サンゴ礁サイエンスキャンプ2022
2022年8月5日から「サンゴ礁サイエンスキャンプin喜界島」を開催しました。7回目となる今年は、新型コロナウイルス感染症ガイドラインを遵守し、参加者の皆様のご協力のもと、無事に終えることができました。全国から集まった小中高校生37名とさまざまな分野の専門家との11日間のサイエンスキャンプの様子をお届けします!
ジュニアコース(8月5日〜8月9日)
ジュニアコースは小学校3年生〜高校生までの参加者が集まり5つの班に分かれて研究実習を行いました。
各班は、メンターである研究者とメンター補の大学生や大学院生、そして子ども研究員の皆さんで構成されます。
ここでは各班のメンター補からのレポートを紹介します。
おさかな班「喜界島の魚の年齢調査隊」
メンター:田中健太郎博士(東京大学大気海洋研究所)
メンター補:坂直樹(横浜国立大学)
報告:メンター補 坂直樹
おさかな班では喜界島の海水魚の解体をし、取れた耳石と呼ばれる小さな骨や背骨、ヒレや水晶体を使って、それらに刻まれている年輪を顕微鏡で観察して魚の年齢を記録しました。海洋実習でハワイビーチの生き物を観察したときから、小野津の海岸で魚を釣ったとき、ウツボのトラップを仕掛けたとき、顕微鏡での観察や発表ポスター制作に至るまで、子供たちは常に興味津々でした。特にフィールドに出かけた時の顔は生き生きしていて、初め
て見るものに熱中している様子でした。
メンターの田中先生も常に子供たちの問いかけに答え、お互いに良い刺激を与えあっていたと思います。小野津の海岸で釣った魚はメジナやクロモンガラ、オジサンなど多種多様で、地元の漁師さんからいただいた 120cmのロウニンアジは圧巻でした。さらに仕掛けたウツボトラップで見事ウツボを1匹捉えることが出来、喜界島の海の生き物の豊富さを肌で感じました。その後の解体作業では少し生々しい光景や匂いにも臆することなく子供たちは楽しく活動していました。最後に得られた結果は多く、発表ポスターも内容が充実したものになったと思います。子供達にはこれからも好奇心を大事にしていってほしいと思います。
Ecology班「多種多様な体と生物の生存戦略」
メンター:Samuel Kahng博士(ハワイ大学/北海道大学)
メンター補:林川真也(University College London)
報告:メンター補 林川真也
私たちは、ハワイビーチに生息する3種類のカニの形質を調べました。採取したカニからハサミ、脚、胴体の測定を行い、各種類の得意分野を考察しました。発達した身体的特徴に準ずる生存戦略を皆で考え、特徴同士が等価交換で成り合っている、トレードオフの関係に迫りました。
参加者は全員初日から熱心に研究し、お互いに躊躇なく接することで自然と一体感が生まれれいたと思います。その積極性と仲の良さから、発表会では研究の面白さが存分に伝わる形としてキャンプを終えることができました。
環境班「サンゴの白化現象調査隊」
メンター:樋口富彦博士(東京大学大気海洋研究所)
メンター補:岸拓未(北海道大学)
報告:メンター補 岸拓未
私たち環境班は「サンゴとサンゴの中に住んでいる褐虫藻について調べてみよう」というテーマでサンゴの白化について研究を行いました。
まず実際にサンゴ礁を見るためにハワイビーチに行きました。海ではサンゴがどのような場所にいるか調べた後、実験で使うエダコモンサンゴを採取し研究所に持ち帰りました。
研究所では光合成・呼吸量を計算するために、健康なサンゴと白化したサンゴが入った海水を光の当たる場所や暗闇に置き、それぞれの溶存酸素濃度を調べました。また褐虫藻の量も数え、褐虫藻と光合成や呼吸にどのような関係があるか考えました。
他の班と比べて計算が多く子供たちは大変だったと思いますが、お互い助け合いながら立ち向かっていました。またポスターを作成する時にはそれぞれの個性を生かしながら素晴らしいポスターに仕上げていて、子供たちの新たな一面を知ることができました。最終日にはみんなで素晴らしい発表を行いました。
うみぼうず班「うみぼうず生き方調査隊」
メンター:駒越太郎博士(喜界島サンゴ礁科学研究所)
メンター補:浅利凛(東海大学)
報告:メンター補 浅利凛
サンゴ研の駒越太郎先生指導のもと「ハマサンゴの年輪を観察してどのように生きてきたのかを調べよう・ハマサンゴがどうして長生きなのかを考えよう」をテーマにハマサンゴの研究に取り組みました。
サイエンスキャンプ中には実際に海に赴き、生きたハマサンゴや化石のハマサンゴを採取し、観察しました。ハマサンゴを見分ける作業に難しさを感じているようでしたが、だんだんとハマサンゴを素早く見分けられるようになり、自分たちでも成長を感じながら外での活動に意欲的な姿を見せてくれました。採取したハマサンゴは顕微鏡、マイクロスコープ、X線CT等の方法を使い調査し、各々が得意な分野で活躍し順調にハマサンゴの測定を行うことができました。観察したハマサンゴと図鑑に書いている内容を見比べ次々とハマサンゴの種類を見分けていく姿やハマサンゴの測定をしている子供たちの姿は大人顔負けでした!ポスターを作成する際の考察の部分ではテーマが壮大だったこともあり、それぞれの測定結果を結び付けて考えることに苦戦している様子でしたが、皆で最後まで考え抜き無事ポスターにまとめることができました。
貝殻班「砕いて見つけろ!最強の貝殻」
メンター:浅沼尚博士(東京大学大気海洋研究所)
メンター補:内山遼平(北海道大学)
報告:メンター補 内山遼平
貝殻班では「最強の貝殻を調べてすごい道具を考える」をテーマに、東京大学大気海洋研究所・浅沼尚先生指導のもと、研究を行いました。この班がはじめにぶつかった疑問は、「最強ってなんだろう?」ということでした。シャコガイのようにとても硬ければ最強? それとも真珠のように美しければ最強? 人間は、遠い昔から貝殻を使ってきましたが、その用途は、貝殻の特性に合わせて様々であることがわかっています。喜界島のハワイビーチで採集した貝殻の微細構造や硬さを調べることでそのバリエーションを明らかにし、それぞれの貝殻の特徴を生かした道具を考えました。
アドバンスドコース(8月8日~8月15日)
サイエンスキャンプの後半、アドバンスドコースでは様々なテーマについてサンゴに強い関心をもった中学生・高校生による研究が行われました。このアドバンスドコースではテーマの設定からどのような方法でサンプリングや解析を行うのかなど参加者が主体となって考え、自分自身でフィールドに足を運び、実際にサンプリングを行い、様々な機器や方法を用いて結果を集めました。
報告:メンター補 津田和忠、藤本紅葉
研究テーマは溶存酸素や硝酸などを指標とし、生活排水の海への影響や、サンゴや隆起サンゴ礁である喜界島の砂浜とマイクロプラスチックの関係性、サンゴの生息域と色の関係、夜光貝の蓋を用いた年輪計測、サンゴの分裂速度と骨格形成など、多様なチームに分かれ一週間にも満たない短い間ではあったものの、研究に携わりました。それぞれのテーマで研究を進めていく中で“難しい”・“分からない”ことも少なからずあったとは思いますが、メンターの先生方や大学生の先輩たちに時には手を貸してもらい、時には議論をして素晴らしい研究になったのではないかと思います。中学校や高校では簡単には体験できない“研究”という新しいものを見つけていくという、いつもの勉強とは少し違う学びを体験してこれからの日常生活にも少しでもいい影響があることを期待しています。今回、参加した大学生という立場からしても参加してくれた中学生・高校生の成長していく姿・研究に携わる姿・そして最後にそれを発表する姿は見ていると頼もしいような嬉しいような気持ちになりました。最終日の成果発表会ではすべての参加者が喜界町役場のコミュニティーホールでプレゼンテーションを行いました。どの発表も大変すばらしいものでした。この成果発表会はすべてのゴールというわけではなく11月には日本サンゴ礁学会も石垣島で控えており、学会に参加する方はこれに向かって更なる努力をし、参加しない方もこの夏に学んだスキルや考え方など色々なものをこれからの様々な活動で活かし、頑張ってほしいと思います。
アドバンスドコース メンター
松田博貴(熊本大学大学院先端科学研究部)
渡邊剛(北海道大学理学研究院/喜界島サンゴ礁科学研究所)
山崎敦子(九州大学大学院理学研究院/喜界島サンゴ礁科学研究所)
駒越太郎(喜界島サンゴ礁科学研究所)
アドバンスドコースメンター補
田中萌奈(筑波大学)
津田和忠(宮崎大学)
藤本紅葉(都留文科大学)
内山遼平(北海道大学)
岸拓未(北海道大学)
阪直樹(横浜国立大学)
浅利凛(東海大学)
林川真也(University College London)
日本サンゴ礁学会にて研究成果を発表!
今回のサイエンスキャンプではたくさんの発見がありました。研究成果は2022年11月に開催される日本サンゴ礁学会で発表します。この夏、喜界島に集まった子ども研究員の皆さんから、まだまだ目が離せません。
最後に参加者および保護者の皆様、そして研究指導や講義を行なっていただいた研究者のみなさまに改めて御礼を申し上げます。
特別講義
佐野有司(高知大学 海洋コア総合研究センター)
「ムール貝の殻に残された2011年東北沖地震の影響」
レクチャー
松田博貴(熊本大学大学院先端科学研究部)
「喜界島はどうやってできたのか?」
後藤明(南山大学人文学部)
「古代南島の海と星」
Fredric Sinniger(琉球大学熱帯生物圏研究センター)
「Exploring the deep coral reefs」
Samuel Kahng (ハワイ大学/北海道大学)
「Why are Coral Reefs important?」
主催:喜界島サンゴ礁科学研究所
協賛:日本航空株式会社、日本エアコミューター株式会社
協力:一般社団法人セブン・イレブン記念財団
後援:文部科学省、鹿児島県、喜界町、喜界町教育委員会
サイエンスキャンプの様子をYouTubeでも配信しています。
研究者の卵たちの発表をぜひご覧ください!
サンゴ礁サイエンスキャンプ2022募集ページ:https://college.kikaireefs.org/2022sciencecamp/
通年での受講は「サンゴ塾募集ページ」をチェック!
https://college.kikaireefs.org/sango-juku/
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