#11 社会を変えるアクションの「応援の仕方」を知ろう
冬学期のテーマは「アクション」。全3回にわたって、「実際にやってみること」を育むことが狙いです。前回は、アクションを生み出しやすくする鍵となる「二本足の自由」と「お呼びかけ分科会」の練習を始めました。
そのやり方は前回の記事にありますのでご覧ください。
今回は、アクションの「応援」がテーマです。
第9回で学んだように、複雑な課題は、多様なセクターの私たちが共にはたらき続けることを必要とします。
ひとり(単一セクター)でできることに限界があり、また、そこには容易な解決策がありません。そもそも「解決をする(カタをつけたら、ハイおしまい)」ということが叶わないことも多くあります。
そのため、前回のようにアクションのアイデアを出すことはもちろんですが、それを、カタチにする/みんなでやってみる/やりつづけるための「応援」の仕組みも必要です。
そこで、今回の大きなテーマはこうです。
アクションしている人、アクションを創りたい人、アクションを仕込みたい人をお互いにサポートしあったら、何が見えるだろうか。
この取組はあくまで「参加型」。つまり、応援する人/される人という、一方向の関係を作りたいわけではありません。どのように私たちは、お互いにサポートしあえるでしょうか。そしてその先に何が見えるでしょうか。
アクションのための対話|3つのカタチ
そのために、今回も「およびかけ分科会」を行います。
ただし今回は、その前に「アクションのための対話における3つのカタチ」について確認しました。ぜひお読みの方も、自分に問いながらご覧ください。
今、あなたがなんとかしたいこと/やってみたいことは、なんでしょうか。
それを通じてあなたが望む成果を出すことを「果実の収穫」にたとえるとすれば、どのように見えるでしょうか。
その"果実"は、まだ「タネ」でしょうか。あなたがチャレンジすれば手が届きそうな高いところにある実りでしょうか。それとも、すぐに手に取れる場所に実っていますか。
①まだ見ぬ果実|タネを植えよう
「フツー」の社会の仕組みでは、これまであまり大事にされてこなかった。でも誰かやらなくちゃいけない。誰かが始めなくちゃ。もしかして、その誰かって私?その思いが確かだったら、さあ、今たねを植えよう。育てよう。
②高いところにある果実|小さな1歩をデザインしよう
あの高いところに実っている果実を手にしたい。今ある関係性や道具では届かないけれども、どうにかすれば収穫できそう。そのために今必要な仕組み、道具、学びとはなんだろうか。いろいろ変えてみない?
③すでにたくさん実っている果実|みんなで楽しく収穫しよう
木にどっさりなっている果実がある。取らないと腐っちゃう。たくさんの人で収穫しよう。札幌市はカゴ、軽トラも貸すよ。さあみんなで楽しく参加しよう。
一口にアクションと言っても、その性質によって「応援」や探求の仕方は変わっていきます。
それぞれの探求のガイドとなる「問い」
応援や探求が進みやすくなるように、それぞれのコースで役に立つであろうガイドとなる問いを用意しました。分科会は、計2回開かれるため、問いも2つあります。
①の人は、こんな問いについて話してみましょう⬇︎
②の人は、こんな問いについて話してみましょう⬇︎
③の人は、こんな問いについて話してみましょう⬇︎
今回の「お呼びかけ分科会」
希望する人がひとり40秒で、参加者に呼びかけます。そして、分科会がはじまりました。
・ゼロカーボン
・フェアトレード
・地域のコミュニケーションづくり
・地球環境とウィルス
・SDGs合コン
・なんでもおしゃべり部屋
参加者からは次のような声が聞かれました。
▶︎「合コン」の企画部屋では、人生の大先輩たちが合コンの経験を教えてくださった。「個人戦じゃなくて団体戦」のイメージとSDGsを合体させるのはパワフルな感じ。
▶︎「ウィルス」と「ゼロカーボン」の部屋に入った。SNSを炎上する形でストレスを発散する場にならないよう、という呼びかけも地球環境のテーマに当たるんじゃないか。
▶︎「フェアトレード」はもっと身近に目に触れることが出来たらいい。スーパーに意見書書いてフェアトレード商品を仕入れて伝える。
▶︎「地球環境とウィルス」のお部屋で人間側ではなく、ウィルス側の気持ちになってみるという考え。ちょっと今のご時世に新しい見解を持つことができました。
▶︎「ゼロカーボン」は、太陽光エネルギーや風力発電でつくった電気を使うこと、余ったら水素にかえてためておくことだと言うことがわかりました。水素は危なくないのでしょうか?
▶︎もっといろんな部屋に行きたかった!
これらの新しい気づきや疑問についてのノートを読んだだけでは、意味が通らないものが多くあるのではないでしょうか。しかし、本人たちの間では意味があるから、こうして記録されています。
何かこれまではありえなかった組み合せから、なにか新しいものが生まれようとしているのかもしれない。その場に参加したものとして、私はそのような雰囲気を感じていました。
札幌市/職員の皆さんの「応援」
参加者の「お呼びかけ」に対して、札幌市からのオファーがありました。
ここで記録しておきたいのは、この時、札幌市の職員の方々は、「言われれば手伝います」と傍観をしていなかったということです。
担当課として、条件にあえばヒトもカネも場所もオファーできることを示した上で、職員の方々は、各小部屋の話し合いの中に入っていき、呼びかけ人の話をじっと聞いたり、何かを問いかけてくすぐったりしながら、どうにかしてアクションが起こるように積極的に「応援」をされていました。
さまざまな応援の仕方
今回は、様々なレベルの「やってみたいこと」や「応援」が聞かれた時間でした。
私は、さまざまな部屋を行き来していました。「合コン」など、やろうとすればすぐにできそうなイベントが話されており、参加していた方は楽しそうでした。それらは「③収穫しよう」に類する話だったのではないでしょうか。
一方で、「ゼロカーボン」や「フェアトレード」の普及などと言った、簡単にはできなそうな、実現のためには物議を醸しそうなことは、より①や②の探求に近かったように見えます。これらはより多様な利害関係者を招きながら、より戦略的な、むずかしい話し合いを要することではないでしょうか。
繰り返しになりますが、一口にアクションと言っても、その性質によって、適切な応援や探求の仕方は変わっていきます。
たとえば、これからタネを植えたい人に対して、「とにかく試しにやってみよう。イベントしよう。広報しよう。人をたくさん呼んでこよう」などという応援は、あまり役に立たないはずです。
その代わり、やってみる前に「なぜ、何のためにしたいのか」などしたたかな想いを聞いて、ていねいに言葉にしていくことが求められるでしょう。そのアクション(アウトプット)によって、どんな成果(アウトカム)を生み出したいのかも考えたいところです。
前年度はそのことについて触れました。
改めて、今、あなたがなんとかしたいこと/やってみたいことは、なんでしょうか。
それをカタチにしていくために、今あなたに必要な問いは何でしょうか。
そのために、今必要な「応援」とは何でしょうか。
【第11回目】(2021.2.2)
グラフィックハーベスター 小柳明子
エディター 反町恭一郎