間伐の作業手順メモ(造林)

伐倒

(伐倒方向とつる)

・伐る前に伐倒方向、周囲、退避場所確認。
・受口の方向は、幹が円いから、伐倒方向に出た所から切り始めれば、大体そっちに向く(斜め切りからやっていた)。
・北欧式のガンマークを見ながら受口の斜め切りから始める方法は、切り株が高くなりやすい。県税では株高30cm以下と指定されている。
・切株の高さは30cm以下と言っても、丸太を掛けなければならないから高めでよい。
・木曽では、木を倒して、枝を払い、その枝を幹に乗せて養生して、そこを狙って次の木を倒す。
・「木は伐っても切るな」:弦を切り離さない。
・元口が離れないようにするには、オープンフェースノッチあるいはゲタを多くはかせると回りにくい。
・受口と追口の段差をつけないと、伐倒方向の木にぶつかった時に元口が手前(伐倒方向の反対側)におされてくる可能性がある。段差があると、元口は引っ掛かって手前にこない。
・スギは一発勝負。最初の元倒しで成否が決まる。ヒノキは詰将棋みたいなもの。
・斜め切り禁止になったので、受口作成後追い口は木の中心部にみにわずかに弦を残してバーが挟まれないようにし、切り終わってバーを抜くと木が回転すると同時に弦がちぎれて切り離されるという方法を使っている。

(伐倒作業の危険)

・細いものでも木1本300~400kgあるので、自分の上に来たらアウト
・落枝は甘く見ない。ヘルメットを突き破った事例や手に当たって骨折した事例もある。
・蔓は若い(細い)ものなら斜面下側に伸びるから、蔓の巻いている木の上側ならつながっている可能性が低い。ただし、太い蔓は八方に伸びている。
・スギは弦が効きにくいことを忘れ、切りすぎる失敗があった。切りすぎ注意。

水野氏の理論
・受口の水平切り、斜め切りの会合線をさらにミクロに見た屈曲線(折れ曲がり線)の理論。チェーンソーの切削幅が6~7mmあるため、会合線が完璧に合っていても3パターンがあり得る(図)。このうち、折れ曲がり線が1つに限定されるのは②の場合である。従って、受口の最後の調整は斜め切りにより行う。斜め切りが多少食い込んでいても、受口の開度(斜めの面が閉じていく時、最初に支点につくまでの角度)が確保されていれば問題ない。なお、斜め切りをしてから水平切りをした方が会合線が合わせやすい。この時、目線はカッターではなく斜め切りの終点を見ると切りすぎず②の状態を作りやすい。
・受口の深さについて。弦の幅と受口深さの関係は、真円の場合で伐根直径の1/2で100%、1/3で94%、1/4で87%、1/5で80%。欧州では1/5で教育している所もあるが、以下の使い分け推奨。重心方向若しくは重心反対方向への伐倒では1/5、斜め方向で1/4、重心に対し直角方向では1/3。重心方向に対して直角に伐倒すると、弦の左右で引張・圧縮応力の傾斜が著しくなるため、十分な弦の幅が必要。木の形状により、深く切り込まないと適切な弦の幅を確保できないこともある。
・フェリングマーク(ガンマーク)はハスクバーナでは15m先で照準が合うように少し斜めになっている。スチールは公表していない。競技用チェーンソーは平行になっている。フェリングマークを使用して受口を作る際は、必ず立木の右に位置することになるので、それが斜面谷側である場合は、追口は斜面山側に移動して伐倒すること。

画像1

チルホール

・チルによる伐倒。(滑車をとる。)ワイヤの内角に入らない。
・テッカーラダーの使い方。鎖は木に回して溝に入れて固定。鎖の穴に入れると取れなくなる。鎖はあまり張らない方がとる時も取りやすい。
・チルの巻きあげる方のレバーを倒すとワイヤが入りやすい。
・帯、スリングロープの固定の仕方⇒「カモサギ」:入れたロープと本体のロープの隙間に先端を通す。滑りにくい。
・道路際の伐採(県の本数調整伐)では、チルホールで引き倒すが、倒れた後に斜面を滑落することを防ぐため、弦は多く残して伐倒後も切り株と元口が離れないようにする。
・枯れ木がほとんど下のスギに傾いて立っていた。○○さんは根元付近にチルホールをワイヤを回してセットしておき、下のスギに向けて伐倒してもたしかけた後、弦を半分切った。チルホールで引いて回転させ、枯れ木を落とした。
・まわりが皆伐され残った木の伐採(チル引き)。風でもまれて細かい割れが入って、裂けやすくなっていた。チルホールで引いたら裂け上がった。その後はワイヤで巻いて伐採したが、みんな裂けようとした跡があった。高切りすると裂けにくいらしい。
・切株を低く切ってチル・滑車が固定できない場合は切株の根を掘って(トンネル状)太い根にかける。何もない時、最悪、長いままのできるだけ下敷きになった伐倒木にかける。その場合、ワイヤを張った時材の動きを見る。
・ムカデバシゴを縛るロープは、ハシゴに対して直角になるように。
・滑車の位置調整のために、滑車を固定するスリングを伸ばした。
・1500kgチルは先端が丸くなったレバーを起こしておいて横のピンを左右に動かすとフリー/解除できる。使う時は丸いレバーを倒す。

かかり木

・かかり木の下に入らないこと。

①まわす

・かかり木を回すため弦を切っていくとき、追い口の面以上の高さで切らないと、段差が引っかかって回らない。
・かかり木を回す時、落とす方の弦を切ると90度回すと元口が地面について終わり。上げる方の弦を切ると90度以上回せれば重みで270度まで行く?

②チルホール

・かかり木でド真ん中にかかっても、枝は櫛状ではなく放射状に出ているので、チルで横に引けば外せる。
・チルホールで元を引く時、株に引っかからない向きで斜面下方に引く。

③ロープ

・カラビナを動滑車にしてロープで引いた。力は少なくて済むが、引く方向は途中で変えられない事が難点だと思った。
・ヒノキでも頑張ればロープ(3段はしご使用)で枝を抜けて倒れると分かった。

元玉落とし

・切捨て間伐は、木にもたしかけて掛かり木にして横に切り欠きをつくって横に倒す。同じ場所で玉切りすれば並べたように見える。
・横に倒すとき、どちらかと言うと上の木の下に掛かるより、下の木の上に掛かった方が後でダルマ落としするとき外しやすい。
・高い位置で伐って掛かり木にし、あとで下で反対に伐倒して外す方法は、ときおり下部の丸太が自分の方に跳ねて来ることがある。
・掛かり木で最後の方は軽くなってくるので、元玉切りの切り残しを少なくしないと、折れずに全体がひっくりかえってしまう。
・元玉切りは、下に縦に丸太を敷いておくとすべって外れやすくなる。

造材

(玉切り)

・玉切り。合わせ切りで、上を切ってから下を切る時、下切りは水平に。斜めだと、上の部分で挟まる。あわててチェーンソーを上に引き上げるので余計に挟まる。逆に押しこんだ方が挟まりにくい。
・(切捨て間伐では)一番玉を切ってから元を外した方が挟まれにくい。
・玉切りで切った後に上から滑り落ちる圧力でバーが挟まれた⇒クサビを打って脱出。
・切捨てで、丸太を地面につけるのは、浮いていると腐らず邪魔になるから。

(枝払い)

・枝払い。切る面の延長に足がないようにする。

(造材時の危険)

・斜面上方に伐倒した時に丸太が1つ跳ね上がって、伐倒木の上に乗った。何気なく下から枝払いしていくと、ある枝を切った途端に丸太が転がってきて巻き込まれた。

(集積等)

・境界は開け、穴は埋める。

ナンバリング、足跡図作成

・ナンバーテープは斜面下から見ても、つけてあると分かるように、切り株からはみ出すようにつけるとよい。ステイプラーの向きは数字の下に横に打つと読み取りやすい。
・ナンバリングは一筆書きになるように
・選木段階での本数に合うように、ナンバリングしながら残り切る本数を調整

刈払い

・刈払の方法。右手、右足を前にして左側で持つ。(右バッターの持ち方)逆でもよいが、腰を開くことになり、負担が大きい。そのため、右側で持つ時は左足が前。
・声を掛けるときも離れて。
・大きい灌木は上を落としてから下を切る。
・灌木が多い場合は、「下刈り」してから間伐に入る。「下刈り」は後で木を伐る時に歩きやすいように。
・等高線状に進み、下から上の順で刈る。
・刈払機は横に振るのではなく、手前に引くようにして切る。
・刈刃の直径は足の大きさに等しいから、足1つ分の歩幅で刈り進む。
・2人以上で刈る時、同じ方向に刈らないと、交差する向き(直交する方向)ではがちあって危ない。
・絡んだ草はエンジンを切ってから取れ。
・灌木を左から右に切る時に、衝撃が少ないようにアサリをつかってゆっくり切るには、刃をできるだけ奥に突っ込んで刃の手前の方を当てて切るとよい。ただし、元が奥にいく反動で手前に倒れてくる(特に先に頭を落とした場合)。
・キックバックの位置も切り易い位置も、刃の中心にたいして点対称になっている。
・刈払機をひっくり返して刃の裏で刈る時は、回転が逆になるから力の入れる向き、キックバックの位置が左右対称になる。
・古い間伐の切り株が高いので、よく刃に当たってキックバックした。

トビ

・トビは元を持つ手(右手が先端側を持っていれば左手)で打つ感覚。抜く時はトビの柄を起こして(刺さっている角度にたいして更に倒れるように回しながら)柄を倒せば外れる。チェーンソーや刈払機は3ヶ月で慣れるが、トビなどの手工具は3年かかる。
・トビは丸太を回して転がす方法と、回さずに引きずる方法があり、木口の上部を刺して引くと回転し、木口の下部を刺して引くと回転しない。
・トビは丸太を斜面上から下に移動させるのが基本。下から上は大変。
・トビを横に刺して丸太を回転させながら引くのは、静止摩擦力を動摩擦力(小さい転がり摩擦から普通の摩擦へ)にしてから動かすことで、小さな力で動き始める。
・トビで丸太を引く時は、腕の力でなく、下半身で。(半身の構え)
・大きい木は、重心近くにトビを刺して浮かせるようにしないと引けない。
・「かくる」:トビを支点にして少しずつ動かす。地面が硬くないと使えない。
・丸太を転がり下ろす時、トビで木口の中心をさせばスピードが調整できる。
・天竜のトビは先端にツノがついていて、エッジを効かせやすい。山福で買える。

ナタ

・ナタの使い方。スパッと一発で切ろうとせず、切りこみを入れて折る。柄の元を持って引きながら切る(当てるのではない)と切れやすく刃こぼれしにくい。

目立て

ソーチェーン カッター

・チェーンソーの目立て。ヤスリが「のる」音を聞き分ける。ノコギリにようにヤスリを使わない。
・右カッターがつぶれたチェーンで玉切りしたら、顕著に左に挽き曲がりを生じた。切れる方に曲がっていく。理論的には背を使って下から切りあげても、今回の場合は左に曲がっていくはず。一方、途中で自分が丸太の反対側に回って玉切りを続けたらSの字になった。

チェーンソー

・古いハスクのチェーンソーはキャブレターを固定する2本のネジがエンジンに直接触れているため、そこから熱がキャブに伝わり、キャブ内部の燃料が沸騰して燃料タンクに逆流し、再始動が難しくなる等の問題が起こった。そこで改良してネジの先を細くして、そこにゴムをかませたりしたが不十分で、いまではネジはインシュレータのところで止まり、直接触れないような構造になっている。
・玉切りでチェーンソーが挟まれ、無理やり抜こうとしてキャブの調整がずれてしまった。

刈払機

・刈払機はチェーンソーの構造に似ているが、空冷の冷却フィンがスタータ側でなくクラッチ側についている。
・マフラを外してカーボンを取る時はエンジン内部に入らないようにピストンを上死点にもってきて慎重に行う。
・キャブレタを取りつけつときは、エンジンの圧縮を伝える小さな穴がインシュレータ、ガスケット、キャブレタ内部に通る向きにする(逆向きでもはまってしまう機種がある)。
・操作管の接続部は2種類あって、ゴムが圧着してあるものの方が長持ちする。
・燃料フィルタのつまりは外して口で吹いてみる。
・燃料ホースに段差がついて漏れてきたら、位置を少しずらすだけで止まることがある。

その他

・山の歩き方。慌てる必要はないので、体重移動してから次の足を「置く」感じ、地面をしっかり掴む歩き方。極力地面を蹴らない。
・木は生き物。生命を「いただく」という気持ちで、バカにしないでやる。心の問題が相当入ってくる仕事。
・毒ヘビ、マダニ、ツツガムシ、ツタウルシ等に注意。
・マムシは9~10月の卵を抱えているときに注意。普通は逃げていくが、この時期は逃げずに、噛む。マムシはお盆をすぎると沢から尾根に上がってくる。

ワイヤーワーク

・巻き刺しはストランドをねじって入れないように持つのがコツ。
・最初の3本は4回、次の3本は3回刺すと1直線に出る。
・ワイヤの編み方は2本ずつ3つに分けて編む方法もある。

山の見方

・北向きの山の方が良い。西風が当たると、木が揺れてシミが入る。
・今は経済的、獣害(防護柵)の問題で皆伐更新は行われない。
・150年以上で役物に。
・林地の売り値。80万円/ha。税務署が200年の山などと認定すれば税金が上がるが、普通は手入れされた山でもダメ山でも税金は同じ。
・県税の事業で下刈りは1ha6~7万円。灌木が混ざると8万円くらい。
・100年の山を皆伐すると500m3/ha、材価を2万円/m3、経費1万円/m3とすると木材売上1000万円/ha、収入500万円/ha。うち自分の利益200万円を貰って300万円を山主に返す。
・立米を4倍して1割引くと石になる(3.6倍)。


しいたけ原木

・しいたけ栽培でナラは葉が落ちる前の時期に元倒しして、葉枯らし乾燥させてから玉切りし、山で種駒を打つ。
・シイタケ原木の伐採時期は、葉が丸くなって葉裏が見えて白く見える頃で、水が止まったことを示す。葉の色は紅葉しなくても緑でもよい。
・元倒しで葉枯らしし、1月になると葉が茶色になって水が抜ける。→玉切りして菌打ち。
・伐倒は玉切りの作業性を考えて上に倒す。
・伐採したシイタケ原木は1月に玉切り、3月に山に置いたまま菌打ち。

広葉樹植栽

・県指定の有用広葉樹というのが数種類あり、補助金対象となる。木材を利用できる樹種。
・ケヤキの苗木植栽。3m間隔。苗木(単木)にネット巻き。

地拵、獣害対策ネット

・皆伐現場の周囲に獣害対策ネットを張るため、邪魔な丸太、灌木を除去する作業。
・獣害対策ネットは、施業地全体を覆うものと単木で覆うものがあり、急斜面では単木で覆う。網から梢端が出ると曲がってしまうので、時々直す必要がある。単木ネットは1つ約1000円。
・山主の8割は皆伐に興味がない。
・地拵のとき、人が通れるようにつくねる。とくに下刈り作業を考えて。ネットの境界はあけておく

特伐

・ルーピーは、重なった部分がチョークされる位置にくるように設置する。

○○さんは発明家で、釣り竿と輪状の針金を利用して高い所にロープをかけたり、折り畳み式の棒、先端にノコをつけ、滑らないように工夫した木を押す棒など面白かった。

造林施業省力化の取り組み

・コンテナ苗でも条件が悪いと半分以上枯れる。
・(1箇所目現場:皆伐植栽)ネットは県の補助金で、植栽は国の造林補助金で。経営計画に入っていないので、造林補助金は標準単価の33%。入っていれば67%もらえる。
・(2箇所目現場:皆伐植栽)植栽本数は2500本。市の市町村森林整備計画で植栽の最低密度が2500本/haになっているため。
・(3箇所目現場:列状間伐)間伐の造林補助金は60年生まで。伐採率40%以上の択伐になると、苗木の新植が必要な場合も。

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