ぎ適切な腰椎が過屈曲しないように保持しています。

実際、コンピュータ上で人の腰の動きを再現する際に、多裂筋がある場合とない場合を比較した研究では

腰を曲げる動作をシミュレーションしたところ、腰椎にかかる圧縮力は多裂筋がある場合に比べ、ない場合で最大で約1.8倍にもなっていました。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9854514/

これは多裂筋が腰への負担を分散させる役割を果たしていると考えられます。

例えるなら、荷物を運ぶ際に「複数の紐」で支えている状態ですね。

多裂筋がしっかり働いていれば、特定の場所に負担が集中するのを防ぎ腰椎全体で負担を支えることができるといえるでしょう。

逆に多裂筋が弱いと、一部の腰椎に負担が集中し痛みや怪我のリスクが高まると考えられます。

大事ですな。。。


機能阻害要因とそのメカニズム

多裂筋の機能を阻害する主要な要因として、特に骨盤後傾を引き起こす筋肉に着目する必要があります。

なぜでしょう?


後傾による運動連鎖で腰椎の後弯が増強→腰椎の前弯が減少するからです。


骨盤後傾→腰椎後弯によって多裂筋は伸張されます。

それが持続することで、多裂筋の求心性収縮が難しくなるわけです。

さらには脊柱起立筋の筋活動を高めることで腰椎の後弯を制動しようとするので、脊柱起立筋への負担が増大します。

では骨盤を後傾させる筋肉は何か?


①ハムストリングス

ハムストは坐骨結節へ付着しているため、直接的な骨盤後傾作用を持ちます。


②大殿筋
大殿筋は骨盤後面へ広範囲に付着しており、骨盤を後傾する作用を持っています。


腰痛との関連

多裂筋と言えば、やはり腰痛と関連しているイメージが多いですよね。

エビデンスベースでも見ていきましょう。

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