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【詩】城壁
灰色の城は
終わらない反復の窓を
西に向けていて、
そこに人影はひとつもない
ただいくつかの反復の向こう
バルコニーから一株のベコニアが顔を出す
色を失った空の光
それをばらして
みずからに必要なものだけを取り出す
それはまるで命だ
城壁の石は山から切り出され
黙って王に従った
王ははるか昔に死に
城壁の中は ブナの林に還った
ただそこに城壁は黙り
人間の過ちを無言で責め立てている
いや むしろ
責めてすらいないのかもしれない
ただ ベコニアだけが
口を利けそうな顔をして
その身を壁のへりまで
乗り出している