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少ない、少ないくん

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無残に老いていく姿を何故みんな見ていられるんだろう

老いることを「無残」と言い切るなんて、我ながら酷い価値観だとは思うけど
私にとって時が過ぎるというのは痛みでしかない

置きっぱなしの桃が暖かくなっていくように、「時間が過ぎればものは傷む」

私の体に時間が過ぎれば、私は痛む

あなたも同じように痛むと勝手に解釈して、、
自分以外の人の考えに思い至らず、自分の考えは他人の考えでもあると勘違いしているから

本当はそんなことなくて、あなたの肌が重力に引っ張られて
時間の雨粒が肌に滲みを作っても、それはきっと素晴らしいことだし、幸せなこと
幸せなことなんだろう

ただこう思えるのは私が大人になったからで、そんなのは建前だ
ただの建前!

時間が過ぎるのは無残だ
老いていくのは無残だ
生まれた時から死に向かっていくなんて無残だろ…

みんな目を逸らしたくて、自分の老いを肯定的に捉えようと必死になってるだけに見える

私は森下裕美のようにはなれず、こうの史代のように幼い

ここに私がいなくなった後も
世界が美しいことなんて、知ってるよ。
だから何なんだよ。

そんなの嬉しいわけない
悔しい
クラスのずっと好きだった子が、結婚して嬉しいって思うか?!
寝取りやがって
ぶち殺す

ただ諦めただけのことを、「大人になった」って無理やり評価するのやめろ

君たちは無力で、無力なことを諦めるしかなかった惨めな人たち

ろくに権利も与えられないまま「かみさんの尻に敷かれてる」とか言って適当にプライドを満足させられてるんだよ
心から舐められている

いい大人が、何年も生きてるのに
死と目を合わせることもできてないで

宗教とかいう子供騙しの世迷い事に、本気で体重かけて生きてる
もう見てられないよ…

絶対に死にたくないくせに
ただ自分が抵抗する力を持ってなかっただけのくせに
「私はあなたをゆるしてあげる」
は〜

倫理にしがみついてるのは自分のほうだ
倫理がない世界では生きていけないほど私、弱いの

結局古い体制の中でしか安心して暮らせない
結婚して、肩書きで、身分を保証してほしい
形骸化した儀礼以外は、私空っぽなんだもの

狭いアパートの台所で、すり傷だらけの手を
ただ見ている

私は豚みたいにのっぺりした日本人らしいブスで、外に出ることも怖かった
クラスの端で漫画を描く女のように恨みがましく
でも特に行動は起こさないから何も起きないまま
ナスを切って、情けない

湿気た窓に自分が映る

ガサガサとコンビニ袋が帰ってきた
私は人生を削って、鰹節くさい食事を毎日作ってるのに
間食ばかり食べて
湯水のようにお金を使って
靴も揃えない、靴下も片さない  ああ〜

今日こそ言ってやろうと思うのに、これ見よがしに包丁を持って「おかえり」と言うのが精一杯

うん
美しく、ハッとするほど美しく育ったな

にょきにょきと伸びた腕が、罪人のための縄のようにしなっている
みんな自分を殺してもらうために、子供を産むのかもしれない

願っていた悪が、私の人生への痛烈な否定が
思惑も知らず、まばゆく、現れる
土足の
「どうして死ぬことが平気なの?」

王子様…

私を連れていって
時間なんかに沿わないで、永遠に同じまま存在して

私を悲しませないで
私は末っ子なんだから
可愛がってよ
常世の国に連れてって

倫理も分類も、時間も空間も無い

子供のままで生きられる、みずみずしい楽園へ
連れて行って…


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