言葉、酸素、プール
短歌研究新人賞に応募した30くび。
吸って吐いてプールに沈む空気より軽いモノは陸においてきて
言葉より酸素が大事(だって水死体では謳えないから)
ビビビ!電気分解生きやすくする力、息をしてなきゃいけないの。
野生の詩人を水中に沈めて浮きあがる泡に意味なんてない
水圧に入る前はシャワーを浴びて外圧を落としてください
口に水が入っても言葉や絵画は吐き出させてくれない 助けて
乱反射 水面から提案 溶け合う/渦巻く/潜る/惹かれ合う
水中に言葉はなくて水泡が意味を孕んで輝くだけで
ペンギンとして泳ぎ出したなら、砂漠に生きててもボクはペンギン
人工の海は水平線も対岸もヴィーナスみたく曝け出す
みんなって言葉より前、覚えてる?水中世界が出来たての頃
うらら 飲み込んだ水 境目が変わる うらら 「ここ」って、指さしてみる
泳げたら河童、泳げなかったら金槌、どうしても人じゃいけない
ふし浮きがコンパスみたく回り出し止まったとこを北と名付ける
自転車が埋まった川辺 元は墓場のプール 宝探しの石
確かな泡を作りたくて肺胞にいっぱいの水が注がれていく
ざざーん 泣きたいの? ざざーん おしっこが溶けてるかもしれない水に?
プールに落ちる一滴でしかないが溶け合ってみればデブはデブのまま
ぶくぶく 思うように言葉にならないなら ここもプールなのかも
水底に立ってみればグーグルマップのピン差し目線の水平線
水溶性自分自身 コケ色の水を通して意味を見透かして
頼りない水かきがかわいい 迷子センターから言葉が生まれていく
『ニシンが歴史を変えるのだ』誰かのマジックワードが刻まれた底
同時多発のアメンボみたくボクがいて今日もジグザグ水面に揺れる
排水溝の冷たさが肉体は養殖なのだと教えてくれる
水が水を呼ぶ 触ったら混ざっちゃうから色づこう 混ざっても綺麗
背中から水面に落ちる転写された水面は背中で荒れる
つま先を濡らす柔らかな波が指をイソギンチャクと誤解していた
ナイトプールに浮かぶライトは水底に消えた言葉を探知するもの
雨宮あみな『言葉、酸素、プール』
「夏はプールだ!スパリゾートハワイアンズ!」