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聞くことで照らされ現れる詩
初対面の人。あるいは久しぶりに会う人。
その方の格好、喋り方、視線の運び、その第一印象が入り口で、対話を重ね、今に至るまでの物語を聞くうちに、その人の輪郭がはっきりとしたものになっていく。
話を聞くといっても、1時間程度、長くて3時間ほど。それだけの時間では決してその人のことをわかりきることはできない。けど、もちろん対話を重ね続けてもわかりきることはできるはずは無く(身近な人のことだってわかったようでわからないことが多い)、だからこそ、逆説的だが、もっとその人の話を聞きたい。
ある人に問いかけ、そのことについてのその人なりの思い・答えを聞かせてくれ、それによりさらなる問いが生まれ、対話が続く。問うことで、その人が持っている「言葉にはなりきれていなかった、言語化以前の思い」が照らされ、その人にしかわからない思いが、言葉になって私の耳に届く。
その言葉は、その人でなければ獲得できなかった言葉であり、問うことでよりその深い部分に至ろうとし、適合する言葉が見つかり、表面化したことで現れる。それを私は「おもしろい」と思うし、その人自身も、発言しながら、何かを見つけたような顔をする。「そうか、自分はそういうことを思っていたのだな」と。
それこそが、聞かれなければ出てこなかった、対話がなされなければ現れなかった思いだ。時にそれが詩を帯びていて、その時における対話のタイトルになったりする。その人自身にも思いがけない、心の奥底にあったような言葉だ。