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エターナルメモリー

[シネマガイド]
夫の失われる記憶を蘇らせようと寄り添う妻の献身的な日常を描くドキュメタリー
チリの独裁政権下において命がけで記録を残してきたジャーナリストのアウグスト・ゴンゴラは、アルツハイマーを患い記憶を失っていく。

そんな症状をくい止めようと必死になって介護する妻の俳優パウリナ・ウルティァ。
夫のそばに付き添って”あなたはアウグスト・ゴンゴラ””そう俺はアウグスト・ゴンゴラ”これを何度も何度も繰り返す。逃げていく記憶を引き戻そうと真剣に口癖のように復唱する。
近所の森の中を散歩しながらパウリナは、アウグストに本を読み聞かせして
楽しそうに過ごす。
パウリナの舞台稽古場に連れて行って一緒に踊ったり歌ったりと社会との接触を楽しませる。
二人の愛に満ちた眼差しがお互いを強く結びつけていく。


しかし、外部との接触を阻んだコロナにより一人になったアウグストは、情緒不安定となり自虐的に考えたり混乱した。
この病の特徴は、近い過去を記憶をすること、そして今のこと日付、場所が不確か、情緒不安定など日々の生活に支障が生じる。
そこで過去に目を向けて、二人の出会い、家庭、仕事などの思い出をたどって写真やビデオなどから記憶をよみがえらせるように仕向けた。特に、アウグストが活躍していた独裁政権下における残虐な行為などの記録をたどった。走馬灯のごとく歴史を刻んでいく。
過酷な記憶喪失と格闘しながら日々の生活の中にあって二人の間をすり寄って皮膚感で癒やしを与える飼い猫が一役買っていた。

老いがもたらす肉体的衰えと精神的な喪失は、現実との間に不具合をもたらす。これは老いによる絶対的宿命である。
長寿時代、「理想的な生き方」を模索しながら生きながらえるために人生100年のライフデザインを描き、老いにこの肉体的衰えと精神的な喪失を同行させざるを得ない。
アウグストのようにアルツファイマーを患ったらというアクシデントをライフデザインの中に組みこんでおかねばならない。
しかし、予想は困難である。80年後半まで使ってきた身体にはいくつものほころびあり、思い出せないことが多くアレ、ソレの代名詞がとびかっている。
朝、目覚めて今日も生きていたことを1日、1日伸ばすしかないか。

エターナルーメモリ
監督:マイデ・アルベルディ
アウグスト・ゴンゴラ
パウリナ・ウルティァ
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート


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