ファウンデーション AppleTV+ <ネタバレあり>
初めに
劉 慈欣氏の「三体」を完読したらアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史:ファウンデーション」も気になってしまいました。
それでAppleTV+オリジナルでドラマ化されているということで、ちょうど、iPadmini6を購入して3ヶ月視聴無料期間だったので視聴してみました。
原作と随分改変されているということで、原作に忠実に漫画化されたサイドランチ社の銀河帝国興亡史も一気に4巻購入し読んでしまいました(文庫本だと2巻ぐらいまで?)。
あらすじ
永きにわたる銀河帝国統治の中、心理歴史学より帝国の滅亡を予言したハリ・セルダン。田舎惑星の隠れた数学天才少女ガアル・ドゥニックニックを首都のトランタに招くが、二人とも帝国に囚われて裁判にかけられ、銀河の最果ての星ターミナスに流刑される。しかし、それこそ、知識の編纂を目的とした「ファウンデーション」をターミナスに温存し、帝国滅亡後の暗黒時代2万年を千年に止めるためのセルダンの計画だった。
時代は30年進み、ターミナスには霊廟が入植前から存在し人を寄せ付けないNull Fieldが周りを囲み、番人であるサルヴァ・ハーディだけが、そのNull Fieldに入ることができた。
ある日突然、アナクレオン人が来襲しターミナスが混乱に陥る。その危機を救ったのは?ガールとサルヴァの関係とは??
だいぶ、原作と設定が異なっていますが、面白いのは帝国側の設定です。
1)銀河帝国 皇帝
原作の方は帝国の描写はあまりありません。衰退しているとはいえ全銀河をまだ掌握している国家です。AppleTV+の面白いところは皇帝が初代クレオン一世の純粋なクローン人間であるところ。それを400年続けており、さらに同時期に祖父、父、息子の3世代が同じ時代に統治しています。Brother Dask(夕日),Brother Day(日),Brother Dawn(夜明け)といった名前があり、壮年のDayが実質の皇帝の地位にあります。
兄弟、親子のように見えますが、遺伝上は全く同じ人物。
Daskが消滅(死)するとき、Dawnが新しく出産(製造)され新しい3世代体制になります。しかし、ある時遺伝子操作がされていて、Dawnは他の皇帝たちと違い、身体に異常があったり仕草・能力も異なったりして、自分は何か悩みはじめます。そこに反乱分子がハニートラップをかけ術中にはまりますが、危ういところでDaskに助けられます。Dayの行動もおかしく、3世代間にとうとう闘争が始まります。
2)銀河帝国 侍女
侍女のDemerzelはアンドロイドで、クレオン一世から使えている。そして、ロボットなのにルミナス教の信者でもある。なんと、アシモフが提唱したロボット3原則に反して、Dawnを誅殺するのです!銀河帝国を操っているのはこのDemaerzelなんでは?と勘繰ってしまう。
3)ルミナス教
政治と宗教はセットで民衆を侍らす。原作ではファウンデーション自体が宗教を使って勢力を伸ばしていきます。
帝国と同じく影響を持つ、ルミナス教ですが、大尊師が亡くなり、次の教皇に帝国の意にそぐわない候補者が勢力をのばしていたため、皇帝Dayが自ら宗主星メイデンに赴き苦行を行い、そこで啓示を受けたことにより、帝国の意に従う新大尊師を擁立することもでき、信者も皇帝にひれ伏すことに。
ただし、DemaerzelはDayが啓示を受けていないことを知っていた・・・。
4)皇帝の残忍さ
Dayの罰の与え方がなかなかエグい!首都星トランタの軌道エレベーターがアナクレオン星人、セスピス星人のテロリストによって破壊され、その時両星の使節団が帝都に訪問していたが、大使の目の前で使節団のメンバーは絞首刑、そして母星も攻撃して半殺し、しかし、大使たちは生かして国に戻ってその惨状と罪の意識を一生背負わせる。
ルミナス教の反対勢力の主導者は、使いにやったDemaerzelから発する遅延性の気化毒で毒殺。この状況を淡々と語り「お前はもう死んでいる」のように、意識があるうちに恐怖を味わせる。
ハニートラップの彼女は、彼女に関わったメンバーはもちろん、親族、少しでも彼女と接して記憶を持っているものを抹殺、彼女自身は意識は残して、五感、自由を奪い、生きながらずっと地獄を味合わせる。
そのまま死刑!じゃなくて、生きている間に苦痛を味合わせるのが厳しい・・・。
原作との違い
やはり、アメリカナイズ、ハリウッド的な展開・設定だなあと思いましたが、それはそれで楽しめました。
主人公のガアル、サルヴァは原作では男性の設定ですが、こちらは黒人女性だったり、原作では策略・ディベート戦的な展開ですが、白兵戦、アクションシーンが多かったりします。そして、毎回1回はラブシーンが?あんな濃厚な接吻をしたら、染るのも染っちゃう!
影響度
銀河帝国興亡史というタイトルの硬さ、foundationという一般単語で検索するとゴミのような単語がヒットしてしまうため、関連する記事を検索しにくいというのも一般人にあまり広まらない理由なのかな?
しかし、スターウォーズや銀河英雄伝説、三体に大きな影響を与えたのは確かです。三体の「宇宙社会学」も「心理歴史学」という架空の学問が物語の基盤にあるのが面白い。武力よって戦争をするよりも、策略、外交、貿易、話術、科学力で衝突を切り抜けようというところが知性を感じます。実際の人間世界は、追い詰められると暴力・武力で制圧・防衛しようとする本能的・プリミティブな行動に流されるため、最低限、そこから守る力は持っていく必要はあるかと考えました。
ファウンデーション3部作のまだ1部ぐらいの展開なので、次の2部、3部も期待ですね。