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修行ではなく就業に、この業界はこれから…

この、コロナ第7波のさなか、お店をリニューアルしたばかりの時期だったので、少しづつお客様のご予約が入りだし、これから頑張っていこう!という時期だったのに…

 9月いっぱいまでの予約がすべてキャンセルになり、これからどうしたものか?などと思っていた時に、めげていてもしょうがないし、何か始めようと思い始めたのがこのブログでした。
 もともと、本を読むのが大好きなうちは、けっこう文章を書くのも苦にならなかったので、楽しみながら、やっていました。うちらの業界、花柳界。これだけ、花柳界からお客さんが減り衰退していくわけですから、いろいろな問題を抱えてるんでしょう?では、それは何なのか?

 私共の奈良元林院では「奈良 元林院花街復興プロジェクト」として、後継者育成と、「日本全国の花街の仲間と手をとりあい花街に灯りをともす」というコンセプトで花あかりというイベントをスタートし運営しています。その間も、様々な問題が起こったり、様々な出会いがありました。
 コロナの前には花街復興も少しづつなされ、お座敷も増え、舞子も3人、にわかに景気づいてきているかのように思われました。
 しかしコロナ時期、最初の1年はそれなりに舞妓達もYOUTUBEなど新しいことに挑戦する中、楽しんでやっていたかのように思われましたが、2年目になると、彼女たちのメンタルも少しづつ弱ってきます。 
 もともと、うちが今まで引き受けてきた若い子たちの特徴なんですが、コミュ障の子が多く、それに、その年の子に比べると精神的に幼い子が多く思います。舞妓という職業を選んでというよりは、もっとファッション的な、いわゆる舞妓オタクの子が京都は厳しそうだしとか、うちのメディアを見てとか…だからメンタルが弱い子が多いのと、覚悟が甘いのも事実だったようです。結果、よって来た、男性の甘い言葉にほだされて辞める子や精神的に参って逃げる子、他の事をしたいと言って辞める子、この3パターンでやめる子が今まで一番多いなという事が解りました。
 舞子塾というシステムやYOUTUBEなどでなまじっか舞子という職業のハードルを下げた結果だと思って受け止めています。
 しかし、最近は、twitterでの告発の問題や花街における育成システムの問題、花柳界からの客離れなど、衰退の道を進んでいるように感じます。

 告発した彼女の気持ちもわかります。事実、心無い置屋が存在するのも事実かもしれません。そういった置屋にあたった子はかわいそうだと思います。ですが、これは、一般の業界でも同じことだと思うのですが、屋形や会社側の意図と芸舞妓や従業員側の思うところに最近は特に違いが出てきてしまっているのでしょうか?

 屋形や会社側からすると、新人育成というのはとにかく、見えるお金も、見えないお金もコストが大変かかります。その中で、屋形や会社によって違うでしょうが、できる範囲での福利厚生や少しでも芸舞妓や従業員の負担にならないようにと努力をしているのではないでしょうか?

 例をあげると、舞子育成をするためにどのくらいのコストがかかるかご存知でしょうか?

修業期間中の最低限の生活費(食費、光熱費、住居費 etc...)
稽古代(日本舞踊、三味線、etc...)
普段の着物(貸し出した場合)
舞妓衣装(12ヶ月分)
その他装飾品
礼儀作法教育

などが主だったコストです。それを屋形は、修行中は生産性がない状態でフォローしながら面倒を見なくてはいけません。
 半年から1年仕込みさんを預かり、お店出しをするまで、だいたい、最低500万~1000万程度一人にかかってきます。ドライな言い方をすればこれが仕入れです。
 そうやって商品をブラッシュアップし人前に出せる状況にし、お店出しをしてからがやっと屋形の利益になってきます。屋形は花街によって違うでしょうが、1席(2時間)25000~30000 舞妓達の取り分を考えると半分ぐらいでしょうか?それを回数かけて回収します。

仮に1席25000円だと1000万回収するのに800席 1日1席確実に仕事があったとして2年以上たって初めて回収できる計算になります。

 その回収がすんだあと、初めて屋形側の利益が生まれます。しかし、その間もコストがかからないかと言えばそうではなく、着物にしてもメンテが必要でしょうし、宣伝広告費は?その舞妓を売り込むためのコスト、何も知らない状況の子供を大人の前に出せる状況にするための教育コスト、ノウハウの提供による知的コスト。これらは屋形おのおのが、その舞妓の為にもしくは、屋形の利益の為に投資します。芸能界、アイドルなんかにも似ていますね。
 AKB48の様に夢がある業界で、そこを目指す多くの人間の中からこの子はデビューさせれば必ず売れるであろう、という子を選別し、その子に投資をするのであればそこにかかるコストは生きるでしょうが、悲しいかな、数少ない京都以外で舞妓になりたい子という中で選ぶのであれば、おのずと目をつぶらないといけないことも多い現状が悲しいところですね。

 では、舞妓や従業員側は、最初から労働と受け止め入ってきます。会社の場合はしょうがないですが、舞妓の場合は、もともと仕込みさんの状態でそもそも接客、その他もろもろ労働にすらなりません。お客様の前に出れたとしても、それはお客様のその時間をお借りして勉強させてもらってるわけですから、むしろ、お客様にとってはいい迷惑かもしれません。それなのに、労働ととらえる。それに、いつになったら舞妓になれるんですかと聞いてくる子もいます。それは、あなた次第でしょうし、舞妓という職業にみあうスキルを努力して習得すれば、舞妓になれるでしょうし、その努力が足りなければいつまでたっても舞妓にはなれません。

仕込み~舞妓(修行)、芸妓(就業)ここを理解してもらいたいですね。

 このように、屋形と舞妓、経営者と従業員というような関係の中に意識や考えの相違があるように感じました。

 このような、現状の状況で、この業界の存続はしていけるのだろうか?
 各個人の力量でお客さんを持っている子たちは、何も変わらず営業している子たちもいるでしょう。それは、これからもそうでしょうし、うちも、もう少しコロナが落ち着けば、周りの仲間やお客さんの助けもあり、個人として芸妓業を続けることはできると思います。しかし、街としてこの街の存続、後進育成と言われると、正直どうしていいものなのか?

 最近は素人さんが独学でプロになれる仕事も増えてきているでしょうが、この仕事は、素人が独学でできるような仕事ではありませんし、それ以前に独立等に関してもハードルがとても高いように思います。そこに歴史や文化があるからです。街の助けや花街の御贔屓さん達に支えていただき始めて成立する仕事だと思います。人間が昔と違うのか?うちが変わり受け入れていけないことが多い気もしますが、変わってはいけないものもございますし、今後、舞子育成をする上で、二つの方向性があると思います。

①もう少しインスタントになんちゃって舞妓をライトに育てる(抱えない、コストはきちんと払ってもらう)
②もっと厳しく、本来の舞妓を追求し、ついてこれない子やなり手がいなければ出てくるまで耐える。

第3の選択肢があればいいのですが、現状で思いつくのはこんなところでしょう。それを見つけていかなくては、これから、特に奈良の街で花街の存続は厳しいかもしれないなとおもいます。

 18歳に成人年齢が変わり、分別や責任能力をその年で認めるんであれば、その年の子にも義務が生じます。その上で舞妓たちは、自分自身の行動で置屋や取引相手に損害を与えた場合、責任はとれるのでしょうか?一人の大人として扱えるのでしょうか?うちはそうは思いません。子供相手ですし、彼女たちを追い詰めるようなことは、したくないと思います。だからこそ、今後は特に、覚悟をもって、舞妓になりたいのなら、せめて、3年は続けるといった気概でこの街にくる子以外は受け入れるのをやめようかと考えてます。舞子塾などという甘い仕組みでは、甘えた子しか来ないんだろうという事もわかりました。最近は、修行ではなく就業になっているのでしょう。本来は丁稚奉公。仕事をただで教えてもらう代わりに、労働で対価を支払う。衣食住はめんどう見てもらえるのだから。

 ところが、仕事は教えてほしい。しかし、労働すれば賃金を下さい。というのが今の時代。結論は、仕事については、きちんと教えますが、その分の対価は支払ってもらいます。コストはその子たちがきちんと払ってください。労働してもらえばその分は賃金をお支払いします。住み込みや寮の提供もしなくてもいいでしょうし、食事も自分でやってください。ってなると、たぶん舞妓はいなくなるんだろうな~とおもいます。

 今は、とにかくできる事をして、店を守り、その上で、本当にこの街に芸舞妓が必要とされてるのか?行政も奈良の方々もそれが必要だと思っているのか?それを見極めたうえで次の時代に何を残して何が淘汰されていくのか?を選択しながら今後の行動を考えようと思います。少し重い内容になりましたが、一度、真剣に今の思いを書かせて頂こうと思っていたので、このような文章を書かせていただきました。おおきに~

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