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聞き書き甲子園卒業生にインタビュー!!(稲本さん・前編)

共存の森ネットワーク インターンの石垣です。現在インターン生として聞き書き甲子園(全国約80人の高校生が「森・川・海の名人」(林業家や漁師、伝統工芸士など)を訪ね、一対一でインタビューをする活動。今年度はオンラインで取材を実施)に関する様々な業務を行っています。卒業生へのインタビュー企画、最後となる3人目は6期生の稲本朱珠さんです。現在は京都府京丹後市のroots(京丹後市未来チャレンジ交流センター)で相談員としてお仕事をされています。お仕事を通した地域とのかかわりや聞き書き甲子園に参加した当時の名人とのエピソードなどについてインタビューしました。全2回でお届けします。

稲本朱珠(いなもと すず)
京都府京都市出身。高校1年生の時に第6回聞き書き甲子園に参加し、兵庫県の炭焼きの名人を取材。同志社大学社会学部卒業後に、イベント企画、バックオフィス業務、広報、人事などの仕事を経験し、現在はrootsの相談員として、高校生や地域の人たちがやってみたいことにチャレンジできるようにサポートを行っている。

石垣:こんにちは、rootsでの活動にとても興味があったので、今日はお話しいただけるのが楽しみです。よろしくお願いします。
稲本:よろしくお願いします!


〇rootsを作った目的

石垣:本日は、聞き書き甲子園の卒業生の方が現在どんな活動をしているかについて、お話を聞いていきたいと思います。
まず、稲本さんが相談員としてお仕事をされている「roots」とはどのような場所でしょうか?

稲本:この事業は、京丹後市が人材育成の事業の予算を利用して、何かしようとしたのが始まりなんですね。なぜなら、京丹後市には大学や専門学校など、(高校生にとっての)進学先がほぼなくて、高校を卒業すると9割以上の人が市外に出ていくという現状があります。

高校時代に地域との関わりを作ろうということで、rootsができる前に、「京丹後未来ラボ」というイベント形式で、地域の中で世代を超えて交流しようとする取り組みがありました。参加高校生や大人から新たなプロジェクトも生まれたという実績があったのですが、イベント形式だと蓄積が難しいということで新たに場所を作ることになりました。京丹後市にプロポーザルを提出するところから私も参加し、「未来にチャレンジできる人を育成する」ためには、自分自身がやってみたいことを何かしら形にしてみる、友達だけでなく大人と一緒に物事に取り組むという経験が必要なのではないかと思ったんです。

石垣:そうだったんですね。この場所にrootsという名前をつけたのはなぜでしょうか?

稲本:「京丹後未来チャレンジセンター」という名前が長いから、呼びやすい愛称をつけたいと思っていました。何か緊張や不安の中でチャレンジするときって、手助けになるのは自分のルーツなんじゃないかなと思ったのと、京丹後市というまち単位で見たときに、今行われているたくさんのプロジェクトが何年か経って振り返って、「あれが今の京丹後市のルーツだね」と言ってもらえるような活動をしたいなという2つの想いがあって、「roots」という名前にしました。

roots のコンセプト


〇印象的だった活動

石垣:高校生と地域の方とさまざまな企画を行われてきたと思うのですが、その中でも印象的だった活動はありますか?

稲本:(昨年の)11月に、rootsの1周年のイベントを廃校の小学校を使って開催しました。高校生2人がrootsで「やってみたい」と言ってくれたことから始まった企画で、探求の授業のテーマにも選んで頑張ってみたいと言ってくれました。そこで、何のために廃校を使うのか、廃校を使ってどんなことをして誰に喜んでほしいのかというコンセプト出しから行って、rootsのイベントでプレゼンテーションをしてもらいましたそのプレゼンテーションが素晴らしく、地域の人たちも応援しようという空気になって、実際に廃校を管理している教育委員会の方に交渉して、高校生でも来やすい駅近くの廃校を利用させてもらえることが決まりました

高校生自ら依頼文を書いて飲食店に出店依頼をしたり、公募で集まった300枚の写真で写真展をしたりして、1日のイベントだったのですが小さな子供たちからおじいちゃんおばあちゃんまで、600人以上の方が来てくださいました。高校生が「やってみたい」と言ってくれたことをきっかけに、いろいろな大人たちが協力して、結果的に地域の方にも喜んでいただくことができました。

Rainbow SchoolのInstagramには当日の様子や、他にも京丹後について魅力的な情報を発信しています!


稲本:面白かったのが、大人の自分たちも結構本気でやらないと出来あがらなかったことです。京丹後は、毎週末にイベントが行われるくらい、イベントが多い地域だったんですけど、コロナ禍でお祭りも花火大会も中止になることが多い中で、時期的にもなんとか開催することができました。ほんとにいい時間だったなあと今でも思います。

会場となった廃校での準備の様子


〇コミュニケーションをとる上で大切にしていること

石垣:高校生や地域の方とコミュニケーションをとる上で、稲本さんが大切にしていることや意識していることなどはありますか?

稲本:私たちはrootsのコンセプトの中で「居場所」という言葉を使っているんですけど、どういうときに居場所だと感じられるかなと考えると、自分のことを受け入れてもらえる場所かなと思うんです。例えば、頑張った状態でいたり、見栄を張った状態でしかいられへんところでは、居場所という感じはしないなあと思って。

そのためにrootsでは「主体的であること」「その人自身でいられること」の2つを大事にしています。コミュニケーションでは、その人の話をきちんと聞いて、まずは受け取ること。理解できるように質問をすることを大事にしていますね。主体的であるという部分では、やるかやらないかは必ず本人が決めること。やるって決めたらどうしたらできるかということを一緒に考えるし、やらないって決めたらそれはそれでいいね、と伝える。結果に対してどうこう言うのではなくて、姿勢自体が主体的であるかどうかというのを常に意識しています。その手助けとなるような声掛けやコミュニケーションはしていますね。そしてこのあり方は、高校生でも大人でもあまり変わらないです。


稲本さんのお話にもあった廃校を利用したイベントの様子を撮影した映像を見せていただいたのですが、たくさんの幅広い世代の方が各ブースを楽しんでいて、校舎に音楽や声が響き渡っているのがとても温かい気持ちになりました。他にもいろいろな企画があるので、ぜひrootsのSNSをご覧ください!


次回も引き続き、稲本さんのインタビュー記事をお届けします。聞き書き甲子園に出会ったきっかけ、稲本さんと名人のエピソードについてもお聞きしました。お楽しみに。

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。