レゴ®︎シリアスプレイ®︎で作られた作品への問いかけ型ークリーン・ランゲージから学ぶ
レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、ある問いのもとに作品をつくる。そして、それに意味づけをしてストーリーを語る。ブロックで作品を作ってわざわざそれを介して語るのは、無意識部分も含んだ”イメージ”をしっかりと作品に乗せるためである(参考記事)。
そのブロックで作られる作品はメタファーとしての性格を必ず含む(参考記事)。すなわち、その人は表現しようとすることそのものを指し示すのではなく、代わりのもの(ブロック作品そのものが代理)を使って語っている。
ファシリテーターは、作品がメタファーであることに自覚的にならなければならない。ワークの中では、メタファーを適切に扱うためのコミュニケーションが意識されなければならない。
しかし、それはどのようなコミュニケーションなのか。
それに対して有益な示唆を与えてくれそうなのが「クリーン・ランゲージ」というコミュニケーション・メソッドである。「クリーン・ランゲージ」は、メタファーを扱ってその人の心の望みと行動を引き出す対話のために生まれた。
※日本語訳も出版されているが、再販されていないため価格が高止まりしている。原書は平易な英語で書かれているため、Kindleで翻訳ソフトを立ち上げながら読んでも十分理解できる。
上記の本で、メタファーを扱うときに最も注意を払っているのが、問いかける立場の答える側のイメージへの介入である。
クローズドな(Yes or No)質問はもちろん(選択肢の作り方に問う側の意図が入ってしまう)、オープンな質問(自由に答えられる)であっても問う側の期待が質問に混ざり込んでしまう危険がある。そうなると、答える側は問う側の期待に答えようとし、本当の望みが出てこない。対人関係に敏感な人であればなおさらだ。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、ブロックを使った作品作りに没頭させる時間が与えられることと、作られた作品を否定しない「作品が全て」というルールをファシリテーターが徹底することで上記の問題を避けている。
ただし、作品を作る時間的な制約などで、作られた作品が全てその人のイメージを出し切っていないと感じる時がある。その作品をさらに深掘りしたり(表現の底や裏側に何があるのか知りたい)、その人の行動変化に確実につながる作品表現へと一歩進めたいときがある。そのため、レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、そのために作品について話をしたのちに作品について質問をする時間を設ける。
このときに、問う側の期待が質問に混ざり込んでしまう危険を意識しながら問いを投げることが重要となる。その問いの出し方に「クリーン・ランゲージ」で使われる質問は非常に参考になる。
そのなかでレゴ®︎シリアスプレイ®︎でも使う場面が多そうな展開のための質問の型を一部を紹介してみよう(Xはメタファー)。質問側の期待を極力排除して本人がイマジネーションを働かせやすいように練られた表現に注目してほしい。
・Xについて他に何かありますか?
・Xはどこにありますか、またはXの居場所はどこでしょうか?
・XとYの間にはどのような関係があるのでしょうか?
・次にXには何が起こりますか?
・Xはどこから来たのでしょうか?
・Xは(生じる)ことができるのでしょうか?
・Xは何が生じることを望んでいるのでしょうか?
・Xのために何が生じる必要がありますか?
「クリーン・ランゲージ」の技術体系では、上記の他にも問いがあり、それぞれ問いがもたらす結果ごとに分類されている。また、入門書では、コミュニケーションの文脈づくりとしてのセッションスペースの作り方や、問いの発声法(スピードや言葉の繋ぎ方)などまで紹介されている。
「クリーン・ランゲージ」の全ての技術がレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークにピッタリとはまるかどうかの細かい検証まではしていないが、作品に対する問いの投げ方に対して、より多くを学ぶことができると感じている。#