A
(ーーーーーーーーーーーーー)
(すごい音)
(春か)
これ全部寄生虫です
アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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一度だけ自分の声を聞いたことあるけど、こんなに高い音じゃなかった
「今日から一切やめよう」
よく覚えている
録音した声を初めて聞いたような衝撃で
「こんな喋り方をするのか」
「いや、というか、こんな陰気な人間なのか」
私はもうちょっと愛嬌のある人間かと思っていた…
突き放した、相対しただけでガックリきてしまうような、
上司だったら、かなり会いたくない部類の
あした仕事かぁ〜という陰鬱な気持ちの時、頭にパッと浮かび、また落ち込みそうな
「メモしないの?」なんてグサッと胸に飛んでくる
もっと好意的な表現をするなら、啓示のようでもあった
自分の芯から出た声を、神の声と呼ぶのかもしれない
「恋に落ちるよ」
「恋に落ちる」
「私は今恋に落ちる」
と釘付けになっていても一言、体を冷やす厳格な音
やっと最初に会った自分は他の誰より厳しくて、それ以来顔も出さないのに、家長として今も私を見張っている
それもそうで、私は父と似ているんだ
父の顔をした、私による、私の支配が敷かれ
刑務所の中、プロパガンダだけが繰り返し流れる
人間の生命管理で精神安定を考慮してなくて殺しちゃうAIかよ
碇ゲンドウだよ、それは
つまりは私、父なる神
なんて性格の悪い奴
嫌いだわ~
私はこいつとこれからの人生、1人きりで過ごさなきゃいけない
そういう"お告げ"というわけだ
こうなると質問の余地もない
私は心から、頭ではなく心の底から、その意味がしっかり分かっている
人に教えられるくらい、仔細、飲み込めている
決意は声の形をとるのか
と私が歩いてるかもしれない、眼下に通った廊下を見ていた
落ちていった
入ってきた
発売から随分経つよ、もうバグ見つかんないよってツイートした直後なのに
〜Downloaded〜
今や私は、私の身体は、蜜蟲を飼う蟻の如く賢く、豊かで、惚れ惚れする
私にも恋ができる
恋する若い心を、そのまま飲みこんだ
瞳孔は開き、息も上がって、興奮したままの
新鮮でキラキラで、まだ柔らかい
とにかく素直な、何にでも影響を受けて、すぐ顔に出る、
傲慢に周りを見下した、威張り屋の人嫌い
他人が嫌いな人間は嘘をつかない
さぁ、
「なんて可愛い歌なんだろう」
「こんな可愛い歌ってありません」
可愛い…
可愛いなんて、私思ったことない
可愛いって、要は憐憫だから
チビで病気の若い女という、これ以上下の立場が居ない人間には用が無い感情だ
(これ以上下なんて言うとエレベーターにでもなった気持ち)
普段からよっぽど周りの立場が下だと思ってないと出てこない言葉だよな
でもこんな言葉が私の頭に響いてくると、電通のビールのCMのよう
石の壁にきゃらきゃら反射して
一面、虫だ
魔女だ
大山桜だ
鼻孔をくすぐる4月の、柔らかな
可愛い!
可愛い…
「「可愛い」」
無音だ
恋に落ちる時、音はしない
まつ毛の裾を持ち上げて
ひらっと、私が瞬きをする
思いもよらないタイミングで
コンタクトを入れたら、こんなに景色がみずみずしい
「分かる!笑」
いやわかんないけど
なんかいいね、"分かる"
私もこれから言おうかな
50年代風のドレス、オードリーヘップバーンかと思った
都合良く、いやそんな展開無いって、野暮だわな
映画だもん
都合良く、咲き乱れる
私の心に春を、春のスノードームを
(紙が桜になってるやつ)
(発想が上手いよ、なるほどだよ)
いちご大福みたいに大胆で豊満な発見を
矢継ぎ早に、うりうりかめかめと
口いっぱいに頬張らせてくれ
張りつめて今にも弾ける恋、恋だ これが
腹の中、パンパンに詰まったハリガネムシだ
神経の管を通り、眼球の裏までみっちり
「待て」と言われて、今か今かとうずうずしてる
味蕾は何も感じなくなる
蟲は香りしか食べられないの
私の内臓もストローでまぜまぜ、そういうコンビニスイーツのように飲み干してしまった
ぶくぶく肥えた幼体は少女に、或いは老女の形をとって(日本人の年齢わかんない)
皮膚のすぐ下で、蠢く
私の脳の内側からころころと、鈴を転がす輝くソプラノ
自分からする音と思えない!
慰問で来てくれた小学生の合唱のよう
独房がぱっと華やぐよ
私の声なのに、うっとり、ずっと聞いていられる
私が持て余している私の若い女の体を存分に発揮して、乙女が、魔女が
「恋がしたい」
いいよ全然
もう身体を生活に使う時代じゃないから、性器も触ってない
幸運な殿方に
「誰よりもかわいい私に」
あ
私はとっくに、言われた通り、一切をやめていたのか
いいって言ってるのに
夜になると冷え込んで、本当に花びらが雪みたいだ
コンビニ菓子買ってみたけど、甘ったるいだけで味がしない
A#
可愛い、
なんて可愛い歌
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