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原稿用紙

原稿用紙が好きだ。
400字詰めで薄茶色の枠の塊。
まだ何も書いていない原稿用紙を目の前にすると、色々なことを思い出す。

幼稚園年中組
園の敷地内に置かれていた車のボンネットから、友達と一緒にふざけて飛び降りてみた。
着地に失敗し、左足骨折。
自宅へお見舞いに来て下さった園長先生から、50マスノートを頂いた。
嬉しかった。

小学1年生
国語の授業で作文を書いた。
名前を書き忘れ、「これは誰の作文ですか?」
と、先生がわざわざ私の机の前に立って言って下さったのに
「はい。私です。」
と言い出せなかった。


小学2年生
家の階段から足を滑らせ転落し、肋骨骨折。
『階段から落ちたこと』という作文を書き、佳作。


小学4年生
エジソンの白熱電球や蓄音機の発明に憧れた。
佐藤さとる著書『ジュンとひみつの友だち』を読んで、自分だけの小屋作りに憧れた。
原稿用紙の裏に、小屋の設計図を描いてみる。
近所から廃材を集めて小屋を作ろうと頑張ったが・・・。
小屋の中で実験や文章を書いている自分を妄想する。


中学3年生
向田邦子の作品を読む。
『阿修羅のごとく』『寺内貫太郎一家』『男どき女どき』『夜中の薔薇』『鮒』『父の詫び状』など。
TVドラマ化された『三角波』に感動する。


高校1年生
現代国語の授業で、天声人語を3分間で30文字に要約するという課題が毎回あった。
先生からの「よーい、始め!」の合図で、一気に集中する。
「起承転結、30文字に収まるのか?。」
「うわあ・・・駄目だ。文が長すぎる。間に合わない・・・。」
焦りつつ、なんとか30文字に収まった原稿用紙を汗だくで眺める。


短大1年生
キャンパスの購買部で原稿用紙を発見する。
しかも、学校名が印刷されている!
思わず購入。
今も私の宝物。


文房具売り場で原稿用紙を見つけると、つい手に取ってしまう。
ネットで『原稿用紙』を検索すると、時間を忘れて見てしまう。
シンプルな、あの薄茶色の枠の塊が、どうしても気になってしまう。


Discord名:大野 喜久弥(KIKUMI)
#Webライターラボ2405コラム企画


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