角田将太郎第1話_cover

第1話 哲学と生活を近づけるひと

みなさん、「哲学」と聞いてなにをイメージしますか?
ソクラテスみたいなはるか昔の学者を思い浮かべる人もいれば、今ではもうすこし広く使われている単語でもあります。試しにamazonで「哲学」と検索すると「生き方の哲学」「死の哲学」「経済の哲学」に「植物の哲学」まで。

なんだか、人によってイメージが違いそう。今回はそんな一見すると難しい「哲学」を仕事にするNPO法人こども哲学・おとな哲学 アーダコーダの角田将太郎さんに取材をしました。

角田さんは東京大学卒業後、一般企業には就職せずに、アーダコーダへ。友人たちが会社勤めをするなか、現代の哲学者の道を歩み続けています。そんな24歳に「どうして哲学やってるの?」と、そのルーツを聞いてきました。答えは高校時代や子ども時代の意外なところに・・・。

第1話は「そもそも哲学ってなに?」「哲学するとどうなるの?」という気になるところから始まります。
(編集は工藤大貴、全3回でお送りします。)

※実はアーダコーダさんには聞き書き甲子園・夏の研修会に来て頂いて、全国の高校生80名を対象に「哲学対話」なるものを実施してもらいました。その様子はこちら!あわせてご覧ください。


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哲学は怖くない

NPO法人アーダコーダで哲学対話などを企画運営しています。もともと、大学で哲学を学んでいたんですけど、一般的に哲学って難しくて、堅苦しくて、何やってるのか分からない印象があるなぁというのを感じていたんです。

だけど、哲学は怖いものでもつまらないものでもないってことを伝えたくて。哲学と生活の距離が縮まればいいなと思っています。身近なものになればいいなって。

僕自身、高校生の時に「人に嫌われたくない」って気持ちが強かったこととか、野球部でキャッチャーやってたこととか、実はそういうこと(生活)が哲学だったり“問いを持って考え続ける思考スタイル”に繋がっているんですよ。

“わからない”は前進。

そもそも、アーダコーダが実施しているメイン事業の「哲学対話ってなに?」っていうところから話しますね。えっと、1番の軸になる部分は、正解がない問い、正解が一つとは限らない問いに対して、みんなで自由に考えようよってことです。

例えば学校で哲学対話の授業を行う場合、「普段の授業では取り上げないけど、みんなで考えて話し合いたいことってある?」というのを、最初に生徒に聞きます。つまり、生徒が一番考えたいことを考えるというのを一番大事に考えています。

そうすると、「なぜスカートを短くしてはいけないのか」とか「先生と生徒の恋は成立するのか」とか。問いが10個、20個と出てくるので、そこで皆で投票して哲学対話で考えたいテーマを一つ決めます。

それから対話を始める前に、3つ伝えていることがあって、これらのことはすごく大事にしています。まず1つ目は「人の話をよく聞こう」ということ。友達の話を聞くことによって、新しい考え方が入ってきて、自分の考えが一つ増えるよねということです。それに、より豊かに考えたい時は人の意見を聞いた方が良いですよね。

2つ目は「自分の意見を言おう」です。例えば、「友達付き合いはなんで面倒くさいのか」という問いが選ばれた時に、「面倒くさいじゃん」と言うと、周りの友達が「自分も面倒くさいと思われているのかも」って気になりますよね。なので、「自分の意見は素直に言おう。その意見をみんな受け止めてちゃんと聞こうね」と話しています。

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最後3つ目が「“分からない”を大事にする」ですね。哲学では、「分からない」っていうことを哲学的前進だと表現することがあります。ソクラテスも「分からないということが分かるようになる」ことが大事だと言っているんですね。

普段「分からない」って言うと、学校だとすごくネガティブなものとして捉えられるじゃないですか。国語の授業も理科や社会の授業でも、何か知識を身に付けることが良しとされているけど、哲学は逆方向を向いています。分からないことを増やしていくんです。

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哲学の効用

哲学を続けていると、一人一人が持っている当たり前は違うってことに気付けるんです。人間の価値観がどんどん多様になっていくなかで、共通言語みたいなものがちょっとずつ失われつつある。だから自分の当たり前を言葉にしていって、ちゃんと対話をしていけば、お互いを理解することができるんだと思います。

ですので、チームビルディングにも哲学対話はぴったりです。会社であれば部署内のコミュニケーションを良くしたいだとか、ビジョン・ミッションを社員それぞれの言葉で語れるようになってほしいとか。そういう依頼で哲学対話をやらせて頂くことも多いんです。

それから・・・あの、これは僕の話なんですけど、哲学の視点が活きていると感じるのは彼女と話している時なんです。哲学が習慣化されていって技術が高まると、恋愛がうまくいくと思っています。

(第2話に続きます)

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。