企画と私vol.2 「『失敗』が、企画に愛を与える。」松井 貴彦
豊かな大地からおいしい作物が生まれるように、豊かな人生からおもしろい企画も生まれるはず。そんな仮説のもと企画人が企画人たる所以を、ワークだけでなくライフ面から紐解いていく連載「企画と私」。
第2回は、我らが北海道キカクラブの編集長・松井貴彦さんです。電通北海道を退社し、1年足らずで再び入社するという異色の(トホホな?)経歴を持つ松井さん。キカクラブの立ち上げにも、松井さんの人生観に欠かせない「失敗」が大きくかかわっているよう。詳しく話を聞いてみました!
いつも「失敗」で気づく。「企画」の大切さだってそう。
―まずは松井さんの生い立ちが、どのような感じだったか聞いてもいいでしょうか?
松井さん:はい。まず幼少期は、叔父がゲームクリエイターをやっていて、僕も憧れてゲームを作る人になりたいと思ってました。それで大学も情報エレクトロニクス学科に入ったんですけど、プログラミングとかあんまり得意じゃなくて。まあ、学部選びを失敗したってことなんですけどね。笑 でも誰かを楽しませたいという根底の気持ちは変わらなかったので、人の気持ちを動かすことで世の中を動かせる広告がやりたくて、電通北海道に入りました。
―電通北海道では、ガンガン人を楽しませられましたか?
松井さん:それがですね、僕の会社員ライフは、自己紹介の失敗から始まりました。研修のはじめに「自分について一言で表すと?」というお題があって。名前が松井貴彦(マツイタカヒコ)なので「名前の中にはイカとタコが入ってます」って言ったら微妙な空気になって。笑
―なんか想像できます。笑 そして、最近もまたひとつ失敗をされましたね?
松井さん:ええ、某IT企業に転職したんですが、1年で戻ってきちゃいました。笑 戻ってきた時、全社員がいる前で「転職に失敗しました」って挨拶したことの方が、「イカとタコ」よりウケてたかも。笑 でも、そんな僕を笑って迎えてくれた会社って懐が深いなと思いました。
―そもそも、なぜ転職を?
松井さん:転職した時は、憧れや新しいことができそうだと思って挑戦したんですけど、だんだん違和感が大きくなってきて。転職先でも広告には携わってたんですが、ROIとかROASとか、広告を効率でしか捉えていない部分があって。効率ももちろん大事なんですが、おもしろい「企画」とか「クリエーティブ」こそが結果を大きく左右するんじゃないのか、という実感が僕にはあって。でも転職先ではそんな感覚の人が少なくとも僕の周りにはいなかったんですよね。その時に改めて、電通北海道の強みは「企画」だったし、僕も「企画」を大事にしたいんだなって気づきました。
―そんな転職の失敗から、企画への愛、"キカクラブ"が芽生えたわけですね
松井さん:そういうことですね。笑
―ちなみに、松井さんが「企画」で世の中を動かした実感を持った仕事というのは具体的には?
松井さん:僕が営業をやっていた15年前くらいに、先輩の下で北海道米「ゆめぴりか」のブランディングのお手伝いをしていました。アートディレクターの佐藤卓さん・映像監督の中島信也さんという二人の巨匠クリエイターの「企画」によって、誰も知らなかったお米が全国的に有名になっていく軌跡を目の当たりにしました。その経験が、僕の中で大きかったですね。
転職の「失敗」から生まれたキカクラブ。編集長としての想いとは?
―改めて、「北海道キカクラブ」立ち上げの経緯をお伺いできればと。
松井さん:転職で1年会社を離れていた僕と、育休で同じく1年会社を離れていた瀨川修平さん(編集部メンバー)とで、会社を客観的に見て、やった方がいいと思ったことをいくつか提言させてもらいました。その中の「自社メディアを作って会社のブランディングをする」という案が、役員の想いとも合致して進めることになりました。僕もそうですが、瀨川さんはじめ編集部メンバーも、この会社自体も、みんな「企画」をすごく大事にしていると思ったので、「企画」を真ん中に据えたコンセプトにしたいね、ってなって、キカクラブです。
―会社を客観的に見たときに、どんな思いがあったのでしょう?
松井さん:転職前は正直、会社への不満がいろいろあったんですけど、戻ってくるからにはその不満を言ってるだけじゃなく、自分の手で変えるための行動を起したいなと。そうじゃなきゃ戻ってくる意味がないと思ったので。不満だったことのひとつが、特に若手が楽しみながら主体的に取り組める仕事が少ないことだと思っていたので、キカクラブでは、若い人たちに楽しんでやってほしいし、自分がやった仕事が誰かを喜ばせた、という実感を一つでも多く作りたいです。
―編集長として始動してみて、どうですか?
松井さん:僕なんかが一人でできることなんてたかが知れてるんですけど、ステキなメンバーが集まってくれたので、自分だけじゃできないことをやれてるなって思います。いい仲間がいるのも、この会社の強みだなって改めて思いました。あとは、みんなが楽しんでくれること、そして、会社にとって、ブランディングや社員のモチベーションアップに「キカクラブがあってよかった」と思ってもらえるものにしていきたいですね。
あなたにとって、「企画」とは?ー「ジャンプ!」
―では最後に、あなたにとって「企画」とは?
松井さん:企画って、結果をグッと引き上げる、ジャンプさせるものだと思います。企画次第で、その仕事が5メートル先に行けるのか、10メートルなのか、100メートルなのかが変わってくる。僕の場合は高く飛ぶためにグッとしゃがんだり、ジャンプしたあとに穴に落ちたりもしてますけど。笑
そういう意味でキカクラブは、会社をジャンプさせるものになりたいですね。ちなみに、キカクラブの裏テーマとして、『週刊少年ジャンプ』のように企画・制作・継続/終了を鬼のスピードでPDCAを回していく、というのがあって。そういう意味でも、キカクラブはジャンプです。
―見栄も失敗も、成長の糧になる。そんな松井編集長とともに挑戦と失敗を繰り返しながら成長していくキカクラブも、松井さん以上に愛されていくことを期待したい。
(ライター:寺岡 真由美)