みんな大好き「おふくろの味」は呪縛かも?!|老人ホームを使うのって悪いこと?その②
こんにちは。基弘会編集部のikekayoです。
介護/福祉に関してはほぼシロウトな私が、「くらしのふふふ」の運営母体である基弘会の代表、ミスターSKこと川西本部長と、普段は広報室長を努めておられる当メディアの編集部デスク山本さんに「介護ってどうすればいいんでしょう?」という素朴な不安を投げかけているシリーズ、今回は第2話です。
第1話では、「そもそもなんで老人ホームってなんとなくイメージ悪いんでしょう?」というお話をさせていただきました。
今回は、「介護ってやっぱり家族(子供)がすべき?」というお話。
さらに核心に迫ってまいります!
日本人の呪縛
「介護」と聞いて、ワクワクする人はそういないはず。なんとなく重い気持ちになるの、これなぜなんでしょうね??
川西本部長
「介護というのは家族がすべきものだという思い込みがあって、もちろんそうできればベストだと思いますが、でもそれだと家族の生活が成り立たなくなることもありますよね。介護される人のQOL(Quality of Life:生活の質)は上がるけど、している側のQOLは下がってしまいますから。」
山本デスク
「自分の生活を犠牲にして、親のための生活に切り替えるということですよね。」
川西本部長
「お父さんやお母さんのために人生を捧げる、それが心地良い人だったらいいですけど…。」
山本デスク
「でもそれが心地よくないとき、人は葛藤するんですよね。それであれば、無理にやらなくていいんじゃないかと思います。」
そう、そうなんです。葛藤があるんですよね。しかし、このなんとなく感じる「罪悪感」のようなものって、なんなのでしょうか?
山本デスク
「日本人の中には『親の老後の面倒は子供が見て当然』と思う高齢者の方は一定数いて、同じくらい子供の側もそう思っています。それは、親の世代が『自分はそうしてきた、だから子供も同じようにそうすべき』と思っているから。しかし、子供世代の生活は親世代とは全く違うので、自分たちの生活を維持しながら親の介護をするのは無理だとわかってはいても、施設や介護サービスを使うことへの抵抗があるんです。」
そうですそうです、おっしゃるとおり。
自分自身が、親がそのまた親の介護をしてきた話しを聞いていたりすると、余計にそう思うんですよね。
じゃあやはり、施設に入居ということになると嫌がられる方って多いんですか?
山本デスク
「入居を嫌がる方は一定数いらっしゃいます。
『そんなとこいかなくても自分は大丈夫だ』
『そんなとこいかなくても、子供らが自分の面倒見てくれたらいいだけなのに』
『そんな年寄りの集まりに行きたくない』
というようなことをおっしゃいます。
しかし、家族の手を借りなければその方は生活ができなくて、家族の方はサポートする負担がどんどん増えて自分たちの生活が成り立たなくなっているような場合は、ご家族の方も施設に入ってほしいとおっしゃいますね。」
うーん、わかるような気がします。やはり、施設への入居を勧められるというのは「捨てられる」ような感覚になってしまうのでしょうか…。
山本デスク
「でも中には子供に負担をかけたくないからと、素直に入居される方もいて、そういう方の場合は逆にご家族が『本当は自分たちが介護しないといけないんですけど…施設に入れていいんでしょうか…』と、罪悪感を感じられたりします。
だから、ご本人が入りたくない!と嫌がった場合のほうが、ご家族も割り切って『いや、入って!』と言えるのかもしれないですね。」
なるほど〜。なんだか駆け引きのようでもあり、切なくもあり。しかしいずれにしても「親の介護は子供がすべき」という信仰にとらわれていて、これってもはや「呪縛」と言えるのでは?と感じたりもします。
外国を見ると、北欧など福祉が充実している国では「家族に面倒をみてもらうのではなく自立してプロの介護サービスを利用する」ということが当然の価値観になっているところもあります。
日本がそのようになるのはいつなんでしょう?
山本デスク曰く、介護保険が始まって20年経つ今がこのような状態なので、もうひと世代、あと20年くらいしないと「施設を利用するのは当たり前」の価値観にはならないかも、とのこと…。
国民性のせい?とはいえ、長い道のりになるのかもしれません。
日本人は「おふくろの味」に弱い
老人ホーム入居の際に、多かれ少なかれなんらかの心理的障壁をもってしまう高齢者とその家族に対して、基弘会さまではどんなふうに説明して納得してもらっているのでしょうか?
山本デスク
「施設では、ご家族がやってあげたいと思っていることを、代わりにスタッフがやっているんですと説明します。
おうちのお母さんの部屋がどこでもドアで施設につながっていて、お母さんは施設の部屋を間借りしてもらっている。ご家族がお母さんの背中をさすってあげたいと思ったら、ご家族のかわりにスタッフが遠隔で背中をさすっているんですよと。
だから、ご家族は会いに来られるときに来てもらって、お母さんの背中をさすってあげてほしいし、それ以外の時間は、スタッフが代わりにさすっていますよとお伝えしています。」
どこでもドアで施設の部屋につながっているっていうのは素敵なイメージですね。そして「ご家族の代わりに」と、家族の気持ちにも寄り添ってくださるのも安心できます。
川西本部長
「飲食店に『おふくろの味』ってよくあるでしょ。僕は介護業界はおふくろの味を売りにしているところがまだまだ多いと思ってるんです。つまり、下手でも愛情こもってたら良いという考えです。
でも、我々はプロなので、レストランや割烹であるべきで、おふくろよりも上手でなければならないんですよ。そこをみなさんにもご理解いただきたいなと思うんです。でも介護施設は“家族のように”とか“アットホーム”を売りにしているところがまだまだあって、それはプロではないと思うんですが、それが琴線に触れる方が多いのも事実ですね。」
山本デスク
「おふくろの味は、おふくろの感覚で適当に作る味ですが、レストランにはちゃんとレシピがありますよね。同じように、プロの介護技術にはレシピ=根拠があるんです。だから、ちゃんとその方の状態をわかった上で、専門的知識からどんな介助が必要かを導き出すというのがプロの仕事ですね。」
川西本部長
「だから、僕らはプロであって、おふくろの味じゃいけないと思っているから、入居される方には最初から『僕らは家族にはなれません』と言います。こう言うと冷たく聞こえるかもしれませんが、みんなプロとして仕事していますから。給料も残業代も払いますし、家族にはなりようがないんですよ。」
確かに、おっしゃるとおりです…!
わたしたち、医者にかかったときに「痛いの痛いの飛んでけ〜!」なんて言われたら「ハァ?!」と思うはず。なのに、同じように国家資格を持つ介護福祉士には「痛いの痛いの」的ななにかを求めている気がします…!!でもそれってきっと全然なんの解決にもならないサポートですよね。
わたしたち、どんだけ「おふくろの味」が好きなんでしょうか…。
川西本部長
「プロなら、誰が食べても美味しいものを作る必要があります。それがおふくろだと、少々不味くても食べるのはおふくろが一生懸命作ったから、ですよね。
でも、一生懸命やることだけが大事なわけではないんです。一生懸命背中をさすっても、力が入りすぎて痛かったら介護される側も心地よくない。だから、介護する側も体に負担のかからない介護をすれば、受けている側も楽だと思うんです。」
なるほど。それが「プロの技」なんですね。「おふくろの味最上思考」、介護においてはわたしたち改める必要がありそうです。
介護サービスは選択肢である
川西本部長は「介護は選択肢」だと言います。わたしは今回、日本人の呪縛とプロにおまかせすることの大切さをおふたりから学びましたが、介護をする余裕と意思があるのであればもちろん、ご家族が最期のときまでサポートするのも良いと思います。
しかし現実にはそれが難しい場合もあります。自分も幸せ、家族も幸せ、でなければ、人生が辛いものになってしまいますよね。
山本デスク
「おふくろの味もプロの味も、両方必要なんでしょうけどね。でも、施設に入られた方はほとんどが最初は嫌がっていても落ち着いていかれますので、来てよかったと感じてくれてるんじゃないかな。ちゃんとケアしてもらえるんだということが分かれば、受け入れていかれます。それを支援するのも、私たちの仕事ですね。」
家族に対して「介護とは選択のひとつ」ときちんと説明すること、入居後にしっかりとケアしてご本人にも納得しもてらうこと。いずれもプロの仕事ですね。その点は、よい施設の見極めポイントになるような気がします!
では、施設ってどうやって見つけていったらいいんでしょう??
山本デスク
「介護って、実際に要介護状態になったときに切羽詰まってしまい、心の準備ができてないまま施設に入れることになったことでご家族が罪悪感を感じてしまったりするんですね。
ですからやはり元気なうちから、前もって段取りのシミュレーションができるといいですね。
仕事と一緒で、仕事もシミュレーションすごく大事じゃないですか。老後も、準備しておくことがすごく大事なんです。」
むむむ〜。なかなかにデリケートな話題ではありますが、元気なときでないとしっかり本人の意思確認もできませんもんね…。
山本デスク
「実際に介護業界で働いているからこそ、自分の親には『私がいい施設見つけたる!』って思っています。中途半端に家で不自由に暮らすよりもお互い幸せだと思うんですよ。」
そうですよね。餅は餅屋。プロの手をお借りして、一家共倒れにならないように日々暮らしていきたいもんです。
ということで次回は「よい施設ってどんな見極めポイントがあるんでしょう?」というお話です。お楽しみに!
text by ikekayo(ライター/編集者)
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