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【みんフォト】イストラ半島、クロアチアの小さな港町の、路地裏で迷う。

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2017年には、私たちはイタリア以外に残存するローマ時代の史跡を見て歩くという旅をしていた。その夏は、当時自宅のあったオランダのハーグからクロアチアのイストラ半島まで、車で旅をした。途中の町で、転々とキャンプをしながら。

プーラのコロッセオを訪ねる途中に立ち寄った、ロヴィニという海辺の港町が、望外に今も心に残っている。坂の多い町で、海の近くの高台にある聖堂に登ると、街と港が一望できる。この土地特有の赤瓦の町並みが、まるで映画のはじまりの景色のように眼前に広がった。

新鮮な魚介類とトリュフが自慢の土地で、路地にテーブルを並べた食堂で、昼食をとった。せっかくだから、とわれわれは、新鮮な生の海老を千切りの林檎で和えたマリネと、まぐろのタルタル、鱸のカルパッチョを少しずつ盛り合わせたものを前菜にとり、地元の白ワインを頼んだ。薄曇りの、夏の日。日陰にいると、心地よかった。生の手長海老が、特においしい。とろけるようだけど、新鮮で身がしっかりしている。歩き疲れて、多少無口になっていた夫と、ほほえみ合う。私たちは、おいしいものが好きなのだ。メインには、フリット・ミスト(海老とイカと鰯のような魚だった)に、地元産のトリュフのパスタを半分こにすることにした。こういう南ヨーロッパらしいメニューに目がない。きゅっとレモンを絞って、さくさくのフライを齧る。クロアチア産のトリュフは、香りが良くて素晴らしかった。この土地のトリュフがおいしいことは、私は全然知らなかった。ぱりっとした白シャツの、お店のスタッフが、にっこりする。おいしいでしょう、とちょっと自慢するみたいに。わたしたちもにっこりする。みんな、おいしいものが好きなのだ。おいしいものを供していることに、誇りを持っている。旅先でこういうお店に出会えると幸福だ。

それから、町を歩いた。洗濯物がぷらぷらと干してある狭い路地をゆくと、容易に迷子になる。観光客相手の土産物がひしめく間に間に、この町に暮らす人々の生活があった。買い物かごを提げてあるくマダム、道ゆく別の友人と出会って声をかけている。猫とじゃれ合っている子どもたち、港町には猫が多い。小間物とちょっとした野菜を売る店の店先に並べた椅子で、日向ぼっこをしている店主のおじいさん。そういう光景がずっとずっと続いていた。

そんな、薄曇りの夏の日の景色を、あなたに。

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岡田環/Tamaki Okada
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