
第99回箱根駅伝で泣いた 多分来年第100回記念大会は気絶する
毎年正月の2日と3日は箱根駅伝と決まっている。
私は中央大学出身である。何を隠そう陸上部(短距離)に勝手に混ざっていた人間である(誰も知らない)。
中央大学の陸上部といえば高校時代にインターハイや国体で決勝に残るようなトップアスリートが推薦で選ばれる超エリート集団である。
1980年代後半、高校3年生の時に100Mで関東大会に出場した私は一般入試で中央大学に入学して憧れの陸上部に勝手に加わった。寮の隣のアパートに住み、寮バスに勝手に乗って大学に通った(関係者の皆様すみませんでした)。
果たしてこのような人間が陸上部の練習に付いていけるはずもなく、ほどなくしてひっそりと姿を消した(誰も気づいていない)。
その後、サークル活動で知り合った仲間たちとバブル時代の青春を謳歌した。その仲間たちとは30年経った今でも関係は続いている。定期的に皇居ランとその後の飲み会を開催している(おじさんたちなので5kmが精一杯)。
当然のように毎年正月には箱根駅伝の話題で盛り上がる。箱根駅伝の中央大学といえば最多優勝記録を持つ超名門校。しかし、ここ20年ほど全く盛り上がらなかった。2013年には雪が降る過酷な5区山登りで選手が低体温で倒れ途中棄権。2017年には予選会で11位となり連続出場記録も87回で途切れてしまう。
それでも毎年仲間内では正月には箱根駅伝を応援していた。時には品川や蒲田に集合しながら。そしてそれは毎年反省会や翌年への検討会になっていた。
そして今年2023年、中央大学でかつてのエースでもあり2016年に監督に就任した藤原正和監督のもと、中央大学は第99回箱根駅伝で駒澤大学に次ぐ2位で走り切った。藤原監督やこれまでの経緯は他メディアに譲るが、その弛まぬ努力が実を結んだ。
大和ーーーーーーーーー!!
今年、何度テレビの前でそう叫んだか。
2023年第99回箱根駅伝 花の2区、伝説の走りが生まれた。日本人最強のランナー、駒澤大学の4年生田澤廉選手と、ライバルである青山大学の4年生近藤幸太郎選手、そして我が母校希望の星、中央大学3年生の吉居大和選手が魂を燃やす壮絶な勝負をした。
我らが吉居大和選手はトップに17秒差、2位の駒澤大学に9秒差の4位でタスキを受け取ると、前を走る選手をあっという間に抜き去りすぐにトップにたつ。一時は後を追ってきた駒澤大学の田澤選手に抜き返され、さらには14キロ過ぎに青山学院大学のエース近藤幸太郎選手にも追い抜かれる。それでも近藤選手に必死にくらいつき一緒に田澤選手を追う展開に。
皆さん、この時の近藤選手の大和君への対応に気づいたであろうか。
大和君が限界に達していたときに、青山学院大学の近藤幸太郎選手が、
「大和、ついてこい」
と左手を差し伸べたのである。
泣いた。
実は近藤選手と大和君は中学時代の愛知県のランニングチームの1つ違いの幼馴染なのである。幸太郎君だからこそついていけた。
近藤選手の大和君への想い、大和君の駅伝にかける気概、これが同時に前を行く駒澤大学の田澤選手を追う気力になった。大和君は近藤選手に必死でついていく。
2人で田澤選手を追う。なかなか差が詰まらない。しかし、とうとう残り1キロで追いつく。
そしてスピードがある大和君が最後の力を振り絞ってスパート。近藤選手を置き去りにして田澤選手も一気に追い抜く。大和君は2区最速の区間賞で3区の同級生中野選手へタスキを繋ぐ。近藤選手もこれまで勝てたことのなかった駒澤の田澤選手よりも早くタスキを繋いだ。
大和君は走り終わった後に、藤原監督の乗った監督車に手を挙げるとすぐに近藤選手に駆け寄りハグをした。近藤選手は大和君の頭をポンポンした。
泣いた。
大和君は走った後のインタビューで
「幸太郎君がいたから踏ん張れた」
と語った。
中央大学藤原監督は、今年は総合3位以内を目標としていた。青山学院の不調もあったとはいえ、結果として2位を獲った。
復路は最終学年の4年生中心メンバーで2位を死守した。最終10区で4年間で初めて箱根を走った助川選手は、同じく同期で一度も箱根を走ることができなかった田井野悠介選手の名前を左腕に書いて走った。
泣いた。
そして田井野選手はレース後の関係者への報告会の間中、走りきった中央大学の襷をずっと自分にかけていた。
泣いた。
その他にも給水役の選手など様々感動したことはあるが、この続きは来年にとっておこうと思う。
駒澤大学を牽引してきた大八木監督の人間力にはあっぱれ。
藤原監督は言っていた
「優勝を目指して1年間練習をしてきたチームと、3位以内を目標としてきたチームの差ですね」
その通りである。優勝を目指そう。
来年は箱根駅伝100回記念。
100回記念の中央大学の目標は優勝。
今年の熱いメンバーが残り、強い新入生も入ってくる。
来年の正月の第100回箱根駅伝は中央大学がきっと優勝する。
そして私は歓喜のあまりテレビの前で気絶すると確信している。