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木九、25歳(自分語り小説) 18歳①

18歳①

高校卒業してすぐの僕は週末になると知り合いのバーでアルバイトをしていた。当時の僕は専門学校に通っていて日中は真面目に勉学に取り組んでいたが、休日や平日の夜はバイトを掛け持ちしひたすらに働いていた。よく周囲にはしんどくないのかだったり勉強は大丈夫等心配されていたが、それまで全くといって勉学に打ち込んでいなかったためなのか空っぽの頭にはすっと知識が流れ込んできており成績も悪くなかった。そして僕はバイトではあるが労働が楽しくて好きだった。

バイト先のバーによく来ていた女性がおり、まだお酒も飲めない僕を気に入りかわいがってくれていた。彼女は毎週金曜から土曜に日付が変わる頃によく来店し閉店時間まで店に滞在していた。年齢は当時の僕よりも一回り上と本人が話しており、日本人らしい中肉中背で年齢相応に落ち着きがあり、お酒が入り頬が赤らむととても色気があり、何よりいつも甘めの香水の香りが匂いフェチである僕にはたまらなく好ましく彼女のことが好きだった。

世間ではゴールデンウィークと呼ばれる時期に僕はバーでまだ慣れない手付きでシェーカーを振っていた。その日は客足が遠くいつものその時間帯は店内では彼女とマスターと三人だけだった。
「こいつ行ったことないみたいなんですよ。」知り合いであるマスターが彼女に話しているのが聞こえた。
「童貞ではないみたいだけど、風俗には行ったことがないらしくて、、、」マスターは続けて自身の若い頃は、、、と話し続けていたが、それはさておき僕はとても恥ずかしい気持ちになり二人から目線をそらした。なぜ彼女にそんなことを言ってしまったのだとマスターへ怒りを感じていた。

「それなら初めては私が相手してあげるからお店においでよ。」頬を赤らめてる彼女がこちらへ向いて僕に話しかけてくる。
どういうわけか困惑した僕が聞き返すと彼女の仕事はソープ嬢だったことが判明。驚きを隠せない僕に対しマスターが笑いながら「相手してもらえよ」と言っているのが小さく聞こえた。

「ねえ、どうするの」彼女はこちらをじっとみて問いかけてくる。まだ困惑したままの僕は、思考停止したままの頭を小さく揺すった。


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