上の世代がわからない感覚を大事にする。新しいやり方を見つける。運楽家 犬飼博士のつくり方。
「企画でメシを食っていく2019」も4回目。気づけば季節は梅雨。朝から大雨の降るみなとみらいです。
そんな中、講義前には企画生の有志が集まり、お互いの課題を講評し合う、「ビフォア企画メシ」も発足。講義前から会場は熱気にあふれています。
今回のテーマは「スポーツの企画」
講師は、運楽屋の犬飼博士さんをお迎えしました。
聞き馴染みのない「運楽家」という肩書きですが、犬飼さん本人がつくった言葉で、「遊ぶの専門家」という意味だそうです。
講義前半では、犬飼さんの子供時代からさかのぼり、ゲームやスポーツとの出会いや、企画を実行する際に心得ておくべきポイントなど、たっぷりとお話をお伺いしました。
はじめはコミケでの本の制作から
大阪万博の年(昭和45年)に名古屋で生まれた犬飼さん。
幼少期から、映画プロデューサージョージ・ルーカスや監督スティーブン・スピルバーグに憧れ、映画に興味を持ちはじめます。小学生の頃、近所で大学生がコスプレをして遊んでいることに興味を持った犬飼さんは、彼らに付いていき、コミケに参加することになります。
その場で同人誌の制作者に遠慮なく感想をぶつけ、犬飼さん自身もコミケに本を出そうと思うようになります。
周りの大人に協力してもらいながら、制作した5冊全てを売りきります。振り返れば、このコミケでの本の制作が、はじめての企画だったと仰っていました。
説明する・巻き込む・見てもらう
高校時代では、学校生活よりも、専らデパートの屋上等で行われる東映の戦隊モノのアトラクションのアルバイトに熱中します。
10人と少人数ではありますが、音響・台本・演出・芝居・クライアントとのやりとり・企画など一つのチームとなってイベントをつくり上げていきます。
イベントを仕切るキャップと呼ばれるプロフェッショナルに出会い、「仲間に説明する・巻き込む、鑑賞者に見てもらう」イベント制作の経験が今の犬飼さんに通じているそうです。
自分にしかできないコンテンツづくり
高校卒業時、映画監督を志望していた犬飼さんは、高校の先輩と映画を製作します。お客さんに作品が好評だったこともあり、映画学校に進学し、自主制作を続けます。卒業後は、「自分にしかできない映画」を突き詰め、映画制作を続けます。
・若い感覚を制作に反映する。
(上の世代にはわからない・知らないような話題を扱うこと)
・新しいやり方で映画を制作する。
(当時日本映画で行わていなかった、デジタル編集での音響制作等を行うこと)
以上の二点に注意しながら、犬飼さん独自の作品をつくっていたそうです。
ゲームセンターでレバーを握ることは、映像をつくる行為
映画監督の山本政志さんの元で働いていた犬飼さんでしたが、プレイステーションが発売され、ボタンを押すと3DCGがリアルタイム生成されるするテレビゲームに心を奪われ始めます。
「犬飼が得意なことをやれ」という山本監督の言葉をきっかけに、子どものころから気になっていたゲームの世界に飛び込むことを決心します。
毎日、会社で8時間ゲームをつくり、ゲームセンターで8時間ゲームをプレーする毎日。そのゲーム漬けの毎日の中で、対戦ゲームは誰と対戦するかが大事であると気づくようになります。(たとえば、知らない人と対戦するときは初手から相手を狙いにいくが、一方で仲の良い友達と対戦するときは穏やかにはじまる)
ゲームプレイ中の動画を撮影しまわりに届けることもしていたそうです。
今で言う「ゲーム実況動画」に近いもので、この時からゲームをプレイすることの価値に気づいていたというのは、驚きでした。
人類が産業革命以後、それまでは移動手段だった車をモータースポーツとして認識した文脈と同じように、コンピューターの発明以後、コンピューターゲームで遊ぶならeスポーツとして認識してもいいのではないかと、犬飼さんは次第に「コンピューターゲームをすることはスポーツ同じように社会的に価値がある」と思うようになります。
コンピューターゲームは従来のスポーツ同様プレイ自体にも価値がある。そんな思いから、自分のことを「ゲームクリエーター」ではなく「ゲームプレイヤー」とも呼んでいる犬飼さん。
以後、eスポーツに目を向け、世界大会に日本代表を送り込むため、アメリカ・韓国などに行き交渉を行います。国内予選大会の運営、大会の様子を発信したりなどeスポーツを広めていったそうです。
独創ではなく共創
自分の理想の世の中になったらいいなと思い実現するために、企画書のように動画をつくり続けているそうです。
犬飼さんは運動会について、「きっかけをつくり、周りを巻き込み、みんなでスポーツをリアライズした時の、手応えがすごい。」と語ります。これは何回やっても面白いそうで、現在も、一緒に作る仲間も募集しているようです。
過去を振り返りながら未来を予想する
漫画・映像・ゲーム・スポーツ、領域の企画を経験をしてきた犬飼さん。企画を実行する時に2つの線を大切にしているそうです。
・できるだけ遠い過去のまで調べる。例えば人間・人類・宇宙等の歴史。
・過去と今を結ぶと、未来が予想できるようになる。あらゆる手段を使いできるだけ遠くの未来の可能性を並べる、その中から自分の希望を選んで点を打つ。
この未来の点から現在の点を結ぶと線ができ、過去にも未来にもベクトルが決まる。
この線をできるだけ伸ばすこと、つまり過去をもう一度しらべる、未来予測をすることをくり返すことで、企画の精度があがってくる。
同時にこの線を頼りにバックキャスティングが可能になり、次の行動が決まってくる。ブレにくいゴールやKGI、マイルストーンやKPIが見えてきたらそれこそが企画の骨子になる。
こうしたことを経て企画を着地させるそうです。
「なるほど!」と企画生一同、メモを走らせます。
やったらええがな
講義後半は、課題講評。
今回の課題は…
①「あなたが『企画でメシを食っていく』が終わったらやりたいこと」を説明する15秒のビデオを自撮りで撮ってもらいます。それをみんなで見ます。
②そのビデオをつくるためにつくった資料も提出してください。
というもの。
上から目線ではなく、企画生と同じ立場に立って、一つひとつじっくりと企画生に向き合いたいということで、机を片付けて、椅子を持ち出し、肩の力を抜いて参加できるような講義を提案していただきました。緊張のほぐれてきた企画生も、個性あふれる動画に対して、大きな笑いで包まれます。
企画生が提出した課題は「地元に貢献したい」「スポーツのイベントを開催したい」「代表作をつくりたい」「戦友を募集している」などなど。どれも企画生の人となりが滲み出る動画でした。
犬飼さんは言い放ってくださいます。「やったらええがな」と。
「犬飼さんにとって企画とは?」モデレーターの阿部さんが犬飼さんに尋ねます。
企画とはまず「衝動」。人間・人類・宇宙の中にいて何を衝動するか。衝動に素直になり、「やったらええがな。」のように、活動すること、つくり続けることが大事。企画書やプレゼンはそのときどきのコミュケーションの結果、手段にすぎない。やることが前提にない企画は、小説などと言ってあげたほうが読む人にとって優しい思う。
犬飼さんの後押しは、企画生一人ひとりに届いていた様子。
気づけば30分以上も講義を延長していましたが、後半もあっという間に終わりました。犬飼さん、残りの企画メシも走り続けます…!
次回は、音楽の企画。西寺郷太さんをお迎えします。お楽しみに!
ライター・サムネイルデザイン:小田周介
写真:友田和俊
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