菊池の100冊・その2酒の肴・抱樽酒話青木正児
菊池の読書は好きな本を何回しつこく読む系で、本はよく読みますがあまり買わないタイプです。なので、あの作家は・・・・とか、あの作品は・・・とかのうんちく合戦ができないので本の話は基本しませんが、以前どんな本を読んでるかでこの前話したら、すごい受けて、おすすめの100冊を教えてくれ!と言われたことがあったのです。
コロナコロナでなんか、面白くないので適宜、意味なく紹介していきます。基本的にビジネス書読まないので、そこらへんにはすぐには役に立ちません。でも、こんな時間がるときにぴったりな本ばかりですよ。
■ その2・酒の肴・抱樽酒話 青木正児
これも、中国学の先生が書いた本で、テーマはそのものズバリ酒と肴。しかし、漢文の素養が大体あった時代の昔の本で(戦前に書いた短編も多い)、漢詩や中国の故事来歴などの引用が多いので、中国学的な素養がほんのちょっとないと読みすすめられないかも・・・・な本ですが、20代から20回以上は読むぐらい好きな本です。文章がいいんですよね。昔の学者さん本当に文章がうまい。
「適口」という話が載っていて、皇帝と美食家の家臣の話で「漬物の汁が一番うまい!」という結論になる話なのですが、高いものや名が通ったものをありがたがるのではなく、
口にあうものがその時一番うまい!という逸話なんですね。
ちなみに、皇帝が「うまいものとはなんだ?」と聞いたとき「酔ってのどが渇いて外に出たら漬物の瓶が雪に埋まっていて、その汁を飲んだときが最近一番うまいと思いました!その時口に合う者が一番うまいものですよ!」と美食家の家臣が言い、皇帝が「さすが、お前は味がわかるものだ」という話。
今も情報ばかり食べてる場合が多いですが、そういうことって昔もあり、すでに、あまり良くないニュアンスで書かれているのがなんかおかしい。人って変わらないんですよね。
上海蟹を北京で食べた話、酒の色の話、大酒・大食の会の話など、戦前の中国の食べ物の逸話が多くて個人的には好きですが、上記の理由で読みにくいのでそこまではおすすめしません。
ちなみに、この本で酒は百薬の長という言葉は「夫鹽食肴之將、酒百薬之長」という。「塩は食の将」という言葉が前に来る事を知り、ああ、なるほど。と思った次第。そんな本です。
■ 本の解説
こよなく酒を愛し食いしんぼを自認する著者が楽しみながら書いた酒や料理のはなしの数々。蟹や河豚といった酒の肴、はては酒の飲みくらべの話などをとりあげても並のグルメ談義とは一味も二味もちがう。滋味あふれるこれらのエッセーは名物学という学冶の実践なのである。