しゃべることよりも
私は人前でしゃべることがあまり得意ではない。
特に大勢の人の前に立つと緊張で頭が真っ白になり、しゃべるはずだった内容がすっぽり抜けてしまう。言いたかったことの半分も話すことができないといった残念な状況だ。(こういった自分の傾向に気付き、現在はある方法によって克服しつつあるのだが…)
中学1年生の時、担任の先生から「お前は歌がうまくなさそうだから、指揮者をやりなさい」と言われ、合唱コンクールの指揮者をやらされることになった。
指揮者としてクラスメイトの頑張っている姿を真正面で見ることができるのはなかなか面白かった。おそらくリーダーとしてみんなをまとめたり、先導すること自体は嫌いではなく、むしろ好きな方なのだと思う。
しかし合唱コンクール当日、全校生徒を前に合唱を披露する前に指揮者から一言挨拶をしなければいけないことをと本番直前に知った。全校生徒の前でマイクを通し、しゃべることへのプレッシャーの方が大きくなり、足が震え始めた。
いよいよ自分のクラスの発表の順番が来て、指揮台の上に上がった。全校生徒の視線が自分に集まる。冷や汗が額をつたい、足の震えも止まらない。
意を決し、「僕たち1年7組は…」と言おうとして
「僕たち、オクヤマツトムは…」
と言い間違えをしてしまった。
その瞬間、体育館中がドッと沸き、生徒も先生もみんな私の方を見て笑っていた。
遠くから「何人オクヤマがいるんだよ!」というヤジが聞こえ、私は恥ずかしさのあまりその後の演奏のことは全く覚えていない。
結果、銀賞(学年で2位)という成績を収めたものの、他のクラスの知らないやつからもいじられるようになった。その後も3年間指揮者は続けることになったが、本番に挨拶には必ずカンペを用意することにした。
元々とても滑舌が悪いこともあり、直接しゃべるよりもこうして文章にした方が(訂正も効くので)自分には向いていると思い、拙いながらも文章を書くことをはじめてみようと思う。
出来るだけ楽しみながら。