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smashing! がりょうてんせいなせんせい
佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。
先日露呈した事実。佐久間は「画伯」。
喜多村は全身全霊で吹き出さないよう、最新の注意を払った上で佐久間の「作品」を目にする。深呼吸して気合いを入れる喜多村。目の前に現れたのは。
「…鬼丸、こ、れは…」
「これは自信作なんだ。リアリティにこだわったんだけど…」
「…ウン、すごいよ今にも動…」
「すごいな千弦は。俺のことなんでもわかっちゃうんだな」
そら勿論。喜多村は己を無にするべく瞬き禁止で佐久間の絵を受け入れようとする。なんじゃこりゃあ。いやそうじゃない、これは「物」だ。物、無機物だとしたら佐久間の守備範囲のやつ。落ち着け千弦。
そう、考えるな、感じるんだ。
「この、針のとこが難しくて」
(はり?)
「糸が後ろに伸びてて」
(いとがのびる…………)
直線と曲線の織りなす躯体、何かは残念ながら判別できないがキーワードは「針」と「糸」。糸とやらが後方へ伸びる。喜多村は気づいた。これ連想ゲームのやつ。
「これあれだ!ミシンだな鬼丸!」
「正解!」
秋空のように爽やかな佐久間の笑顔に、感極まって天を仰ぐ喜多村。合っててよかった俺クイズ好きでよかった。
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「なんて素晴らしい…鬼丸くんの絵は自由発想の塊ですね」
「……ハ…ちゃ…ごめ、つる。俺腹筋つる…ヴヴッククク…」
「…………♡」(萌えすぎで動けず)
喜多村から画像が送られてきた。雲母が懇意にしているプリント工房でグッズを作ってもらいたいという。喜多村のお願いは神のお望み。魔神だけに。恭しく了承した雲母は、夕食後ちょうど家にいた伊達と設楽にも佐久間のイラストをお披露目した。
「あいつほんとかわいい」を連発し悶絶する伊達。催眠アプリ見せられたDKみたいに固まって動かない設楽。感動の表し方は人それぞれですね。雲母が嬉しそうにタブレットに指を滑らせる。
「あ、あと1枚…送られてきましたよ?これで最後で…えっ?」
ヒャア!なのかウヒャー!なのか。雲母が謎のか細い悲鳴と共にタブレットを抱えたままソファーに倒れ込む。どしたハルちゃん!黒い組織の酒のやつか!雲母が震える両手で差し出したその画面には。
「こ、これ…伊…さん」
「……………俺ぇぇぇぇ?」
笑いって極限超えると泣くねいわば感涙ね。雲母と伊達はほぼ号泣しながら何故か抱き合う。そんな二人の側で設楽は2.0の視力と正確な動体視力で瞬時に「伊達の似顔絵」を認識。
…えオレのは?
羨みMAXで伊達を問い詰めにかかる設楽だった。