罪の名前
罪の名前 著:木原音瀬 講談社
なんてものを読んだんだ。いい意味で。
これは個人的には好きだけど、人には勧められない本第一位かもしれない。
後味は良くない。サイコパスと呼ばれるだろう人たちの物語が4つ。
悪意のある嘘を悪意と思わずに吐き、自分にとって都合の良い方に塗り替える人。自分の尊厳のために嘘をつき、その嘘は自分の中で本当のことになっている人。自分の欲望を達成するために一番大切な人を犠牲にする人。とうてい理解し難い性癖の持ち主。
自己中心的な考えに偏っている人たちの物語、かもしれない。
とにかく、食事前に読むのはやめておいたほうがいい。
嘘をつく、というのは人間誰しもすることで、私自身も、小さい頃からたくさんの嘘を重ねてきた。たいていは自分を守るため、見栄のため。もちろん、他人のためにつく嘘もあったが、それも自分がいい子だと思われるためだったのかもしれない。
きっと、ここに登場する嘘をつく人たちと私を隔てる壁なんて、金魚掬いのポイみたいなものなんだろうなと思う。ただ私は途中で、自分の嘘が滑稽でしかなく、みんなも嘘だと気づいているんだな、ということに気づいたため、今ではつまらない嘘をつく癖はほぼなくなったと思う。
ミーナのようにならなくて、よかったと心から思う。
虫食いに関しては、一番気持ち悪い題材だなと思うが、好きな人の体を…というものに関しては否定しきれない部分もあるかもしれないと思った。例えば、指や耳、舌を舐めるという行為自体は、好意を持つ同士であれば行っても不自然ではないことだと思うので。が、虫食いの主人公に関しては状況や関係性が特殊すぎるので受け入れ難くはあるが。
と、書きながらわかった。そうか、日向くんは口の中が性感帯なのか。相手を好きとか嫌いとかではなく、一種の道具みたいなものか。そのことを誰にも漏らさず、受け入れてくれるのは隼人くんしかいないからか。序盤で口の中に入れているものがものすごいものだから、何かもう、そういうのを考えるまもなく読みきってしまった。
個人的には、罪と罰の松雪くんが一番厄介で気味の悪い人だなと思う。世にも奇妙な物語とか、短編サスペンス映画の題材にできそうな。
映像がないのに、松雪くんの笑顔や、無表情で携帯に電話をかけ続ける様子などが思い描かれる。純粋な恐怖。
これ面白いよ!読んで!とは言えないけど、ゾワっとしたい人にはこっそり紹介したい本、かな。
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