カンヌライオンズ・チタニウムグランプリの歴史(5)
ベスト・バイ 「Twelpforce」
2010年は、アメリカの大手家電量販店ベスト・バイの「Twelpforce」がチタニウムグランプリを受賞した。
「Twelpforce」とは「Twitter」「Help」「Force」を組み合わせた造語で、「Twitterを使ったサポート部隊」という意味である。
企画内容はその名の通り、家電に関する質問をTwitterで「@twelpforce」宛に投稿すると、ベスト・バイの従業員の誰かが24時間いつでも即時に回答してくれるというカスタマーサポート・サービスだ。
アマゾンやコストコなどの新たな競合にシェアを奪われる中、ベスト・バイはこのようなサービスを立ち上げ、それをテレビCMで告知することで、同社の店舗には豊富な知識をもった従業員が存在するという強みを知らしめた。
これを企画したのはCrispin Porter + Bogusky。
2007年のバーガーキング「Xbox Games Innovative Campaign」に続いて、2度目のチタニウムグランプリ受賞となった。
「広告のコンテンツ化」という潮流
この事例は規模としては決して大きなものではなかった。
2009年のサービス開始から2013年のサービス終了までに、@twelpforceから投稿されたツイートは約6万5000件。フォロワー数は2010年の受賞の時点で約2万7000にとどまっていたようだ。
つまり、この事例の評価ポイントは規模ではない。
では何だったかというと、時代を切り拓くような先進性である。
それはひとつには、当時、世の中に浸透しはじめたばかりであったソーシャルメディアというもののマーケティング・コミュニケーションへの活用法をいち早く示したという先進性だ。
ベスト・バイは、Twelpforceを立ち上げることによって競合優位性を広く伝えるとともに、顧客との関係構築をおこなうプラットフォームを作り出した。
そしてもうひとつ、より重要なのが「広告のコンテンツ化」という広告産業における2000年代の潮流を一歩進展させた点にあったのではないかと思う。
「BMW FILMS」以降の流れをふり返ってみると、「BMW FILMS」は映画、バーガーキングの「Xbox Games Innovative Campaign」はゲームというエンターテイメント・コンテンツであり、「UNIQLOCK」はブログの装飾あるいは時計としての機能をもったユーティリティ・コンテンツというコンテンツ形態をとっていた。
これに対し「Twelpforce」は、カスタマーサポートというサービスであった。これはサービス・コンテンツとでもいうべきコンテンツ形態である。
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