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【人材業界】ちょっと転職サイトに登録してみただけなのに

将来的に自分がやりたい仕事は何なのか、続けることができる仕事は何なのか。わからないので幾つかの転職サイトに登録してみる。ただ情報を集めたいだけなのに毎日電話がかかってくるようになる。膨大な情報量。多彩な筈の仕事がどれも同じに見える。どの会社もある程度は魅力的に描かれていて、応募者を募ろうとする。彼らが資金を割いた広告なのだから当然である。

人材紹介会社は我々登録者を逃すまいと電話で追い立ててくる。彼らにとって私たちは数字で、成果で、商品のように企業から企業へと受け渡され、企業は内部の人間へのケアよりも外面を整えて採用にお金をかけようとする。勿論経営好調や新規事業立ち上げのための増員もあるかもしれない。でも何年も何年も同じことをしている会社の人材が常に足りないのは何故だろう?

人は転職を考えるとき、希望を持っている。新しい職場で、仕事で、今度こそ自分の潜在能力を生かして活躍ができるかもしれないと野心を抱いている。あるいは遂に自分にも人間らしい扱いが許されるのではないかと縋るような気持ちかもしれない。もっと楽したいとか、もっとスキルをアップしたいとか、新しいことに挑戦したいとか、認められたいとか、時間が欲しいだとか理由は山ほどあるとすれども、自らの置かれた状況を悪くしようと思って現状を変えようと試みる人はいないのではないだろうか。

幸せになりたい。

それが人類共通の望みだとすれば、人材業界というのはその欲望を原動力にしてぐるぐると回り続けているようなものだ。職が欲しい人と、人が欲しい企業と、そこに仲介に入るまた別の企業と、一般人には選択肢がなかった昔にはこんな商売はこんなに儲けなかった。武士の子は武士で、農民の子は農民だったし人々は情報も選択肢も与えられてはいなかったから。

新しいサービスは素晴らしい。人々に選択肢があるのも素晴らしい。資本主義の競争社会で日本では表面上では人類皆平等ということになっている。頭の良さと努力である程度は立ち向かえる。生まれた家に金があるか学があるか、運の良さや容量の良さ、機転を利かせられるか、愛嬌や容姿なんかも影響してきそうだが、それらを全部踏まえたうえで一成人がこの世界で今の状況に満足していないとすれば、それは基本的には現状を変えようとしてこなかった自分自身の責任だ。

平等に選択肢を与えてくれる溢れ返る情報というのも素晴らしい。悍ましい数の情報、コンピュータなら処理できる。インターネット上にはもう人が千年生きても読み切れないほどの情報が増え続けている。一人の人間の脳は?詳しいことは知らないが、どんなコンピュータよりも優れていて、より良い情報を選んで読み込んで切り捨てて、そんなことを論理的にできてしまうポテンシャルはあるのかもしれない。

できるもんか。

疲れ切った脳は娯楽だけを求める。現状から抜け出したくても焦りと不安が冷静な判断というものを奪っていく。私たちを数字とみなす連中が早く商品を企業へ売りつけたくて甘い言葉をささやいてくる。彼らも追い立てられ、立ち止まる余裕はないから仕方ない。そしてまた人は新しい仕事を得ても不幸になる。不幸な人は効率よく働かないから雇った企業も不幸になる。折角大金を叩いて雇ったのに、不幸な人は去っていく。でもお金がなければ働くしかないから、絶対に人材マーケットに戻ってくる。おかえりなさい、新しい仕事はいかがですか。あなたが求められています。

求人情報を眺めていると頭がおかしくなってくるようだ。

(全然関係ないただ頭の中で考えていたことを吐き出しただけの文章ですが、Uchuuさんの歯ブラシの絵をお借りしました。ただそこにある、無気力感と通じるものがあるような。人間も歯ブラシもきっと一緒だ。)

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