私設美術館・オープンダイアローグ(日記)
村上春樹ライブラリー
先日の日記から登場している松浦弥太郎さんだが、ここのところは、『センス入門』というエッセイを買って読んでいた。
この中に、「私設の美術館や博物館に行くことで、センスを学ぼう」という記述があった。私設・美術館。字の並びを読むだけで、もうすでにワクワクしてくる。さっそくこれを試してみたくなり、大学にある「村上春樹ライブラリー」に久しぶりに行った。
僕が気に入ったのは、それこそ「センスのいい」家具とAV機器が並んでいる、オーディオ空間だ。他の空間とはガラスで仕切られていて、その中では常にジャズが流れている。今日は、イラストレーターの和田誠さんのコレクションだというレコードが流れていた。椅子の座り心地が良かったので調べると、ハンス・ウェグナーがデザインした「GETAMA」社の「GE290」という製品だった。
説明書きを読むと、デンマークのデザイナー&会社であるようだ。
そういえば、デンマーク出身の僕の友達が、「Japandi」というインテリアが好きだと言っていたのを思い出す。これは、「Japan」と「Scandinabia」の造語で、北欧と日本のデザインを掛け合わせたものらしい。日本人が北欧好きだというのはなんとなくイメージできるが、北欧の人も日本(とそのデザイン)に親近感を持っているのはどこか意外で、面白い。
淡白でスマートで、押し付けがましくない素敵さがある。
さて、そのオーディオ空間の椅子については、すべてが「GE290」であるわけではなかった。肘掛けの形状から見るに、テーブルとそれを挟んだ二つの椅子がペアになっていて、ペアごとに製品が異なっていた。
面白いと感じたのは、テーブルの形状がそれぞれ違うにもかかわらず、天板の高さが均一になっている点だ。すると、それらはすべて「GETAMA」社の製品なのだろうか?これが気になってきた。今度行ったときには、他のテーブルや椅子について調べてみたい。
オープンダイアローグ
座り心地のいいその椅子で2時間くらい、斎藤環さんが訳と解説を行っている『オープンダイアローグとは何か』を読んだ。これが、かなり面白かった。
いくつか感じたことをメモする。
①ラジオについて
僕は今年の春から寮でポッドキャストを運営しているが、このポッドキャストでの経験が『オープンダイアローグ』と重なる部分があると感じた。というのも、ゲストとして招待するのは留学生であり、常識や価値観が非常にばらついている。そういった人たちの話を聞き、引き出すためには、ある種オープンダイアローグの「治療者」と同じように開かれた姿勢が必要になるような気がしたからだ。
もちろんオープンダイアローグは専門家が行うため、ポッドキャストの収録とまったく同じだというわけではない。しかし、こういうポッドキャストの経験は、オープンダイアローグのテキストを楽しみながら理解するにはうってつけだった。(それで言うと、たとえばお客さんと語り合うバーテンダーなどは、オープンダイアローグの概念を深く理解できそうに感じる)
そして面白いことに、この本は、僕がこれまで読んだ本のなかで、特に気に入っているものをいくつもサンプリングしていた。「あ、これは『身体はトラウマを記録する』と同じことを言っているぞ」と思ったら、3行先でそれが出てきたときにはかなり驚いた。
具体的には、以下のような本が出てきた。
・リルケの「問いの中に入っていくこと」。これは『若き詩人への手紙』からの引用だった。
・ヴァン・デア・コーク「トラウマは身体のレベルで記憶されている」
・ブーバー「我と汝」。<我―汝>の関係とブーバーが名指すものは、バフチンの言う「存在の一回性の出来事once-occuring events of being」と通じている。そしてこの経験の瞬間こそが、僕が最近のスローガンにしている「Capture the moment that will never happen again」の、「the moment」に他ならないのだなぁと感じた。