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オランダで胃カメラ
気になる症状があり、ホームドクター(オランダ語でハウスアーツ huisarts)のところへ行った。症状や過去に受けた胃の内視鏡検査の結果等の話をするとドクターが、
「心配だったら内視鏡検査受ける?」
と言ってくれた。正直なところ、えー、こんなに簡単に受けさせてくれるの?と思った。
すぐに手配をすると近隣のクリニックで一ヶ月後の予約が取れた。それが今日。
検査前6−8時間は食事をしない、2時間は水も飲まない、ということでお腹を空かせて向かう。
クリニックに着くと、受付での本人確認の後すぐにドクターが現れて検査の行われる部屋へ移動。座って問診。今まで5、6回胃カメラによる検査をしたことがあることなどを話すと、
「あなたの年齢でそんなに何度も内視鏡検査を受けたことがあるとは!
それで結果として何もなかったなら、今回も九割方、何もないですよ。」
と。40歳以上は年に一回の念入りな健康診断(人間ドック)がすすめられている等の日本の事情や常識とされることを話し、私はちょっと言い訳。
「ああ、なるほど。お金ですね!」
とドクター。人間ドックによって病院が儲けるお金のことを言っている。私も「そうなんですよー」と言って二人で笑った。
胃カメラ検査の手順は、当然かもしれないが日本と同じ。ドクター以外に二人の看護師が付いてくれて、うち一人は検査の間中ずっと私の手を握っていてくれた。もう一人は、検査の間中、
「あなた、とてもよくやっていますよ。 You are doing very well!
さあ、もうほとんど終わりましたよ。Well, we have almost done!」
といった言葉をかけてくれた。
ドクターといえば、
「今、〇〇の辺りを見ています。とても綺麗ですよ。次に、△△の方を見ます。あなたの言った通り、〇〇ですけど、まったく正常ですね。」
などと声をかけながら進めてくれた。
↑ この手順と言葉がけなどは、日本でもあり得るかもしれない。私が一番最初に受けた胃カメラによる検査では、検査中に医師が色々説明してくれた。自分も説明を聞きながら画面に映る胃の映像を見つめるという余裕があった。今思えばいくつかの薬を呑んだりとかなり手厚い処置をされた上での検査だった。
一回目以外はすべて「普通に」つらかった。今日の検査も、つらさのレベルは同じくらい。でも、何かが違った。今までに受けた胃カメラ検査の中では一番、安心できてあたたかみがあるものだったと思った。
何と言っても・・・胃カメラ検査に対してそんな言葉を使っていいのか分からないが、とにかく「手際が良く、あっという間に終わった」と感じた。
ドクターが逐一、
「今〇〇をしているので圧迫した感じがしているでしょうがすぐ終わりますよ。さあ、今空気を抜きましたので楽になりましたね。」
といった説明をしてくれたのがかなり大きい。患者(と言っても何も患ってはいないが)を目の前の検査物体ではなく、人間として扱ってくれている(というと大袈裟だろうか)。
検査の後、ドクターが検査中に撮った私の胃の写真を何枚か見せてくれた。
「あなたが言っていた通り、〇〇でしたね。日本のやり方に沿って(とここで笑い)、生検のために組織を少し取りましたよ(さらに笑い)。結果は二週間後に電話しますね。」
終始、和やかだった。看護師の二人もドクターも、
「あなた、模範的な患者ですね!」
と言っていた。誰に対しても言うのかもしれないし、(本当に必要でなければオランダではしない)胃カメラ検査を何度も受けて慣れている日本出身の私は本当に模範的な患者だったのかもしれない。
お礼を言って部屋を出た。クリニックに着いてから検査が終わるまで、正味30分ほど。家を出て戻るまでも45分ほど。
もちろん生検の結果を待つのだが、おそらく何の問題もないとの所見をもらって安心した。
この和やかな気持ちと安心感についてちょっと振り返ってみると・・・
ホームドクターに始まり胃カメラ検査をしてくれたドクター、二人の看護師まで
みんな女性だった
ということが大いに影響していると思う。
実は、今日のこの日まで結構ドキドキしていた。オランダの普通の病院で胃カメラによる検査を受けたことはなかったので、「人間ドックで胃カメラ検査に慣れている(?)日本の医者と比べて腕はどうなんだろう!?」と、オランダの医師に対して失礼な不安を持って今日の日を迎えたのだった。
しかも、喉への局所麻酔スプレーだけでなく、鎮静処置のオプションがあると事前に聞いていたので「あるならぜひ」と予約時点ではお願いしていた。そのために夫を伴っていったのだが、検査前にドクターと話していて「たった数分の検査のために一日中フラフラする鎮静処置するの?慣れてるんだからいらないんじゃない?」と言われてやめた。
もちろんそれだけでやめる気持ちになったのではない。ドクターの様子からかなり経験のありそうな方だという気がしてこの人なら大丈夫だろう、と思ったからだ。
日本だったらどうだろう。あらかじめお願いしてあった処置を当日になって、しかも医師の方から「やめてもいいんじゃない」などとは決して言わないだろう。「もう決めてあったんだし」、「準備してあるし」、「お金になるし」。
実は、検査を始める直前にドクターが二人の看護師に向かってオランダ語で話していたことが特に印象に残っている。
「日本では年一回予防的に検査受けることが勧められてるんだってさー。信じられないよね。どこかに大金が動いて行っているねー。わはは(笑)」
オランダ語だったので確実にこう言っていると理解できたわけではないけれど、単語や口調から察するにきっとこう言っていたんだと思う。こういう会話というのは「様子から」だいたい何を言っているのか理解できるものだ。
日本で検診を受けた歴史を持つ私も、実は今ではドクターにまったく同感なのだけれど。