#12 コミュニティがアクションを起こし続ける力を育む「OST」
いよいよこのゼミワークショップも最終回になりました。今回のテーマはこうです。
ここに集い、聴き合い、学びあった私たちだから話せる、話したいと思うことはなんだろう。
これまでの道のりをふりかえる
このゼミワークショップは、ウォームアップを含めると計13回行ってきました。新型ウィルス時代のチャレンジとは何か、そもそも持続可能な開発/気候変動とは何か。まちづくり(少子高齢化、人口減少)のメガトレンド。農業・漁業、外来種や野生生物との共生についての複雑な現実。
秋学期
SDGsなど大きな上から目線だけではなく、生活の中にある複雑な課題に目を向けてきました。独自に取材した映像を活用して、リモートながら、あたかもみんなで「社会科見学」に行っているかのような体験もしました。これには、参加者から多くの反響がありました。
最も繰り返されたであろうキーワードは、「アクト・ローカリー」でした。
<TIPS>
act individually(アクト・インディビジュアリー)|個人でアクションする。たとえば、レジ袋をでできる限り使わない。
act locally(アクト・ローカリー)|みんなで仕組みをつくる/続ける/やめる。たとえば、そもそもレジ袋を使いづらい・使わなくて済むような制度・環境・文化をつくる。
「ていねいな発展」の考え方に基づき、みんなの声を集めて「札幌市の2050年のありたい未来」を描いてみました。
その実現ために、多様な利害関係者に対して、どのように声かけをするとより賢いかもたくさん練習してきました。
その難しさにうんざりしたり、もどかしく思った方も少なからずいました。それでも、探求やチャレンジをやめなかった人がいました。
冬学期
冬学期は、「アクション」をテーマに開催してきました。
私たちが育んだ「〇〇力」は何か
その上で、このようなことを話してみました。
ゼミ・ワークショップを通じて、あなたが感じられるようになった「自分の力」や「つながりの力」がありますか。 あったとしたら、それはどんな感じですか。
このような声が聞かれました。
・一方的でなく、対話力
・手書きの暖かい素材を作る力
・企画力
・かたい雰囲気の時に緩める、ゆるい時に締めるみたいなことをしていた。それで前回しくじった気がする。まじめに学びたい人の中で、ゆるめるのは要らなかったかも。「台無し力」
・知らなかったことを知ることで行動が変わった。「知ろうとする力」
・DSR「どうにかなるさ力」
・問いを立てる力
・聴いた話をそのまま受け入れる「受容力」 など
既に私たちにある力もあれば、これからさらにつけたい力もあったようです。これらの力を自覚した上で、最後のセッションに臨みます。
オープンスペーステクノロジー/OST
OST。これまで私たちが「お呼びかけ分科会」と呼んで練習してきたものは、この手法に基づくものでした。基本的なやり方は同じです。
1 「このことについて話したい!なんとかしたい」というテーマを持つ人が名乗り出て、呼びかけます。
2 その数だけ分科会(ブレイクアウトルーム)が立ち上がり、呼びかけ人が自らその分科会をホストします。
3 その間、参加者全員が二本足の原理にしたがって、分科会を自由に行き来しながら対話をしていきます。
4 話しっぱなしで終わりではなく、どのような気づきがあったか、次の一歩は何かなどを記録します。(この技術のことを「ハーベスト/収穫」と言います。)
それを支えるのは「二本足の自由」という原理です。
「学んでいるか/貢献しているかをしていれば、そこにいる。そうでなければ、別の可能性を求めて次の場所を求めていい!」
そのほかにも、「オープンスペースをひらくと、よくおこる5つのこと」も学びました。
1. ここにやってきた人は誰でも適任者だ
2. 何が起ころうと、それが起こべきこととして起きている
3. それがいつ始まろうと、始まるときにはじまる
4. それが終わったときは、本当におわり。
5. それがおわらないときは、おわりではない。
それらは普段の生活の中では必ずしも当たり前ではありません。しかし、このOSTというコントロールのない磁場の中では、よく起こることです。それに私たちはびっくりするかもしれません。これらは「それでも自由を練習しよう」という呼びかけです。
スペースをひらく
今回はこのようなお呼びかけがありました。
・北海道で市民ファシリテーターを増やしたい
・自然との共生とは何か
・気候変動と札幌市
・サスティナブルプロダクトのお買い物
・地域のオーガナイズ力UP ほか
今回は40分間、自由な時間を過ごしました。各分科会の呼びかけ人は、その学びをハーベストして、最後に全体でシェアします。一例として、私が呼びかけた部屋のものを共有しますね。お越しいただいた方、ありがとうございました。
参加者からはこのような声がありました。
熱量が同じ人たちの集まりは動きやすく進みやすいねー
テーマ問いかけに対して、あまりにもたくさんの考え方や意見が上がり、拡散してしまってなかなかまとまりがつきませんでした。でも、たくさんのトピックをマップに落としていくであったり、対話の中から気づきを見つけて自分事に落ちてくるようになりました。
自分たちが抱いた問題意識をみんなで共有したり、整理して方向付けたりする場があると、次の一歩が踏み出しやすいのではないか。自分達が今できることに留まらずに、ステップアップできたら素敵だなと思います。
10がゴールだとして3を8にする人は複数いるけど0を1にする人は少ない。
「時間が足りない!」という方が多くいたように見えました。
また最後には、今回の一連のプロジェクトを支えたホストチームひとりひとりから、コメントがありました。
ゼミワークショップ終了後も、参加者がスラック上で、参加者の呼びかけとアクションを続けています。北海道内でサスティナブルプロダクトを製造販売する企業に視察に行ったり、卵農家に遊びに行ったり、オンライン対話イベントをやったり、このプロジェクトの卒業証書を勝手に作ったりなどです。
見た目だけのアクションプランを出すワークショップが少なからずありますが、それは痩せた土から無理を実りを収穫するようなものかもしれません。
こうして何度もOSTをくりかえしていくなかで、私たちのコミュニティーの参加力は少しずつ耕されていくのではないでしょうか。
エピローグ/参加者の声
最終回、みなさまお疲れ様でした。ほとんど初対面の方ばかりなのに、自分の素のままでいられる場所があるんだ!という毎回驚きの連続でした。この場を準備し毎回アレンジしてくださったSDの皆様、札幌市の皆様、参加者の皆様に感謝しかありません。またいつか必ずお会いしましょう!See you again!!!
共感の上に成り立つ本当の意味でのダイアログから生まれる一体感。そして札幌市の市役所の方々、この場を設定していただき、さらには札幌市に税金を払っていない私まで参加させていただき、ありがとうございました。
また、この中で誰かが立ち上げたゼミに進んで参加できればと思います。
札幌市の方々、ホストのみなさん、今年度のゼミをありがとうございました。この学びの後ろ側に膨大な時間と作業と知力と経験と熱くてやさしい思いとか、いろんなものがあるんだろうなと感じています。参加者の方々からよく出る「ここは安心安全」という言葉が物語っていますね。参加されている皆さん一人ひとりに参加に至る物語があるんだと感じて、もっともっと話したいって思ったんですけどね。最終回だったな。
環境問題にものすごく関心があるわけではなかった、むずかしいことも、よくわからない小さな市民の私がいろんなことを真剣に考えるきっかけをいただけだことが宝物です。
【第12回目】アクションを生み出し「続ける」コミュニティの力を育む(2021.2.16)
グラフィックハーベスター 小柳明子
エディター 反町恭一郎