菊香

菊香、活動再開します。 お初の方は「初めまして」。御馴染みの方には「ただいま」。 これまで執筆した小説をメインに創作を楽しんでいこうと思っております。   ■掲載歴↓ 菊市香名義で文庫「推定恋罪」大洋図書刊行、遊月名義でイラスト・4コマ(小学館、ホーム社、芳文社)各雑誌掲載。

菊香

菊香、活動再開します。 お初の方は「初めまして」。御馴染みの方には「ただいま」。 これまで執筆した小説をメインに創作を楽しんでいこうと思っております。   ■掲載歴↓ 菊市香名義で文庫「推定恋罪」大洋図書刊行、遊月名義でイラスト・4コマ(小学館、ホーム社、芳文社)各雑誌掲載。

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短編集|誤算

 [1]誤算  やけに騒がしいなと思ったら、マンションの前にパトカーが停まっていた。  原因はわかっている。    3日前、ここで殺人事件があったんだ。

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    • GetKey7

      [1] 最悪の日曜日  遠くで、さざ波のようなベルの音が響いている。  ぬるい水底に沈んだ意識が少しずつ浮上を開始する。  ―――まだ眠いんだ。  そう呟いて、浮かび上がろうとする意識をなんとか引き戻そうと試みる。  そんな努力を嘲笑うかのように、ベルの音は次第にはっきりと耳に届いてきた。  ため息をついて眼を開けた。  ぼんやりとした視界に、薄汚れた木の天井が揺れている。 「……チッ」  軽い舌打ちとともにノロノロと上体を起こした。  ズキズキと痛む頭に呻きつつ

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      • ペンドレル

        [1] 始動  乾いた砂混じりの風が、吹き抜けた。  彼方へと広がる荒野。  遥か山頂に雪をいただいた山並みが、幻のように霞んでいる。  辺りを包む淡い光に、荒野の乾いた大地が琥珀色に染まっていた。  荒野の所々に、思い出したように点々と緑が散っている。  荒野の殺伐とした景色の中で、その弱々しい緑が環境の厳しさを物語っているようだ。  緑の植物の名、あれはなんと言ったか。  男は、ぼんやりと景色を眺めながら思いをめぐらせた。  黄昏と静寂。  眼につく範囲に、建物

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        • 追撃のパンドラ [後]

          [21] クラインの狂犬  琥珀色の太陽が中天に差しかかる。  静寂。  風がさらう荒野には、枝葉を揺らす木々もなければ動く影もない。  だが、そんな荒野のはずれに瓦礫と化した街がある。  街の名はロプノーリア。  ペンドレル北西部――ルシャルゼ川沿いに広がる荒野に、ぽつんとオアシスのように広がる街だ。  街の中心に位置する石造りの教会が、この大半の家屋が瓦礫と化した街の唯一まともな建物だった。  中央に十字架がそびえる鐘楼と聖堂を擁し、左右に羽を広げるような破風と飾り窓に

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        短編集|誤算

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          追撃のパンドラ [前]

          [0] プロローグ  真っ青な空の下に、純白の雪の大地が続いている。  見渡す限りの青と白。  世界にはその色彩しかなくなってしまったかのような、二色だけで構成された世界。  男は、そんな景色をしばし呆然と見つめた。  吹き過ぎる風は肌を容赦なく痛めつけ、分厚い毛皮の隙間からせっせと入り込んでは男から体力を奪っていく。  体力の限界は近い。  しかし、男は足を止める訳にはいかなかった。  両腕に抱えた箱をしっかりと持ち直す。  石箱の中には、部族の若い娘の首が収められて

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          追撃のパンドラ [前]

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          パンドゥーラ[後]

          [13] 闇  どこからか重い金属音が響いてくる。  それに微かな低いモーター音――。  船内には、不思議と人の気配が感じられなくなっていた。  まるで――動いているのは船だけになってしまったかのような気さえしてくる。  メアリ・セレスト号のように、人が忽然と消えてしまった船をナツは思い浮かべた。  1872年にニューヨーク港を出航後、ジブラルタルへ向かう途中のディ・グラチア号に発見されるまでの10日間をメアリ・セレスト号は漂流していた。  北緯36度56分、西径27度20

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          パンドゥーラ[後]

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          パンドゥーラ[前]

          [0] プロローグ  湿り気を帯びた風が浜辺を吹き抜けた。  早朝。  夜の蒼を残した大気は冷たく澄んでいる。  潮騒は穏やかで、薄曇りの空は遠く水平線と溶け合っていた。  冷えた砂浜に腰を下ろした男はぼんやりと海を眺めていた。    男が身に着けているのは、ネイビーのフィッシングベストにブルーのカッターシャツ、ベージュのカーゴパンツ、足にはアーミーグリーンのゴム長靴だ。  どれも新品のように見えるが、頭に目深にかぶったキャップだけは、使い込んで所々擦り切れている。  

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          パンドゥーラ[前]

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          初めてのnote|兎がはねる

          満月だった、と思う。 真夜中なのにカーテンを透かして、うっすらと部屋の中が見て取れる。 目が醒めたんだと自覚して、最初に月明かりだと気がつくまでの数秒。 「あ、書かなくちゃ」 どういうわけか、そう思ってしまって。 折れたはずの筆と心とやらをかき集める感覚とわけわからん焦燥を道連れに、まっさらでどこまで続くかわからない旅に出ることにした。 そんな今、書いている。 自分をつき動かすもの、たぶん「衝動」、「情熱」、あるいは「夢中」の類…かな。 それに、あの夜はやはり満月だっ

          初めてのnote|兎がはねる