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墓泥棒と失われた女神

{シネマガイド}墓泥棒と失われた女神
ドアーの陰から顔を見せる女。地上から穴の中に赤い糸を垂らして覗いている女の顔。
イタリアトスカーナ地方の田舎町、忘れられない女の面影を追う考古学愛好家アーサー。この男、なぜか紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓を探し出す特殊能力を持っている。20㎝ほどの二股に分かれている木の枝を両手で持って林の中を歩き回り古代遺跡の墓からの反射電波により探り当てると言う極めて稚拙な道具を使う。


彼は、墓泥棒仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいて日銭を稼いでいた。その中には女カメラマンがいて遺跡の発見現場をいつも取材をしていた。
アーサーの面影の女の母親フローラーは、アーサーが、娘の面影を追い求めて遺跡発見をしていることを応援してた。彼女は、一人暮らしで歌を教えながら一人の女中を雇っていた。この女中イタリアは、二人の子どもを育てながらのシングルマザーである。フローラーには、5~6人の娘がいてこのイタリアを何かと難癖をつけていじめていた。


アーサーは、小道の脇の斜面を利用して掘っ立て小屋を建てそこに住んでいた。ある日、墓泥棒の一人から海岸近くに遺跡があるという情報を持ちこんできた。アーサーは、夕方、その場所に行き例の道具三角棒を使って探査した。遺跡のあり場所が間もなく見つかり墓泥棒グループは墓を堀りを始めた。
間もなく掘り当てた墓は、豪華な彫刻たちが並び、特にその中の一つはミロのビーナスにも匹敵する無傷の女神像であった。その輝かしい女神像に酔いしれている暇もなく警察のパトカーのサイレンがけたたましく鳴る音が近づいていた。墓泥棒の一人が女神像の頭部を打ち砕き布袋に入れて持ち帰った。グループ全員が、墓穴から逃げ出した。しかし、警察官が追っかけてくる気配がなかった。


豪華なヨットのなかの一室で宝物類がオークションにかけられいた。それは、非公式の闇アート市場であった。そこに、海辺の遺跡で見つけた女神像の首なしの彫像がオークションにかけられていた。そのオークションを仕切っているのはアーサーが遺跡発見現場の女カメラマンの姉であった。つまり、アーサーが、海岸近くの遺跡を発見して墓泥棒一味が発掘しようとしたときパトカーのサイレンがけたたましく鳴った。あわてて墓泥棒たちは発掘現場を後にして逃亡した。しかし、警察官は追ってこなかった。これは、女カメラマンが仕組んだ偽パトカーのサイレンで墓泥棒たちが逃げるのを見計らって偽墓泥棒たちが女神像を横取りしたのであった。
オークションの会場には、墓泥棒が打ち砕いた女神像の頭部が入った布袋が持ち込まれた。これを胴体の首に接ぐことで女神像の価格は跳ね上がること間違いなかった。頭部の値段の交渉が始まった。なかなか合意に至らなかった。
そのとき、突然、布袋を持ったアーサーは、海に向かって投げ込んだ。その布袋は、海底深く沈んでいった。


アーサーは、今日も面影の女を求め、遺跡を探して街から離れ寂れた村に立ち寄った。廃駅に子どもが大勢たむろしていた。子どもの預かり場所となっており、そこでフローラの家で女中をしていたイタリアにばったり出あった。二人は瞬時の愛をかわした。
失った面影の女を探して彷徨うアーサーは、遺跡探しのためあちこちと田舎町を歩き回るうちに一つの遺跡を探り当てた。彼は、墓泥棒グループと遺跡を発掘して夢中で穴の奥へ奥へと進んだ。すると入り口の岩盤が崩れ穴の中にとじこめられてしまった。必死になって出口を探すが暗闇の中では何も見いだすことは不可能であった。するとやさしい音楽と共にひとすじの光の線が洞窟の床に届いた。光を辿っていくと光源の穴から1本の赤い糸が垂れ下がっていた。その穴から探し求めた面影の女が笑ってる顔を覗かせていた。
あの世に行かないとその面影の女と再会できない運命であった。


現実と幻想が交差する中、面影の女を追い求めるアーサーは、冥界に赴き
この世の連れ戻すことを夢想していた。ギリシャ神話[オルフエイスとエウリュディケ]のロマンチックではあるが悲劇を思い起こさせた。と、この映画を見て連想させられるシーンが何となく垣間見えているのだった。最初の、そして最後のシーンが何を意味しているのかを紐解くのに時間がかかった。
「墓泥棒と失われた女神」
監督、脚本:アリーチェ・ロルバケル
アーサー:ジョシュ・オコナー
イタリア:カロル・ドゥァルテ
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

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