使徒
すっぱり切れた材料を見ると、それを切った刃を連想するのか「鋭い」って心によぎる
ずっと知っていた
胸の内にあることを、何にどれだけ苦しんでるかも
俺だけじゃない、みんな知っていた
だから責任が分散される、とか言いたいわけではないが
いや、そう言いたいから言った
責任は分散されるだろ
だいたい、ルールは神様が決めるから、神様が大事にしないものは大事にしなくていい
苦しむ者は、そのために生まれてきた
うるさい
わかってるよ、それで今に至る
戦争も差別も貧困も、神が決めた計画だとしたら、試練だとしたら、
西遊記のような菩薩の茶番だとしたら
その中心は限りなく悪意に近いんじゃないか?
そういう事を考えなきゃいけないのは負け組だからだ
ただモテないことに大仰な理由をつけて、自分のコンプレックスを救いたいだけだろ
巻き込まないでくれ
「正義」に
紙切れみたいに音もなく現れた
俺も死ぬとき、静かなんだ
勇気の心を持つ者にだけ剣が抜ける理由は、
誰しも体で出来ていて、切れば動かなくなることが「良い方に転ぶから」だと思う
怖い気持ちはなかった
景色を反射する物質はみんな透けてるように見える
頬をかすめても悲しくて、
涙の最も強い姿をしていた
今日はじめて目が合ったかもな
ふと、泣いてるかなぁと思って
それでなくても、歯を食いしばって苦しんでるかと思ったから‥
だから、その無表情を見て、切られるよりショックを受けた
誰にも、盾になった俺にすら、傷一つつかなかったのに、理解が‥
理解が追いついたんだ
シンプルなおもちゃを使って、丁寧に教えてもらえた
勝つんだ
もう座って待ったりしない
しないんだ、もちろん
それなら俺はするのか、これから聞かれ続ける気がした
今答えないと、もうずっと答えなきゃいけなくなるんだと
そして、今は答えられなかった
何もかもが一瞬すぎて
え
ほっぺじゃなくて口にするのか‥
同じ人の子の筈なのに
もし通りがかりに話しかけてくれたなら、
冒険のヒントになるような、
気の利いたことを言いたかった
それかタイミング見て、ゆっくりめの拍手とかして
俺は誰の敵にも、味方にも、なれなかったんだ
自分の人生なのに自分になれなかった
手助けはおろか、応援も
祈るときすら後ろ手で
一度、すっごい忙しかった夜
眠いし終わらないしで、お喋りになって
「弟みたいに思ってるよ」と言ったことがある
全く思っていなかったけど
自分の下だと言いたくなったのかな
なんとなく嘘とわかったのか、君はパソコンに目をやったまま
「ええ?」と笑った
喜ぶでも困るでもなく、
「ええ?」と
言っていた