サンゴ礁サイエンスキャンプ2024
2024年8月に9回目となる「サンゴ礁サイエンスキャンプin喜界島」を開催しました。去年は台風により一部プログラムを開催することができませんでしたが、今年はジュニアコース・アドバンスドコース共に全日程を無事に終えることができました。全国から集まった小中高生とさまざまな分野の専門家とのサイエンスキャンプの様子をお届けします!
ジュニアコース(8月2日〜8月6日)
ジュニアコースは小学校3年生〜高校生までの参加者が集まり5つの班に分かれて研究実習を行いました。
各班は、メンターである研究者とメンター補の大学生や大学院生、そして子ども研究員の皆さんで構成されます。
ここでは各班のメンター補からのレポートを紹介します。
環境班「みためだけではわからない!? サンゴの健康状態」
メンター:樋口 富彦博士(東京大学大気海洋研究所)
メンター補:竹内 大晟(東京大学)、楊 曜誠(I-Shou University)
環境班ではサンゴの白化について研究を行いました。
初日にレクリエーションで仲を深めて、二日目にハワイビーチでサンゴを観察しました。
海ではサンゴがどのような場所にいるかを考えた後、三日目に実験で使うエダコモンサンゴを採取し研究所に持ち帰りました。健康なサンゴと白化したサンゴにどのような違いがあるのかを確かめるためにサンゴを光の当たる場所や暗闇に置き、それぞれの溶存酸素濃度を調べました。褐虫藻の数や光合成収率も測定して多面的に白化について考察しました。
他の班と比べて計算が多く子供たちは大変だったと思いますが、他の班にも負けない仲の良さで協力して研究結果をまとめることができました。
みんなの元気さと明るさで最終的に団結して発表も行うことができました。
みんな、仲良くしてくれてありがとう!!
うみぼうず班「ハワイビーチのリーフビルダーは誰だ!~ウミボウズはんのみんなの研究~」
メンター:山崎 敦子博士(名古屋大学)
メンター補:Carlie Sommers(横浜国立大学)、倪 嘉(I-Shou University)
This summer, the Umibouzu team, led by mentor Atsuko Yamazaki and mentor assistant Carlie Sommers, dove into the world of coral reef science. Their mission: to investigate the role of different coral species in reef-building at Hawaii Beach.
The team’s research focused on measuring the calcification potential of key coral species, including Acropora, Porites, and soft corals. Students snorkeled along transect lines to measure the size and volume of coral colonies, gathering samples to later analyze in the lab. By measuring the density of coral skeletons, the group was able to estimate how much calcium carbonate each coral type produced, providing insight into their role in reef formation.
Through this hands-on experience, students gained a deeper understanding of how coral ecosystems develop and the importance of biodiversity in maintaining these structures. In addition to the scientific work, participants engaged in a lively exchange of ideas, navigating the challenges of data collection and analysis together.
It was a lot of fun sharing the world of coral reef sciences with such bright young minds. We learned so much from each other, and it was inspiring to see everyone working together to overcome obstacles.
This immersive project not only equipped participants with new skills in marine science but also fostered cross-cultural learning, as students and mentors bonded over their shared passion for the ocean.
生態学班「生態形」
メンター: Samuel Kahng博士(琉球大学)、水山 克博士(名桜大学)
メンター補:内山 遼平(北海道大学)
私たちは、喜界島の潮間帯に住む無脊椎動物たちの形質的特徴におけるトレードオフの関係と、生物たちの生存戦略を調べました。
今回、無脊椎動物の代表的な生物としてカニの形質を調べました。早町港と池治ビーチで採取した複数種類のカニからハサミ、脚、胴体、遊泳脚の長さと幅を測定しました。調査と測定の結果、「速く動けて泳げるが、防御力が低いカニ」や「防御力が高いが、足が遅いカニ」など、それぞれのカニの種類によって、生存のための強みと弱みがあることが明らかになりました。一方で今回の調査と測定では、生息地や体の厚み、色の特徴など、彼らの生存戦略に関わっていそうだが、まだわからない項目についても明らかになりました。今後の研究が楽しみです!
化石班「喜界島のサンゴの今と昔」
メンター: 佐野 亘博士(岡山大学)、Evan James Gowan(熊本大学)
メンター補:蕭 渝玟(I-Shou University)
On Kikaijima, the area is filled with coral fossils. We went to the coast to observe and measure the elevation of the terrain. Each person was required to train on how to use the instruments for height measurement, with the mentor assisting and ensuring that everyone was doing it correctly. We then collected coral fossils, which we observed to be around a thousand years old, and took them back for examination under an electron microscope. Throughout this process, the children participated with great enthusiasm, and their work ethic was truly commendable.
When it came to presenting the results on posters, everyone proposed their own ideas, and each child's suggestions were respected by the group. There was no insistence on pushing personal opinions, which is a great attitude to learn from.
こもの班「サンゴにくらす生き物たち」
メンター: 露木 葵唯博士(琉球大学)、北乃坊 誠也博士(鹿児島大学)
メンター補:栗原 歩佳(北海道大学)
私たち「こもの班」は、喜界島の海に住む小さな無脊椎動物について研究しました。世界にいる生物のうち、名前がついている動物はほんの一握りしかなく、特に無脊椎動物には様々な多様性があるそうです。今回の研究では、喜界島の生きているサンゴと死んでいるサンゴでは、生息している生物にどのような違いがあるのか調べました。
生物を採取するために、1日目はハワイビーチ、2日目は花良治に行きました。サンゴとサンゴの隙間をよく観察したり、死んだサンゴをひっくり返してみたり、みなさん興味津々といった様子で生物を探していました。発見した生物は、研究所に持ち帰り、種同定を行いました。様々な本を駆使し、顕微鏡なども活用しながら、発見した生物の名前を一つ一つ確認していきました。
あまりにも小さく、見つけづらい生物は、「洗い出し」という手法を使って採取・観察しました。生物がついているだろう岩やサンゴをバケツの中で洗い、その水をネットで濾すといろいろな生物を観察することができます。成果発表会では、この手法について、段ボールで作ったバケツやネットで再現して紹介してくれました。
ポスターにはわかったことを隙間なく書き込み、考察についても色々な意見が出て、収まりきらなかったスケッチもたくさんあるくらい、充実した5日間でした。
アドバンスドコース(8月20日~8月26日)
サイエンスキャンプの後半、アドバンスドコースでは様々なテーマについてサンゴに強い関心をもった中学生・高校生による研究が行われました。このアドバンスドコースではテーマの設定からどのような方法でサンプリングや解析を行うのかなど参加者が主体となって考え、自分自身でフィールドに足を運び、実際にサンプリングを行い、様々な機器や方法を用いて結果を集めました。
報告:メンター補 知念 三奈(長崎大学)
中学3年生から高校2年生が、アドバンスドコースに参加をしてくれました。研究テーマは、アオサンゴの年輪と成長、礁原の広さと要因、サンゴの白化などがありました。中には、サンゴだけでなく、喜界島の湧水やタカラガイ、マイクロプラスティックについて調べる方もおり、それぞれ独自のテーマを持ちながら、約1週間という短期間で研究に携わりました。
限られた期間の中でテーマ決めから実験・分析、そして発表まで行うことは非常に難しく、大変だったと思います。しかし、メンターの先生方をはじめ大学生のサポートの元、自分達の研究をより良いものにすることが出来たのではないかと思います。
私は今回、大学生サポート役として参加をしたのですが、参加した中学生・高校生の成長ぶりに感銘を受けました。自分の興味関心を学問的な側面からさらに探求し、新たな発見を見つけていく皆の姿はとても輝いていました。このキャンプを通して、納得がいく結果を得られた子、改善点を見つけられた子とそれぞれ多くの学びを得たと思います。始めは「研究は難しい」「できる気がしない」と弱音を吐いていた子もいましたが、最後まで研究をやり遂げ、成果発表まで行うことができました。このサイエンスキャンプの参加を通して、学び・試行錯誤をした経験が、参加者の皆さんの日常において少しでも役に立てればと思います。そして、これからもさらなる努力を重ね、常に新しい知識を蓄えていき、活躍を期待しています。
アドバンスドコース メンター
松田 博貴博士(熊本大学)
佐々木 圭一博士(金沢学院大学)
Samuel Kahng博士(琉球大学)
田中 健太郎博士(東京都市大学)
渡邊 剛(総合地球環境学研究所/北海道大学/喜界島サンゴ礁科学研究所)
山崎 敦子(名古屋大学/喜界島サンゴ礁科学研究所)
駒越 太郎(喜界島サンゴ礁科学研究所)
アドバンスドコースメンター補
内山 遼平(北海道大学)
栗原 歩佳(北海道大学)
知念 三奈(長崎大学)
日本サンゴ礁学会にて研究成果を発表!
今回のサイエンスキャンプではたくさんの発見がありました。研究成果は2024年11月に開催される日本サンゴ礁学会で発表します。この夏、喜界島に集まった子ども研究員の皆さんから、まだまだ目が離せません。
最後に参加者および保護者の皆様、そして研究指導や講義を行なっていただいた研究者のみなさま、喜界町の皆様に改めて御礼を申し上げます。
主催:喜界島サンゴ礁科学研究所
後援:文部科学省、鹿児島県、鹿児島県教育委員会、喜界町、喜界町教育委員会
サンゴ礁サイエンスキャンプは、KIKAI college サンゴ塾ののプログラムの一つです。通年でサンゴ礁科学を学ぶサンゴ塾についてはホームページをご覧ください。
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