『木の根。』
2021-04-28
山々の新緑が生命の伊吹を弾ませている。
その日々刻々と生まれ変わっていくような圧倒的生命力は、いつもの通い道だのについつい車を止めさせる。
思いめぐらすのは、この生命力の起源が、長く厳しい冬を堪え忍びながら、だれにも見つからぬ地下で淡々と根を張り巡らしていたことにあること。
このSNS時代にあって人は目に見える部分だけをみて、人を羨んだり蔑んだり、かんたんに成果だけを手に入れようとするが、見えぬところで淡々と継続し積み上げていくこと、見えないものを想像することの大切さをおしえてくれる。ゴッホの未完の遺作には、木の根と幹が描かれていた。
ちょうど『木を植えた男』という絵本を読んでいた。どれだけ口先を動かしていても、手と目を見れば、その人の生き方が透けてみえる。フランスで少しお世話になっていた有機酪農家のウィリアムさんの凄まじい掌とやさしいまなざしが、ブフィエと重なってふと思いだされた。