【最終話】「さあ、何をしよう。何を考えよう。」
この日の札幌は、氷点下8度。頬を刺すような白銀の世界でした。テレビは、しばらく雪不足を心配していましたが、今度はその寒さと大雪をニュースにしています。
しかし、私たちの会場には、熱が充満していました。そこに入るやいなや、既にたくさんの人たちが準備に動いていました。
会場はなんだかワクワクする雰囲気です。これまでの道のりで出てきたアクションのアイデアがカラフルな絵になってところどころに張り出され、みんなの情報シェアボードが立ち上がり、抹茶の種類が選べる「カフェ三男」がオープン。
第8回、シリーズ最終回です。この取組では、どんどん勝手に人が動き出し、知らないうちにスタッフが増えてきましたね。その集大成とも思える光景でした。
さて、毎度おなじみ、対話の原則を確認した後は、これまでの流れをおらさいしました。
私たちは、気候変動という地球規模の複雑な課題、感覚的にはわかりづらい課題について、答えはないけれども、なんとかしたい。
そのために、対話し、集合知を収穫することで、より賢く共にはたらく(Act Locally)をしたい。佐竹さんも改めてその想いを語りました。
今回は、私たちが望む未来に向かって「勝手に、共にアクションを起こす」ための話し合いです。
そこで、今回私たちが行ったのが、オープンスペーステクノロジー(OST)です。参加者がみずから取り組みたいテーマを呼びかけ、分科会をつくって話していきます。その原則はシンプルです。
学んでいるか、貢献しているか。そのどちらかがあればそこにいて、そうでなければ、自分の二本足で、次のテーマを求めて出かけます。
この原則を大切にすると、私たちは、こんな風に見えるかもしれません。火を起こそうとする「たね火」、そこにくべる「薪」、次々に移動して異種交配をする「蜂」、自由に過ごす「蝶々」。
そして、この日の大きなテーマはこちらです。
これに関して、話したいことがある人はいませんか。全員でしーんと沈黙します。次第に、それに応えたくなった「たね火」の方々から、呼びかけがはじまり、10個以上のテーマが上がりました。
そして、オープンスペースが開幕されました。「このことについて話しませんか!」「あっちの部屋に行こう」。
もともと勝手にしていた私たちは、さらに自由にアクションを探求する旅に出ました。それぞれのグループで話を始めます。
はじまって20分を過ぎた頃から、人々の移動が始まりました。次の分科会へ移る人、そして、別の視点を得て、また同じ部屋に戻ってくる人。「蝶々」さんたち。急に「たね火」になってしまう人。自由で熱心な話し合いが展開されました。
OSTの終わりの時間を過ぎても、元の部屋へと戻ってこない人たちがいました。私がその人たちを呼び戻しに行った時に、彼らが言ったことはこうです。
「後半の時間は、これからですか?」
ともあれ、やっと全員、無事に戻ってきました。
その後、テーマを出した人から、次に進むためのお呼びかけが始まりました。
最初に呼びかけた時よりも、皆さんいい意味で目が鋭くなったように見えます。たね火に薪がくべられ、目の奥に炎が灯ったのでしょうか。「大切な想いにかき立てられている人は、存在感があって、言葉が深く響く」ように感じたの私だけではないはずです。
また、冒頭に「居心地が良くない」「緊張している」という方もいましたが、終わりにはすっかり「ワクワクする」と笑顔で語ってくれました。薪、蜂、蝶々として貢献する人にも喜びがあったようです。
さらに、ホストからの「楽しかったですか」という問いかけに対して、多くの人の人が手を挙げました。普段から、この「二本足の原則」で、お話をしたいですね。
おわりに、「もしこのゼミに来ないで一人でいたら体験できなかったなと思うことで、体験できてよかったと思ったこと。」「今日一番ハッとしたこと」を共有してチェックアウトとしました。
これまでありえなかった多様な視点が混ざり合うことで、より多くの人にとって意味のある可能性が開かれていく。そんな瞬間の連続だったのかもしれません。
こうして、2019年10月から5ヶ月にわたる「みんなの気候変動ゼミ・ワークショップ@札幌市」は、一旦の幕を閉じました。
第一回に、この取組のコンセプトの一つとして「土づくり」という話がされたのを覚えていますか。
いい作物を育て、美味しく食べ、そして、次の世代もそれが食べられるように種を残すためには、私たちには、豊かな土が必要です。
私たちは8回をかけて、関係性という土壌を耕してきました。みんながおいしい未来へ向かっていくためのインパクト狙って、地中へと深く潜っていく対話をし、戦略的なコラボレーションという成果を実らせ、次世代の種を落とし続けていく。そんな生態系のサイクルをつくるために。
まして、気候変動という圧倒されてしまいそうな、答えもなく複雑な課題をなんとかすること、つまり、ありえないくらいステキな果実を実らせるためには、ありえないくらい滋養豊かな土が必要なのかもしれません。
そのための、一つの手段が、今回行った「参加型/対話のゼミ・ワークショップ」でした。私たちは土を食べません。お腹が減っている人、すぐに成果物が欲しい人にとっては、もどかしい時間もあったかもしれませんね。
しかし、今、土は耕されつつあります。
もうひとりでウズウズしている暇はなくなりそうです。誰かを待っている時間も、終わりでしょうか。
種のみなさん、さあ、ここからがはじまりです。
結びに、ワークショップの中で、ユースからなる種の詩チームのみなさんが共に編んだ「お誘いの詩」をこちらでシェアします。ぜひこの詩を携えて、未来へとお出かけください。