Song of earth
生まれたところはノルウェーのノールフィールドで周りは山々に囲まれたフィヨルドである。氷河の侵食によって削られたU字型やV字型の谷に海水が入り込む湾となっている。
父と母は80歳を過ぎる老齢である。私が生まれたそんな風景を父が自分で歩いて季節季節の移り変わりを生きた歴史をたどりながら紹介してくれた。
春の雪解けは木々の芽吹きや小鳥たちのさえずりに始まり閉ざしていた心を開いてくれる。
しかし、数万年もの時間をかけて降り積もった雪が溶けずに固まり氷へと変化した氷河が自分自身の重みに耐えきれず高速で滑り落ち一瞬の間に集落を押し流していった。そこには自然の美しさと恐ろしさが共存している。
夏、木々が繁り、草花が咲き乱れる。雪解けの水が川となりそしてタ-コイブルーの池となる。このブルーの色は特別な鉱物の粉末が水に溶けているためである。水を透明な容器にすくってみると多少濁りがあり透明ではない。小鳥たちはピッコロで囀ずり動物たちは飛び跳ねって目を輝かせている。山の峰々は雪が溶けて地肌が険しくそびえ立っている。
秋は、短く、すぐ冬が覆い被さるようにそれを呑み込んでしまう。雪山の壮大な峰々が陽の光に反射して眩しい。谷に落ち込む傾斜は急角度な弧を描く。
春はせかされるように成長、夏は青春を燃やす、厳しさ増す秋は働き収穫し蓄える。冬は衰えゆく日々を癒し足跡をたどる。
自然の音を聞いてご覧。温暖化のために音が変わった。雪の降る量が減り氷河が小さくなった。地球の変化した声は、悲鳴なのか。
父がポツリポツリと語る歩いてきた歴史。若くして牧場を引き継ぎ、母にブロポーズ、子育てそして喜びも苦しみも共に分かり合いながら暮らした日々は二人の宝物となった。
大自然の美しく過酷な中に生きる老夫婦の生きた証を娘の目で映し出すドキュメンタリー。季節季節移り変わる風景の美しさは映像でしか表現出来ない。
SONG OF EARTH
制作総指揮 ゥ゛ィム・ゥ゛ェンダース
リゥ゛・ウルマン
監督・脚本 マルグレーと・オリン
アカデミー賞、長編国際映画賞ノルエー代表