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凄腕ナンパ師が好んで使う方法

私は失恋に打ちひしがれていたところ、とある凄腕ナンパ師の存在を知り、界隈にのめり込んでいった男だ。ナンパ習得のため、時間も金も使いこんだが、ただの一度も成功することなく界隈から退いた。(実績がないのに所属していたとはいえないかもしれない) 今日は、とにかく頭だけはでっかくナンパ師見習いを数年した私が、凄腕たちの技法をなぞり、その種類について説明する。

まず、ナンパにはその方法論によって2つにわけることができると考えている。それは「直接法」と「間接法」だ。女性への声のかけ方がその名前の由来となっている。

直接法は「おねーさん可愛いね!呑みにいかない?」といった具合のもので、文字通り直接女性を呑みなど別の場所に誘う方法だ。いわゆるチャラ男の声のかけ方が直接法と言えるだろう。「ナンパ」と聞いて想像するのはこの直接法かもしれない。しかし、このご時世、迷惑防止条例に違反しかねないし、実際迷惑行為だと思う。女性が「ナンパを受けた」と誰かに言うと「自慢か?」などと批判されることがあるが、単に不快感を共有したいだけではないだろうか。多くの女性にとって、この手のナンパは無視を決め込むのが当たり前となっている。

問題は次の「間接法」だ。とにかく数が多い。網羅するのが難しいのは、先に上げた「直接法」以外の女性への声掛けがすべてこの「間接法」に該当するからだ。逆に言えば、この「間接法」のクリエイティビティが、無視を決め込む女性を振り向かせるフックとなる。今回はその中でも代表的なものを紹介する。

私が私淑(ししゅく)していた凄腕たちは皆共通して、とある「間接法」によるナンパを使いこなしていた。それは「運命トーク」と呼ばれるものである。「一目ぼれしました!」というような内容を思い切り伝えるのがこの運命トーク。正直、自分が女性だったら「なんだその手あかのついたフレーズは」と内心毒づいてスルーする。しかし、数多の「美女」を口説き落とした凄腕たちがすべからく使っているのもまたこの方法なのだ。

凄腕を凄腕たらしめているのはこの本気度の演出だ。ある人は場所を重視している。繁華街でこんなことをしても、「はいはい」とスルーされるのがおちだが、駅付近や住宅街、オフィス街ならどうだろうか。実際「運命トーク」などといやらしい名前を付けず、図らずもこの方法を実践した人も多いだろう。そういう人は本当に一目ぼれした女性と結婚していたりするが、よく聞く話でもある。そのことからも、本気がきちんと伝われば、強力な方法であることが分かる。

別の凄腕は、演技のワークショップに通ったという。彼が私に勧めたのは平田オリザ氏(劇作家)の「演技と演出」という書籍だった。営業などにも使えそうだとその当時は感じた。とにかく自然なコミュニケーションとは何なのかを徹底的に体にたたき込め、という事だった。

彼ら凄腕ナンパ師が恐ろしいのは、その「運命」を方法論に確立し、試行回数を重ねるところにある。どれだけ努力しても、無視をされるのが当たり前の世界のため「気にせず行動しまくれ」と彼らは言う。そうした自己啓発的な要素も、10代20代(あるいは何歳であっても)の悩める男子に響く原因だと私は考えている。

一つ断っておきたいのだが、先に上げた「運命トーク」を直接法だという人もいるが私はそうは思はない。女性を直接誘っているから、というのがその理由のようだが、ナンパとは軟派だ。その点「運命トーク」は硬派。そういうと聞こえがいいが、不意打ちのようなスタイルだと私は考えているので、正直卑怯に感じる。本当に一目ぼれだったのなら仕方がないが、試行回数を稼ぐなどと言っておいて、毎回ちゃんと運命を感じるというのは不誠実、ヘリクツではないかと思う。変な帰結だが、チャラい方が誠実だ。

こんなことを言っているので、私はついぞナンパが成功することなく、頭だけが肥大して引退した。




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