アルゼンチンタンゴ×介護!? 介護職員が出会った「タンゴセラピー」とは
みなさんこんにちは。特別養護老人ホーム夢の箱勝山で介護職員をしている寺西です。
突然ですが皆様、アルゼンチンタンゴってご存知ですか?
今回は、アルゼンチンタンゴと介護技術やレクリエーションとの繋がり、そしてタンゴセラピーという活動について紹介したいと思います。
タンゴセラピーって何?
「タンゴセラピー」とはアルゼンチンタンゴの音楽やステップを使い、 楽しみながら体を動かすセラピーです。 医療施設でのリハビリだけでなく、様々な介護施設や救護施設等で活用されています。
タンゴの独特のステップが、加齢とともに弱くなりがちな脚の筋力やバランス感覚を鍛え、ペアでのダンスが自信や安心感につながります。
また、アルゼンチンタンゴにおいて最も大切なアブラッソ(ハグ)でのふれあいによって「オキシトシン(別名:愛情ホルモン)」の分泌が促され、集中力を高めたりポジティブになったりと幸福感を高めることができるんです。
タンゴセラピーの重要な特徴は、「音楽」「歩き」「抱擁」にあります。
まず音楽は、音楽自体のリラックス効果に加えて、リズムに合わせて呼吸することで、神経伝達物質「セロトニン」の効果として心の安定がはかれます。また、高齢の方には「昔よく聴いた音楽だ」という方も多く、回想効果も期待できます。
歩きは、立てる方には立っていただき、時にはタンゴの後ろ歩きも取り入れます。
そうすると自律神経のバランスをとるだけでなく、音楽と歩行を同時に行うことで脳が刺激され、活性化されます。
そして、抱擁すること、手や体で触れ合うことでオキシトシンの分泌を促し、心身ともに健康増進をはかります。
詳しくはこちらのタンゴセラピー協会のホームページをご覧ください。
アルゼンチンタンゴは社交ダンスなど他のダンスと違い、テクニックよりも心や感情で踊るものです。
そのため男性は自分の感じる音楽表現を的確に女性に伝え、女性はそれを受けて華麗に踊らないといけません。つまりパートナーによって違う自分を垣間見れる魅力的なダンスです。
また、アルゼンチンタンゴはピンヒールのシューズを履くので、足首やふくらはぎ、腰回りがシェイプアップされ、奇麗なプロポーションを作ることが出来ます。
また、アルゼンチンタンゴには「間違い」は存在しません。曲を聴き、その一瞬に陶酔し、その人なりの踊り方、魅せ方を考えながら踊るため、個性を引き出しながら男性はより男性らしく、女性はより女性らしくなることができます。
(ESCUELA DE TANGO ARGENTINO HPより引用)
私がタンゴセラピーと出会ったきっかけ
私が、アルゼンチンタンゴを知ったのは、プライベートで参加した講座での出会いからでした。
2017年の春のこと。朝活仲間の交流会で知り合った方の姿勢講座があるというので参加したんです。その交流タイムで一緒に参加していた方から、「タンゴセラピスト養成講座」のチラシをもらったことがきっかけでした。
ふだん介護施設で働いていることもあり、「良い介護レクリエーションになりそう!」という単純な動機で、タンゴセラピスト養成講座に参加することにしました。
2日間の講座を受けるために職場に希望休を出して行った会場は、大阪西天満にあるアルゼンチンタンゴの聖地、タンゴバー「Cafetin de Buenos Aires」でした。
タンゴセラピー協会によるタンゴセラピスト養成講座を受講して、心に衝撃をうけました。
それまでアルゼンチンタンゴのことはよく知らなかったので、社交ダンスやフラメンコみたいな踊りなのかな?と思っていたのですが、実際に受講してみるとそのどちらでもなかったんです。
アルゼンチンタンゴは男性(リーダー)と女性(フォロワー)がペアになって踊ります。
ショータンゴは技を魅せる必要があるので予め踊る順番などを打ち合わせするそうなのですが、タンゴセラピーのベースとなるフロアタンゴは、アドリブが基本。
男性(リーダー)は次にどう動くかを女性(フォロワー)に伝え続ける必要があり、男性の伝え方が下手だと踊りが成立しません。
タンゴセラピストは基本的にリーダー役で利用者様がフォロワーとなって踊るのですが、このリーダーのスキルは、介護職員のスキルと似ているなあと感じました。
アルゼンチンタンゴの華はフォロワー。しかしながらそのフォロワーの踊りを引き出すのがリーダーの役目であり、無理やりリードすると成立しないし、フォロワー任せでも成立しないという関係性なのです。
次の動きを、言葉ではなく身体の動きで伝える非言語(ノンバーバル)のリードでおこなえる技術が必要なのです。
養成講座卒業!実際に活動に参加!
タンゴセラピスト養成講座を卒業後、仕事の無い日には、有料老人ホームなどでのタンゴセラピーのボランティア活動にたびたび参加させてもらいました。
活動のたびに、ボランティア先の利用者さんに楽しんでいただけるだけでなく、自分自身も利用者さんの笑顔をもらい、楽しく活動することができました。
中には嫌々参加している利用者さんもいましたが、活動の度に少しずつ心を開いていただけたのがとても嬉しく思いました。
当時、関西の活動先では施設内での撮影が一切NGだったのですが、施設内の様子や関西で活動しているタンゴセラピストの皆さんの写真を撮れたら…という思いがありました。
そこで、2019年の冬に当法人 基弘会の事業所「ココナラ巽」で、1時間のタンゴセラピーを開催しました。当日は関西で活動されているタンゴセラピストが大勢集まり、ゲスト様にタンゴセラピーの楽しさを存分に味わっていただきました。
こちらから当日の活動報告が見れるので気になる方はぜひ見てみてください!
翌2020年より、コロナウイルス流行の影響で介護施設で行うリアルでのタンゴセラピーが難しくなり、オンラインでの活動になりました。
しかし、タンゴセラピーの魅力はやっぱり人と人との触れ合い。例えコロナ禍でマスク着用であってもリアル開催がしたいという思いと、リアルでタンゴセラピーを行っていた感覚も日に日に鈍っているのを何とかしたいという強い思いがありました。
そこで2021年11月に特別養護老人ホーム「夢の箱勝山」の承認を得て、こちらでのタンゴセラピーの開催にこぎつけることができました。
久しぶりのリアル開催かつスポット開催でもあったことから、万が一の事故に備えるボランティア保険の打ち合わせに何度もいったりと準備は大変でした。しかし、なかなか集まれない関西のタンゴセラピストが10人近く生野区まで来てくれ、本当に良かったです。
アルゼンチンタンゴと介護の共通点、それは介護の場面で主体である利用者さんが心地よく動けるように介助者が働きかける技術です。
介護は、食事や排泄、入浴や非日常のイベントといった全ての場面において介護を受ける方が主体になります。活動を通して、介護をする側は介護を受ける方の心や感情をしっかり感じ取り、それを大切にして、その方らしい振る舞いや魅力をできるだけ引き出すことが大切だと感じました。
Text by寺西