日本酒まずはここから! 1銘柄1豆知識 ~純米生原酒 100人の唎酒師(沢の鶴)~
『日本酒にあまり詳しくない方にとっては、「銘柄や酒蔵がどうっていうのがわからないから、日本酒って何だか手を出しづらい」と敬遠してしまうかもしれません。
「日本酒まずはここから!」のコーナーでは毎回おすすめの銘柄をひとつご紹介します。これを読んで、「1銘柄1豆知識」から知っていることを増やしてみませんか?
いきなり製法について覚えたり杜氏さんの名前を覚えたりする必要はないのです。まずは視覚から、そして特徴的なこだわりなどを知ることでその日本酒に対して「飲んでみたいな」と思っていただけたら嬉しいです。
今回ご紹介する「100人の唎酒師 純米生原酒 (沢の鶴)」の特徴は、こだわりの製法と、アルコール度数が高いのに爽やかで飲みやすいこと。複雑な味が魅力の、兵庫県のお酒です。
インパクト大!「100人の唎酒師」
「100人の唎酒師」はパッケージからもわかるように、あまり「昔ながらの日本酒!」感はありません。飲んだ方の感想を見ても、「飲みやすい」「若い人にウケそう」など、普段日本酒を飲み慣れていない方でも楽しめる印象です。
気になる「100人の唎酒師」というインパクトのある名前ですが、「沢の鶴」に在籍する100人以上の唎酒師が開発に関わっているということで、日本酒を知り尽くしたプロによるこだわりを極限まで込めている信頼感があります。実はパッケージに描かれている人の顔は、沢の鶴の社員の顔をモチーフにした似顔絵なのだそう!
その製法は少し変わっていて、「限外濾過(げんがいろか)」という、酵素を極限まで取り除く製法で加熱処理をせずに生酒の美味しさを常温で楽しめる工夫がされています。
通常、酵素が日本酒に残っていると発酵が進んでしまうため、出荷のタイミングで加熱処理をする「火入れ」が行われます。「火入れ」を行わない日本酒を「生酒」と言い、香り高く個性的な味わいが楽しめるのが特徴ですが、品質の変化が早く冷蔵庫での保管がマスト。
しかし、この「100人の唎酒師」は「限外濾過」製法によって生酒の味わいを楽しめる商品ながら、常温でも一定期間味わいを変化させることなく楽しめるという、まさに「良いとこどり!」な商品なのです。
「沢の鶴」とは
「沢の鶴」は、兵庫県神戸市灘区にある酒蔵です。1717年に創業され、300年以上も酒造りをしている灘を代表する酒蔵の一つ。
「沢の鶴」といえば、お酒に詳しくない方でも耳にしたことがあるかとは思いますが、安売りや多売はせず、良い材料で昔ながらの伝統的な造り方を守り続けることで「手に入りそうで、意外と手に入らない」日本酒を目指しています。
米へのこだわり
米へのこだわりが強く、パッケージには「※」マークが多く使用されています。そのためか、『純米』製品も多く、バリエーション豊かなラインナップが特徴です。
これまで毎年のように多くの賞を受賞しており、令和2酒造年度全国新酒鑑評会「乾蔵(いぬいぐら)」入賞、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2021において『大吟醸 春秀』銀賞、『X03貴醸酒原酒』銅賞、“ワイングラスでおいしい日本酒アワード2021”「X03 無濾過原酒」プレミアム大吟醸部門にて金賞を受賞するなど、そのこだわりが評価されているところにも注目です。
1995年1月の阪神・淡路大震災では、沢の鶴資料館・木造蔵が全倒壊してしまうなどの災難に見舞われたものの、1999年には沢の鶴資料館を再建オープン、全国初の木造免震構造を採用したことから兵庫県指定有形民俗文化財に指定されました。
美味しい飲み方
そんな「沢の鶴酒造」が作る「純米生原酒 100人の唎酒師」はどのように飲むのが良いのでしょうか。
灘の宮水(=硬水……力強い味わいの日本酒ができ上がるといわれています)を使用しているので、口に含むとやや硬く厚みがある感じがします。しかし角はなく、明確な甘味を感じるのが絶妙!そのあとすぐに酸味が引き締めてくれる爽やかさがある……という、なかなかひとことでは表せない多様性のある味が魅力です。
アルコール度数が18.5%と、一般的な日本酒に比べるとかなり高めではありますが、多様な香味の要素を感じるためか、「軽やかさ」「爽やかさ」が先行し、そこまで重厚感を感じないところが不思議な商品です。
おすすめの飲み方は10℃前後から飲み始めること。冷たい温度の方が清涼感を感じやすく、より飲みやすいからです。グラスは冷たさを維持しやすい小ぶりなグラスが良いです。もしも日本酒を飲み慣れている愛好家の方であれば、もう少し高い温度で多様な味を楽しむのもありでしょう◎
また、アルコール度数が強いのが気になる方はオンザロックで少しだけアルコール度数を下げて飲むのもおすすめです。氷をいれても味が薄まりにくい力強さがあるからこその楽しみ方ですね。
湾曲性の高いワイングラスで飲むことはアルコールの香りを強調しすぎてしまう恐れがあることから、避けた方が無難でしょう。
一緒に楽しむ食事は肉料理がおすすめです。肉料理の油脂成分にも負けない力強さがあり、酸味・苦み・アルコールが油脂を洗い流してくれます。
『同じ兵庫県の「神戸ビーフ」に合わせて、郷土ペアリングを楽しむのも良いのではないでしょうか。
【参考】
沢の鶴株式会社
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