遠くにある「知」を探索することが難しくなっている時代
野中郁次郎さんの新著「野性の経営」の中で気になる内容があったので記しておきたい。
テクロノジーの逆作用について。
現在、検索技術は世界中のあらゆる情報に誰もがアクセスできるようにした。お陰で「ググれば」一瞬で関心のある情報に詳しくなることが出来る。
かつての天文学者よりも今の若者の方が宇宙に詳しい、という皮肉もあるほど、あらゆる情報がインターネットの世界に存在している。
誰が高度な知に自由にアクセスすることができる素晴らしいテクノロジーを人間は生み出した。
一方、検索技術はさらに高度になりその人の好んでいる情報、興味のある情報を上位表示したり、オススメしたりするようになった。
お陰で毎日僕のサイトにはラグビーニュースがたくさん入ってくる。
この状況は便利ではあるが、本来インターネットが目指していた誰もが多様な情報を手に入れることが出来る世界とは真逆の世界になってきているとも言える。
SNSでも、好みの人物をフォローすることで思考や思想の偏った人達とのコミュニケーションが盛んになる。誰も嫌いな人の意見を毎日眺めたくはない。
そのコミュニケーションの中にいると、自分たちが正義で多数派のように感じることがある。
閉鎖的な空間内でのコミュニケーションを繰り返すことが、特定の信念を増幅または強化してしまう問題を、狭い小部屋の中で音を鳴らすと部屋全体に何度も反響する比喩で「エコーチェンバー現象」と言うらしい。
自分にとって好ましい情報しか入ってこない環境が強化される中で、自分たちのバイアスもどんどん強くなっている、と思った方がいい。
大海に出て、知らない知に探索していると思っても、実は小さな池の中で泳いでいるだけかもしれない。
今の時代は想像以上に「遠くの知にアクセス」することが難しい時代と思った方がいいかもしれない。
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